「サシ」とは?
カタカナで「サシ」と書く場合、多くの場合は以下の意味で使用されます。
- 二人で何すること
- 肉の赤身部分に網目状(枝葉状)に入った脂肪のこと
本記事では、上記二つの「サシ」の意味・使い方を主にまとめます。それ以外の「サシ」については、記事の最後にある「その他」をご参照ください。
「サシ」の意味①:二人ですること
「サシ」の意味はひとつは、「二人で(向きあうように)何かをすること」です。「サシ飲み」「サシで話し合う」のように使用します。
漢字で書くと「差し」であり、「差し向かい」の略です。お互いに向かい合って「差し合う」(出会う、出くわす、かちあう)さまをイメージすると意味が取りやすくなるかもしれません。
「サシ」はかなりくだけた表現であり、「同じ(対等な)立場で何かする」というニュアンスが含まれます。そのため、目上の人間や、出会ってすぐの人に「サシで~しよう」と投げかけることは避けたほうがよいでしょう。
「共同で」という意味ではない
「サシ」は「二人で」という意味で使える言葉ですが、「お互いが、それぞれを向き合う」という点に重きが置かれているため、「共同で」という意味とは異なります。
例えば、「サシで家に住む」「サシでペットの世話をする」といった使い方は誤用です。お互いに向かい合った別々の家に住む、お互いに別々のペットを向かい合って育てる、という意味であれば使用可ですが、文脈としてはかなり不自然です。
使い方
- 難局を乗り切った日、今日はサシで飲みにいかないか、と部長に誘われた。
- 対人戦で苦戦している友人に助言を与えようとしたところ、これはサシの勝負だから口出しするなとたしなめられた。
- 彼は社長とサシの交渉をして、現場の問題点を認めさせ、作業員全員の待遇を改善させた。
「サシ」の意味②:肉の品質
「サシ」には、肉(特に牛肉)の見た目に関して、「(赤身の間に)網目状に走る白い脂肪部分」を表す意味があります。主に、「サシが入る」という形で使用します。
肉の表面に見える網目状の脂肪部分は、専門用語では「脂肪交雑」(しぼうこうざつ)といい、その見た目から「霜降り」(しもふり)という比喩的な形容もよく知られています。この脂肪部分が「サシ」なわけですね。
「サシ」の語源は「差し」(白い脂肪が紋様のように赤身に差している)からきていると考えられますが、いつ頃から使用されているのかも含め、正確な由来は不明です。
「サシが入った肉」はどんな肉?
「サシ」の部分はつまるところ脂(あぶら)であるため、適切に調理・加熱することで、「肉がとろける」と形容されるような柔らかい歯ごたえとなり、脂の旨味を堪能するにも適します。
このため、一般に「サシが入った肉」は高級品とされ、見た目からも上質であることがわかるため、贈り物として選ばれることもあります。
しかし、一方で「赤身のしっかりした食感が好き」「脂っぽいのは苦手」などの理由から「サシの入った肉」を敬遠する方も少なくありません。万人に受け入れられる肉の性質でないことは留意したほうがよいでしょう。
例文
- 記念日のお祝いに、親戚から高級和牛をいただいた。サシがよく入っていて、とても美味しそうだ。
- この肉はサシがきめ細かく、くっきりと入っているね。
「サシ」の意味:その他
「二人ですること」「肉に入る脂肪」以外に「サシ」が持つ意味としては、以下のようなものが挙げられます。同音異形語まで含めてしまうと膨大な項目になってしまうため、ここではカタカナで「サシ」と表記される代表的な意味に絞ってまとめます。
【さまざまな「サシ」】
- 能楽における構成単位のひとつ。拍子に合わせず、単純な節で言い流す一節のこと。
- 能楽、舞などで、手を差し出す動作を表す用語。
- 物の長短を測る道具。ものさし、定規。
- 釣りの餌の一種で、キンバエ類の幼虫。「蠁子」と書く。
- 「刺身」の略。「刺し」の意。イカ刺しなど。
- 競馬用語で、競走馬の脚質のひとつ。レース中、直線で速い足を使って前にいる馬を交わす(抜く)こと。また、そのようなレース展開。「差し脚」ともいう。