「怨嗟」とは?
「怨嗟」は、(えんさ)と読み、恨み嘆くことを意味します。日常会話で見聞きすることはほぼなく、文章、わけても小説などで目にする言葉です。
「怨念」(おんねん)「怨霊」(おんりょう)などの言葉で使われるときは「怨」という漢字は(おん)と読まれているので、「怨嗟」は(おんさ)と読んでしまいそうですが、これは誤読なので注意しましょう。
「怨嗟」の漢字について
「怨嗟」の意味をより深く理解するために、「怨」と「嗟」の漢字をそれぞれ検証していきましょう。
「怨」は、音読みが(えん、おん)、訓読みが(うら・む)。うらむ、うらみ、あだ、かたき、という意味を持つ漢字です。「怨嗟」では、うらみ、という意味で用いられています。
「怨」の文字の、心の上の部分は、人間が身を曲げている状態を表しています。すなわち、心が曲がるような恨み、嘆き、ということを表す文字なのです。
「嗟」は、音読みが(さ)、訓読みが(ああ、なげ・く)。意味は「悲しんだり感嘆したりするときに発する声のこと。『ああ』」「嘆くこと」です。「怨嗟」では、嘆くという意味で用いられています。
「怨嗟」の使い方
「怨嗟」は、日常会話ではまず用いられることのない言葉です。恨みを相手にぶつけようとして、「この怨嗟を…」などと口にしても、「えんさ?」ときょとんとされてしまうことでしょう。
かなり強い恨みを表すネガティブな言葉ですから、書き言葉であっても、用いるときは慎重に状況を見極めたいものです。
同じうらみでも、「恨」の漢字に比べると、「怨霊」「怨念」など、実におどろおどろしいものや感情を表す言葉に使われていますので、「怨嗟」は目で見た感じからもネガティブなイメージを強く喚起します。
「怨嗟」の文例
- 冤罪で何年も投獄されていたA氏の怨嗟は想像しがたいほどのものだと思う。
- 10年つきあった恋人に去られたB子の怨嗟は深く、立ち直ることができないままだ。
- 増税で生活が苦しくなった庶民の怨嗟の声は、なかなか政治家には届かないものだ。
「怨嗟」の類語
「悲憤」の意味と使い方
「悲憤(ひふん)」は、読んで字のごとく、悲しみ憤ることを指す言葉です。悲しみという感情が入る点は、「怨嗟」の嘆きの感情に通じるため、もっとも近い類語といえましょう。
【文例】恋人との仲を親に無理やり裂かれた惠子さんの悲憤は大きく、実家に帰ることはなくなった。
「怨恨」の意味と使い方
「怨恨(えんこん)」は、「怨」も「恨」も「うらみ」を表すことから、強く深いうらみの心を表しています。嘆くという意味は含まれないため、「怨嗟」よりも恨みの感情は強いと考えてよいでしょう。
【文例】人は、自分や自分の大切なものを傷つけられるときに怨恨の想いを抱くが、やがて、他者を恨むことは自らも傷つけると気づき、許しの想いに至ることが多い。
「遺恨」の意味と使い方
「遺恨(いこん)」とは、長い間持ち続ける、深く忘れがたい恨みのことを意味する言葉です。「遺」という漢字の意味のひとつに「のこる(遺る)」があります。つまり、恨みが長く心に巣食い、残ることが「遺恨」です。
【文例】田中家と鈴木家は、三代前から両家の敷地の区分をめぐり争ったため、いまなお深い遺恨を互いに抱いている。
「怨嗟」の対義語
「怨嗟」の対義語は、「感謝」です。意味は、ありがたいと感じること、ありがたいという謝意を示すことです。
うらみの気持ちは双方にネガティブな影響をもたらします。どんな小さなことにも感謝の気持ちを向ければ、自然と人間関係もうまく回るのではないでしょうか。「怨嗟」よりは「感謝」で生きたいものです。
【文例】恨みの気持ちはなるべく手放し、感謝の気持ちで心を満たせば、結局は自分が幸せになることに気づくだろう。