「妥結」とは
「妥結」とは、「利害関係があるために対立している二者が、互いに譲歩しあって一定の結論で合意すること」を言います。春闘(しゅんとう)で労働組合と経営側の交渉が成立したときなどに「交渉が妥結する」という表現が使われています。
「妥」には、「やすらか。おだやか」と「おりあう。ゆずりあう」という意味があります。一方「結」には、「①むすびつける。ゆわえる。つなぐ。たばねる」「②実を結ぶ。しめくくる。まっとうする」「③かまえる。組み立てる」「④(漢詩の)最後の句」などの意味があります。
「妥結」は、「(ゆずりあって)折り合って結びつく、または、実を結ぶ」ということになります。
「春闘」とは
「春闘」とは、多くの労働組合が、労働条件の改善(賃上げや労働時間短縮など)求めて、毎年春の同時期に経営側と交渉する全国統一闘争のことです。全国で一斉に交渉を行うことで、会社での立場が弱い労働組合の交渉力の底上げを図るという側面があります。
「妥結」の対義語:「決裂」
「決裂」とは、「切れ裂(さ)ける。こわれる。切り裂く」「意見が一致せずに折り合いがつかないこと。会議や交渉などで、意見が合わず合意できないこと」を言います。上の「春闘」の例で言うと「労使交渉が決裂した」という使い方をします。
「決」には、「①きめる。きまる。最終的に定める」「②きっぱり。思い切って」「③切れる。さける。やぶれる」などの意味があり、「裂」には、「①さく。ひきさく。さける。さけめ」「②ばらばらに離れる。物事が破れてだめになる」「③布地。生地」などの意味があります。
「決裂」は、「妥結」と同様に「交渉事や約束事」に使う言葉ですが、物理的にモノが壊れたときなどに使う言葉ではありません。
「妥結」と「決裂」の使い方
- 今年の春闘では、賃金値上げが最大の争点だったが、双方、納得のいく金額で妥結した。
- 彼の行為が、勤務時間内の組合活動にあたるか否かについて、労使双方の話し合いが続いていたが、結局決裂した。
- 長年、国際関係の懸案事項だったA国とB国の和平交渉が、ようやく妥結に至った。
- C国のF自動車と我が国のT自動車の特許に関する話し合いが決裂した。
「妥結」も「決裂」も組織同士、国同士などの間で使われることが一般的で、個人間で使われる例は、あまりありません。「結婚を妥結した」、「離婚話が決裂した」とはあまり言わないでしょう。「結婚を約束した」や「離婚話がまとまらなかった」と平易な表現を使います。
ただ、離婚話の場合は、夫婦だけでなく親族が大勢集まって利害関係が複雑になるなど大きなもめごとに発展したときなどは「決裂した」という場合もあるかもしれません。
「妥結」の類語
「締結」
「締結」とは、「固く結ぶこと。条約などを取り結ぶこと」という意味ですが、結果そのものに力点があり、交渉などの経過自体を問題にしていません。「取り結ぶ」という点で、「妥結」と共通していますが、「経過」が要素になっているか否かという点では異なっています。
「戦争の損害賠償問題などで両国の利害が対立して難航した和平交渉」が「妥結」した結果、その交渉内容の結果を明確にするために「平和条約などの条約」が「締結」されることになるというイメージで使われています。
【例文】
- 戦争をしていた両国が、ようやく終戦を迎え、講和条約を締結した。
- 今度、A社とB社が締結した販売価格協定は、独占禁止法に抵触するおそれがあるとして、公正取引委員会が調査に乗り出した。
「成立」
「成立」とは、「ものごとが成り立つこと。取り決めなどがまとまること」という意味です。この言葉も結果自体に力点があり、経過は要素ではありません。
【例文】
- 閣僚の不祥事で予算委員会が紛糾していたが、ようやく予算案が成立した。
- 捜査員の長年の捜査によっても犯人逮捕に至らず、午前0時に公訴時効が成立した。
「和解」
「和解」とは、「お互いに争い、対立していたもの同士が、譲歩しあって自主的に解決すること」です。こちらは経過にも結果にも力点が置かれています。「妥結」の類語とも言えますが、「決裂」の対義語でもあります。
【例文】
- 長年、土地の境界問題で裁判をしていた隣人同士が、裁判上の和解をすることに合意した。
- 経営方針で対立していた専務派と常務派の和解が成立した。