「動揺」の意味とは
「動揺」(どうよう)の意味は以下の3つです。
- 物が揺れて動くこと
- (1から転じて)不安な気持ちで落ち着かないこと
- (1から転じて)組織や社会などの体制が乱れること
「動揺」の使い方
1.物が揺れて動く
「動揺」は、前後や左右、上下に動く様子を表す時に使います。何かしらの力が加わって物が動かされる場合もあります。
【例文】
- 小さな釣り船が波の動きに合わせて動揺している。
- レールの継ぎ目で、普通列車の車体が動揺する。
- 乱気流に巻き込まれ、飛行機が激しく動揺した。
2.不安な気持ちで落ち着かない
「動揺」は、物の動きだけでなく、心の動きにも使われます。驚くようなこと、嫌なことなどで感情が激しく揺さぶられて平静でいられない様子を表します。特に、不安に苛(さいな)まれる心理状態を示す使い方も目立ちます。
【例文】
- 彼の浮気の現場を見たと友人に教えられ、かなり動揺している。
- 学校近くで事故があったと聞き動揺したが、けが人はいないということだ。
- 嘘がばれたと思い動揺した。
3.体制が乱れる
「動揺」で、組織や社会が揺れ動き、秩序を失って統制が難しくなる状況を表せます。会社組織などの限定された団体の中だけでなく、国に関わる組織や世界情勢のような幅広い範囲で乱れが生じることについても表現できます。
【例文】
- 贈賄問題は国家体制の動揺を招く由々しきスキャンダルだ。
- 新型肺炎の大流行は世界を動揺させ、人々の生き方にも影響を与えている。
- 独裁者が失脚すると、国家の中枢が動揺して一気に瓦解する。
「動揺」の類語
1.「物が揺れて動く」意味での類語
「ぐらつく」「揺蕩う/猶予う」(たゆたう)は、物が揺れ動くという意味で「動揺」と同じように使えます。「ぐらつく」は、安定していた物が何らかの原因で不安定になり揺れ動くことです。「揺蕩う」は、揺らめくように動いてしっかりと固定されていないことを言います。
これらの言葉は、気持ちが安定しないといった意味もあります。信念や思いが揺れ動き定まらない、はっきりと決断できないといったニュアンスです。「動揺」のように不安にかられて冷静ではいられないというわけではありません。
【例文】
- 椅子の脚の1つが欠けてしまい、ぐらついている。
- 説得されて信念がぐらつくということは、大した思い入れがない証拠だよ。
- 彼女はぼんやりと揺蕩うような視線を向けた。
- 推理小説では、情状酌量の余地がある犯人を警察へ引き渡してよいかどうか揺蕩う探偵もいる。
2.「気持ちが不安定で落ち着かない」意味での類語
「取り乱す」(とりみだす)は、本来、辺りを散らかしたり身なりに構わなかったりして、見苦しい様子を表します。そこから転じて、不安な気持ちが収まらない、厳しい現実に直面するなどの理由で平静な気持ちを保てずに周囲に見苦しい印象を与えることを指すようになりました。
「胸騒ぎ」(むなさわぎ)は、心配事や悪い予感がして気持ちが落ち着かないさまを言います。「胸」は、心臓のこと、「騒ぎ」は、やかましいことで、心配事のために心臓の鼓動が大きく落ち着かない思いを表現しています。
【例文】
- ショッキングな知らせを受けて、感情を抑えきれずに取り乱して泣きわめいてしまった。
- 時間を守る律儀な人が30分待っても現れず、胸騒ぎがしている。
3.体制が乱れる
「不穏」(ふおん)は穏やかではないという意味ですが、周囲の状況が不安定で危険な感じがするという意味で使われます。「不穏な世界情勢」(意味:良くないことが起こりそうな世界の様子)、「不穏な空気」(意味:危険な雰囲気)などのような使い方が見られます。
「風雲急を告げる」(ふううんきゅうをつげる)は、雲や風がにわかに湧いて天候が悪くなる前触れを表す状況を、周囲の情勢が安定せずに大事件や大騒動が起きそうだと予想されることに例えている成句です。
【例文】
- 某国は、テロなどが相次ぐ不穏な国家と名指しされている。
- 双方の交渉決裂で、風雲急を告げる事態となった。