「段取り」とは
「段取り」の意味
「段取り」には、二つの意味があります。一つ目は「演劇や文芸作品などの筋の運び方や構成の順序」のことで、二つ目は「物事をうまく進行させるための手順・方法」のことです。
「段取り」と「反取り」
「反取り」(だんどり)を「段取り」と書く場合があります。「反取り」とは、「江戸時代の年貢徴収方法の一つで、租税率ではなく、一反当たりの年貢高を定めた上で面積を掛けて算定する方法」のことです。
しかし、一般的に、「段取り」は上記の二つの意味で用いられます。
「段取り」の由来
「段取り」という言葉は歌舞伎から生まれたという説が有力です。歌舞伎では、話の区切りや幕のことを「段」と呼んでいます。その「段」を一つ一つ進めていく筋の運びや構成を「段取り」と言うようになりました。
歌舞伎に限らず、芝居でも、「一幕、二幕」とか「一段、二段」と言い、小説などの文芸作品では、「一章、二章」とか「一話、二話」などと言いますね。これが「段取り」の一番目の意味です。
このようなところから派生して、「段取り」は、物事をうまく進行させるための手順や方法をいう二番目の意味でも用いられるようになりました。
「段取り」の使い方
1.演劇や文芸作品での筋の運び方や構成の順序
「段取り」を元々の1の意味で使うのは、おもに演劇関係者や文芸関係者です。
【例文】
- 今度、法医学をテーマにした連続ドラマを制作することになり、キャストは決まっているのだが、シリーズの構成や各話の段取りがなかなか決まらなくて困っている。
- 大ヒットしているコミックを元にした新作歌舞伎で、古典にはない段取りで舞台を作ろうという試みがあるようだが、うまくいくだろうか。
2.物事をうまく進行させるための手順・方法
2の意味での「段取り」は、普段から多くの場面で使われています。
【例文】
- 結婚式の段取りの打ち合わせに行ってきたが、式場の人の話を聞くだけでヘトヘトになった。
- 財務省の官僚が、国会の予算委員会での質疑応答のための段取りを夜遅くまで検討した。
- 明日までにプレゼンの段取りを整えておくよう上司から言われている。
- A案がうまくいかないときには、すぐにB案に切り替えられるよう段取りはつけておいた。
「段取り八分、仕事二分」とは
ビジネスの世界には「段取り八分、仕事二分」や「仕事は八割が段取り」という言葉があります。これは、事前準備に八割の時間と手間がかかる、または、事前準備さえ出来ていれば仕事の八割は完成(成功)したようなものという意味です。
事前準備には、計画立案・見積もり・原材料の手配・相手とのアポイントメント・打合せ・価格交渉・試作など、職種や仕事内容によって様々ですね。この「段取り(事前準備)」をうまく進めるコツは、目的を明確にして、無駄を極力なくすことだと言われています。
「段取り」の類語
「手配」
「手配」は、「必要な部署に人に連絡したり、役割分担を決めたりして事前に備えること。必要な人や物品などを用意すること」を言います。「手配」は事前準備の一つですね。
【例文】
- 今度の授賞式の手配を任されたが、何から手を付けていいのかわからない。
- 突然、元会長が来られると連絡があり、秘書課は出迎えの手配で慌てていた。
「方法」
「方法」は、「目的(目標)達成のための手段。やり方」のことです。正しい方法・間違った方法・最善の方法・最悪の方法などいろいろありますが、多くの場合、いずれも事前に考えられたことや過去の経験則が前提になっています。
【例文】
- 経営不振を脱却するには今までの方法では難しいとの結論に達し、新しい方法を模索することにした。
- 交通事故を減らすのにもっとも有効な方法の一つとして、自動車各社は自動運転技術の開発にしのぎを削っている。
「筋道」
「筋道(すじみち)」には、「物事の道理」という意味と「物事の手順」という意味があります。「筋道を立てる。筋道が通る」といった表現で使われ、後者の意味では「段取り」の類語と言えます。
【例文】
- 事件の関係者として刑事からアリバイを聞かれたが、緊張して筋道を立てた説明ができなかった。
- 彼女の話は全く筋道が通らない屁理屈(へりくつ)に過ぎなかった。