「地獄」の意味
「地獄(じごく)」の語源はサンスクリット語のnaraka(ナラカ)もしくはniraya(ニラヤ)であるとされています。この言葉には、「地下の牢獄(ろうごく)」という意味があるそうです。
「地獄」の意味は以下のとおりです。
- 死後に苦しみを受ける場所。(宗教によって、とらえ方に違いが見られる)
- 非常に苦しく辛い状態や環境のたとえ。
- 火山や温泉地などで、煙や熱湯が絶えず地中から噴き出している所。
- 劇場の舞台や花道の床下。
- 公に営業が許可されていた時代に、許可を得ずに営業していた売春婦。
1の意味については、以下でさらに詳しくご紹介します。
仏教における「地獄」
仏教でいう「地獄」とは、現世で悪事を行った報いを受ける所です。仏教には輪廻転生の考え方があり、人間は生前の行いに応じて6つの世界のうちの1つに生まれ変わるとされていますが、「地獄」はその中でも最も悪い世界です。
地獄に落ちるのは仏教の戒律を守らなかった人です。閻魔(えんま)大王から生前の行いについて裁きを受けた罪人は、「地獄」で鬼などによってさまざまな苦しみを罰として与えられます。
「地獄」には「八熱(はちねつ)地獄」「八寒(はちかん)地獄」「孤(こ)地獄」など、全部で136種類の「地獄」があると言われています。犯した罪の種類によって、どの「地獄」に行くかが決まります。
キリスト教における「地獄」
キリスト教における「地獄」とは、罪を犯しても悔い改めない者や、神の教えに背いた者が、死後に苦しみを受ける所です。
カトリックの教えでは、「地獄」は2種類に分けて考えられています。1つは、罪を犯した者が限りなく長い年月にわたって罰を受けて苦しむという「地獄」です。「インフェルヌム」や「インフェルノ」と呼ばれます。
もう1つは、「煉獄(れんごく)」です。「プルガトリウム」と呼ばれます。「煉獄」は天国と地獄の間にあり、罪を犯した魂を火によって浄化する場所です。ここで浄化された魂は天国にのぼることが許されるということです。
イスラム教における「地獄」
イスラム教では、この世の終わりのときにすべての人間が復活して、生前の善行(ぜんこう)と悪行(あくぎょう)の重さをはかりにかけられ、悪行の方が重かった者は「地獄」に落ちると説いています。ここで言う悪行には、イスラム教を信仰しないことも含まれます。
「地獄」は7つの階層に分かれていますが、どの階層においても、火の上を引きずり回されるなどの「火」による苦しみが与えられます。各階層には名前がありますが、イスラム教の聖典コーランでは、「ジャハンナム」が「地獄」を指す言葉として最も多く使われているようです。
また、コーランには、地獄の苦しみは永遠に続くことを示す記述もあるということですが、魂が浄化されたイスラム教徒は、地獄から救い出されて天国に入ると考えられているようです。
「地獄」の使い方
上記で「地獄」の意味を5つご紹介しましたが、現在使われている1~4の意味について、番号に合わせて例文を挙げます。
例文
- 子どものころ、「悪いことをすると地獄に落ちるよ」とよく祖母に言われて怖かった。
- あの頃は借金地獄で、毎日返済のことを考えるのが本当に辛かった。
- 日本屈指の温泉である別府温泉には、「地獄めぐり」という、源泉を回る観光ツアーがあるそうだ。
- 劇場の地獄に入ったのは初めてだ。
「地獄」の類語
奈落(ならく)
「奈落」は、地獄を意味する言葉です。また、地獄に落ちることも表します。他に「もうこれ以上はないというひどい境遇・どん底・物事の最後」という意味や、「劇場の舞台や花道の床下」という意味でも使われます。
【例文】
- 突然の不幸に見舞われ、希望をすべて失ったときは、奈落の苦しみを味わった。
- 有名な歌舞伎俳優が公演中に奈落に落ちて大けがを負ったそうだ。
冥府(めいふ)
「冥府」は、死後の世界のことであり、特に、地獄や閻魔(えんま)の庁という意味で使われることもあります。「閻魔の庁」とは、地獄の王である閻魔大王がいる建物のことで、人間が死後に生前の罪を裁かれる場所であるとされています。
【例文】
- 死者は冥府に行くとされているが、どんな所なのだろうか。
- 冥府に対する考え方は、宗教や文化などによって違いがある。
生き地獄(いきじごく)
「生き地獄」とは、この世で地獄のようなひどい苦しみを経験することを意味します。また、悲惨なありさまという意味も持っています。大惨事や大事故、大災害といった状況や、個人的に非常に苦しい体験をしたときなどに使われることが多いようです。
【例文】
- 生き地獄としか言いようのない事故現場を目の当たりにして、まったく動けなかった。
- 失恋した直後は苦しくて、生き地獄のようだと思ったが、今はそれも懐かしい思い出になった。