「畏友」とは
「畏友(いゆう)」とは、尊敬している友人のことを指し、同時に友人に対して敬意を表す言葉でもあります。
「畏」という漢字は、音読みで「イ」、訓読みで「おそれ-る。おそれ。かしこ-い。かしこ-まる」と読みます。意味は、①おそれる。敬服する。②かしこい。おそれおおい。おそれうやまう。③かしこまる。つつしむ。
「畏」は、頭の大きな鬼が武器を持って脅す様子を表した象形文字で、恐ろしさや威圧感といったものを表現しています。それが転じて、「おそれおおい」という敬いの気持ちを表すようになり「畏友」や「畏敬」「畏愛」といった言葉にも使われるようになりました。
「畏友」の使い方
「畏友」は、その友人が目の前にいるときに使うことは、まずありません。その友人が話の話題になったときに自分にとって「畏友」だ(あるいは、過去形で)と使ったり、第三者が誰かの交友関係について語るときなどに使われます。
例文
- 通夜の席でA君は、B君の死を悼み、大切な畏友だったと言って涙を流した。
- 私がこの本を書くことを思い立ったのは、学生時代からの畏友C君との友情だった。
- 正岡子規は、『筆まかせ』という作品の中で、夏目漱石のことを畏友と呼んでいる。
- 僕にはたくさんの友達がいるが、畏友と呼べるのはD君をおいてほかにない。
「畏友」の類語
「畏友」という言葉には、尊敬の念が込められています。思想・人格・才能など、すぐれた点を持つ人物を「尊敬」することもありますが、互いに理解し、心が通じ合うことで生まれる「相手を大切に思う」気持ちも「尊敬」ととらえられるでしょう。
ここでは、理解しあっているとか心が通じ合っているという点に着目した類語をご紹介します。
「知己」
「知己(ちき)」には、単なる知り合いという意味もありますが、自分のこと(考え方や心持など)をよく知り、理解してくれる友のことを指します。お互いのことをよく知るほど打ち解け、心を許すという交友関係から尊敬の念を生じることもあるでしょう。
【例文】
- 僕と彼は、大学時代から常に様々なことを語り合い、社会に出てからも変わらずに付き合ってきた20年来の知己の間柄です。
- 旅先で知り合った男と意気投合して酒を酌み交わした。ただそれだけのことなのに、なぜか知己を得たような気持ちになった。
「知音」
「知音(ちいん)」は、古代中国の琴の名手が、自分の琴の音を深く理解していた友人の死後、弦を切って二度と琴を弾かなかったという故事に基づいた言葉で、互いに深く理解しあっている友という意味があります。
【例文】
- 大病することもなく元気で100歳まで生きたが、気が付くと周りには親戚知音がほとんどいなくなっていた。
- 上司に反抗して遠く左遷された職場には、一人の知音もいなかった。
「畏」を使った言葉
- 畏敬(いけい):心からおそれて敬うこと(畏敬の念)
- 畏怖(いふ):おそれおののいて近寄りがたいと感じること(神仏を畏怖する)
- 畏愛(いあい):敬いつつも親しむこと(畏愛の念)
- 畏縮(いしゅく):おそれやかしこまる気持ちから緊張して、小さくなること(師匠の前で畏縮する)
なお、畏縮の同音語「萎縮/委縮」は、ただ、小さく縮んだりしぼむことです。おそれかしこまるという意味はありません。
「友」を表現する言葉
- 親友(しんゆう):信頼できる親しい友達(無二の親友)
- 学友(がくゆう):同じ学校の友達。学問上の友達(大学の学友)
- 悪友(あくゆう):悪影響を受ける友達(子供のころの悪友:親しみ込めて使うこともある)
- 朋友(ほうゆう):友達。友達の漢語的表現(朋友の間柄)
- 盟友(めいゆう):互いに固く誓い合った友達。同志(同じ派閥の盟友)