「寄る辺」とは?意味や使い方をご紹介

「寄る辺」(よるべ)は、古来からある言葉のひとつで、源氏物語やさまざまな和歌集にも登場します。古風なひびきで、意味も含めて若い人には馴染みにくいかもしれません。今回は、「寄る辺」の意味と使い方を類語も含めてご紹介します。

目次

  1. 「寄る辺」とは?
  2. 「寄る辺」の使い方
  3. 「寄る辺」が出てくる和歌
  4. 「寄る辺」の類語

「寄る辺」とは?

「寄る辺」(寄る方)は、(よるべ)と読みます。古めかしいイメージで、あまり聞き慣れないかもしれませんね。

「寄る辺」とは、頼りとして身を寄せる場所、たのみとできる親類縁者や配偶者のことです。意味をより深く理解するため、「寄」と「辺」の字義についてみていきましょう。

「寄」の字義

「寄」は、音読みが(き)、訓読みが(よ・る、よ・せる)で、意味は以下の4つです。

  1. 寄る、立ち寄る
  2. 身を寄せる、頼る。
  3. 預ける。
  4. 集まる、集める。

「寄る辺」においては2の意味が反映されています。同様の使い方の言葉としては、「寄宿」「寄生」などがあります。

「辺」の字義

「辺」は、音読みが(あた・り、べ)、訓読みが(へん)で、意味は以下の5つです。

  1. そば、あたり、ほとり。
  2. ふち、へり。
  3. はずれ。
  4. 果て、限り。
  5. 多角形をつくる線。

「寄る辺」で用いられるのは、1の意味です。同じような意味で用いられている言葉には、「川辺」「海辺」などがあります。

「寄る辺」の使い方

「寄る辺」は、「寄る辺がない」という言い回しで使うことが一般的です。頼りとして身を寄せる「場所」という意味がありますが、物理的な家や部屋そのものを指して「寄る辺がある」と表現することはほとんどないでしょう。

単に「身を寄せる」場所ではなく、「頼りとして」という意味を含む以上は、そこに「頼れる存在がある」ということを暗に示しているのです。

辞書的には「たのみとできる親類縁者、配偶者」が定義ですが、血縁や婚姻がすべてではありません。同居している人が家族以外であっても、施設などの場所であっても「寄る辺」たりえます。

加えて、生活力の有無で「頼りになるか否か」を判断しているわけでもありません。心の支え、といったニュアンスもあるでしょう。つまりは、場所があり、そこに共に生活する好もしい誰かがいるなら、その人にとって「寄る辺」と言えるのです。

文例

  • 寄る辺ない身には、正月休みは虚しく寂しい時間となってしまう。
  • 寄る辺があるかと問われれば、実家があると答えはするが、帰省することはあまりない。
  • 私は寄る辺のない孤児だったが、施設で職員を親と思い、仲間をきょうだいと思って過ごすことができた。

「寄る辺」が出てくる和歌

「寄る辺」は、昔の書物にも見られる言葉です。今回は、古今和歌集の有名な和歌を一首紹介しましょう。
 

「寄る辺なみ 身をこそ遠くへだてつれ 心は君が 影となりにき」(詠み人知らず)
意味は、「あなたのところには、私が身を寄せる場所がありませんので、私の身体はあなたがら遠く隔たっています。けれども、私の心はあなたの影となっておそばにおります」です。

この時代、「寄る辺」はすでに「身を寄せる頼りの場所」という意味で使われています。今でいう不倫か、反対された恋かもしれませんね。情熱的な恋の歌とも考えられます。

「寄る辺」の類語

「拠り所」の意味と使い方

「拠り所」(よりどころ)と読み、意味は2つあります。

  1. 頼り、頼みとするところ、ささえとなるもの。
  2. 物事が成り立つ根拠となるもの。

「寄る辺」の類語としては、1の意味が該当します。ただし、「拠り所」においては物理的な場所を指すことは稀です。精神的に頼りとするもの、自分を支えてくれる何かを「拠り所」と呼ぶことが多いでしょう。

例えば家庭や実家、なにかの組織などを指す場合は、場所や建物を含めて「拠り所」と称する場合もありますが、人物や宗教、仕事、趣味など対象の幅が実に広い言葉です。

【文例】
  • 田中君にとって、妻と子ども二人が待つ家は心の拠り所だ。
  • 他者からはワーカホリックにさえ見える鈴木君は、仕事が生きる拠り所だという。
  • 美恵さんは、信仰している宗教を心の拠り所として充実した人生を送っている。


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