「多岐」の意味
「多岐」(たき)とは、道が幾筋にも分かれていること、および物事が多方面に分かれていることという意味の言葉です。
「岐」の字は、「山」に「支(わかれる意)」から、「えだみち」や「わかれみち」の意です。
「岐」が「多い」わけですから、上のような意味を成すわけですね。「岐」の字を使う言葉には他に、「分岐」「岐路」などがあります。
「多岐」の使い方
「多岐にわたる」
「多岐」という言葉は、それ単独で使われることはあまり多くなく、「多岐にわたる」という形で使用するのが一般的です。「わたる」は、漢字では「渡る」もしくは「亘る」と書きます。
「多岐にわたる」とは、ある物事が多方面に(道が分かれるように)伝わり広がっていること、様々な方面に影響が及ぶこと、という意味です。
例えばビジネスシーンなどでは、ある物事が関係している対象をひとつひとつ列挙することは困難な場合があります。そんな時、「多岐にわたる〇〇」「〇〇は多岐にわたる」などと言い表すことで、広範な物事を簡単に総括することができます。
使い方のポイント
「多岐」の「多」は「多い」という意味ですから、「多岐(にわたる)」と言う場合には、その物事を構成する要素が「その場ではすべてを列挙しきれない(数えきれない)ほど多い」必要があります。
単純な「数量的な多さ」というよりも、それを構成するすべてを網羅することは煩雑であり現実的でない、というニュアンスで「多岐」を使うのがポイントです。
例えば、人間の活動、企業の業務内容、学問などは、表面に見える部分は少なくても、水面下ではさまざまな関係のつながりを持っていることが少なくありません。「多岐」はそうしたはっきり見えない要素まで含んで使うことができます。
例文
- かつて作家として名をはせた彼だが、現在の活動は環境保護、政治コメンテーター、映画批評など多岐にわたる。
- 自動車の製造販売で有名な〇〇社だが、楽器事業、IT事業、スポーツ用品事業などでもブランドが知られており、その業務内容は多岐にわたる。
- この奇妙な風習にまつわる文化人類学的な解釈はきわめて多岐である。未だに定説と呼べる考えは出ていない。
「多岐亡羊」とは?
「多岐」を使った四字熟語に「多岐亡羊」(たきぼうよう)があります。意味は、「学問の道が多方面に分かれていて、真理を得難いこと」および「方針が多すぎて、どれを選んでよいか迷うこと」です。
逃げた羊を追ううち、道が幾筋にも分かれていて羊を見失ってしまった故事に由来する言葉であり、「岐路亡羊」(きろぼうよう)とも言います。
「二兎を追う者は一兎をも得ず」と意味が少し似ていますが、「多岐亡羊」は二匹の羊を追ったわけではなく、欲張って追っていたわけでもありません。「選択肢が多すぎて途方に暮れる」という、進路にまつわる判断の難しさを嘆いた言葉であるといえます。
「多岐」を英語で言うと?
「多岐」を英語で言う場合には、「manifold」(多面的なもの、多様性)が良いでしょう。名詞としても形容詞としても使うことができます。
他にも、対象によっては「many」(多い)や、「various」(いろいろな、多彩な)といった単語でも「多岐」を言い表すことができます。
例文
- He has a manifold wisdom about psychology.(彼には心理学にまつわる多岐にわたる知識がある)
- The business of this company is very varied.(この企業の業務内容は非常に多岐にわたる)