「覚束ない」とは?意味や使い方を例文と類語でわかりやすく解説

「覚束ない」という言葉、日常生活で使ったことはありますか?年配の方が「最近足が覚束なくなってね」と笑いながら話す場面に遭遇したことがある方も多いかもしれません。でも、この言葉の本当の意味や使い方をしっかり理解している人は意外と少ないのではないでしょうか。

覚束ないとは?覚束ないの意味

物事がはっきりせず不明確な状態や、それに対する不安や頼りなさを表す形容詞。また、うまくいくかどうか疑わしい状況や、疎遠・音信不通であることを示す場合もあります。

覚束ないの説明

「覚束ない」は「おぼつかない」と読み、多様なニュアンスを持つ日本語です。例えば、足取りが不安定な様子を「足取りが覚束ない」と表現したり、連絡が途絶えた状態を「連絡が覚束ない」と言ったりします。文脈によって意味が変わるため、状況に応じた解釈が必要です。古語では「おほつかなし」と表記されていましたが、現代では「覚束ない」という漢字表記が一般的に使われています。この言葉を使いこなすことで、微妙なニュアンスや心情を繊細に表現できるようになります。

日本語の豊かさを感じさせる、情緒あふれる表現ですね。状況に応じて使い分けることで、より深いニュアンスを伝えられます。

覚束ないの由来・語源

「覚束ない」の語源は古語の「おほつかなし」に遡ります。「おほつか」は「覚束(おぼつか)」の原形で、「はっきりしない」「ぼんやりしている」という意味を持ちます。これに否定の「なし」が結びついて「おほつかなし」となり、現代では「おぼつかない」という形に変化しました。漢字の「覚束」は当て字ですが、『覚える』と『束ねる』の組み合わせから、記憶や認識がしっかりとまとまらない状態を巧みに表現しています。中世の文学作品にも登場する歴史ある言葉で、日本語の情緒的な表現を代表する語の一つと言えるでしょう。

古くから使われてきた言葉だからこそ、深い味わいと豊かな表現力があるんですね。

覚束ないの豆知識

面白いことに「覚束ない」は、年配の方が自身の身体機能の衰えをユーモアを交えて表現する際によく使われる言葉です。特に「足が覚束ない」という表現は、老化に伴う運動能力の変化を柔らかく伝える便利なフレーズとして親しまれています。また、ビジネスシーンでは、プロジェクトの先行きが不透明な場合に「計画が覚束ない」などと控えめな表現でリスクを伝えるのにも用いられます。このように、直接的な表現を避けつつ本意を伝える日本語らしい婉曲表現としての役割も担っているのです。

覚束ないのエピソード・逸話

作家の夏目漱石は『吾輩は猫である』の中で、猫の視点から人間の不安定な様子を「覚束ない」という言葉で描写しています。また、昭和の名女優・森光子さんは高齢になってからも舞台に立ち続けましたが、インタビューで「足は覚束なくなったけど、心はまだまだ現役よ」と笑って語り、多くのファンから共感を集めました。最近では、人気俳優の阿部寛さんが時代劇の撮影で馬に乗るシーンについて「最初は乗馬が覚束なくて緊張した」と告白し、完璧に見える俳優でも最初は不安があるという人間らしいエピソードを明かしています。

覚束ないの言葉の成り立ち

言語学的に見ると、「覚束ない」は日本語の形容詞における「ク活用」に分類されます。否定の意味を持つ「ない」が付いていますが、これは本来の否定形ではなく、一語の形容詞として機能しています。また、この言葉は「状態形容詞」に属し、物事の性質や状態を表す特徴を持ちます。興味深いのは、一つの語で「不明確さ」「不安」「頼りなさ」「疑わしさ」「疎遠」という複数の意味を包含する多義性で、文脈によって意味が変化する日本語の曖昧性を象徴する表現と言えます。歴史的仮名遣いでは「おぼつかない」ではなく「おほつかない」と表記され、日本語の音韻変化の過程も窺える貴重な語彙です。

覚束ないの例文

  • 1 スマホの充電が5%切ると、いつ電源が落ちるか覚束なくて、ソワソワしながら充電器を探すことありますよね。
  • 2 新しい職場での初めてのプレゼン、準備はしたものの、うまくいくかどうか覚束ない気持ちでいっぱいでした。
  • 3 久しぶりに会った友人と話していると、お互いの近況が覚束なくて、なんとなく距離を感じてしまうこと、ありませんか?
  • 4 雨の日の通勤時、傘をさしながらスマホを操作するのは本当に覚束なくて、落とさないかハラハラします。
  • 5 子育て中の親なら共感してくれるはず、子どもが初めて自転車に乗るとき、その覚束ないペダリングに思わず手を伸ばしてしまいます。

「覚束ない」の使い分けポイント

「覚束ない」を使いこなすには、似た意味の言葉との微妙なニュアンスの違いを理解することが大切です。特に「不確か」「曖昧」「心もとない」との使い分けがポイントになります。

言葉ニュアンス使用例
覚束ない全体的な不明確さ+心理的不安足取りが覚束ない
不確か客観的事実としての不確実性情報が不確かだ
曖昧意図的なぼかし表現返事が曖昧だ
心もとない主観的な不安感の強調準備が心もとない

このように、それぞれの言葉が持つ微妙なニュアンスの違いを理解することで、より適切な表現を選ぶことができます。

使用時の注意点

「覚束ない」を使用する際には、いくつかの注意点があります。特にビジネスシーンでは、誤解を生まないように配慮が必要です。

  • フォーマルな場面では、より明確な表現に言い換えることを検討する
  • 相手の状態を表現する際は、失礼にならないように配慮する
  • 重要な意思決定の場面では、あいまいな表現を避ける
  • 文章で使用する場合は、文脈から意味が明確にわかるようにする

言葉は時として、話者の意図とは別の解釈を生むことがある。特に「覚束ない」のような多義的な表現は、受け手の状況や心情によって様々に理解され得る。

— 金田一春彦

歴史的変遷と現代での使用実態

「覚束ない」は時代とともにその使用法や頻度が変化してきました。古典文学作品から現代の日常会話まで、長い歴史を持つ言葉です。

  1. 平安時代の文学作品に「おほつかなし」として登場
  2. 江戸時代には現在の「おぼつかない」の形で定着
  3. 明治時代の文豪たちが作品の中で多用
  4. 現代ではやや古風な印象を持たれることも
  5. 近年では高齢化社会の影響で、身体機能に関する使用が増加

現代では、特に高齢者の間で「足が覚束ない」などの表現がよく使われ、老化に伴う変化を柔らかく表現する言葉として親しまれています。

よくある質問(FAQ)

「覚束ない」と「心もとない」の違いは何ですか?

どちらも不安や頼りなさを表しますが、「覚束ない」は物事がはっきりしない状態そのものを指すのに対し、「心もとない」はそれに対する心理的な不安感に重点があります。例えば「足取りが覚束ない」は物理的な不安定さ、「心もとない」は内心の不安を表現します。

「覚束ない」はビジネスシーンで使っても大丈夫ですか?

状況によりますが、基本的には使用可能です。ただし、プロジェクトの進行状況などで「覚束ない」を使う場合は、婉曲的な表現となるため、より明確な表現が必要な場面では避けた方が良いでしょう。例えば「計画が覚束ない」ではなく「進捗に不確実性がある」などと言い換えるのが無難です。

「覚束ない」の反対語は何ですか?

明確な反対語はありませんが、文脈によって「確かな」「はっきりした」「確実な」「頼もしい」などが対義的な表現として使えます。状態が不明確ではなく明確であること、不安ではなく安心できることを表現する言葉が反対の意味合いを持ちます。

「覚束ない」は日常会話でどのように使えば自然ですか?

カジュアルな会話では「最近、記憶が覚束なくてさ〜」や「足元が覚束ないから気をつけて」など、身近な話題で使うと自然です。年配の方が自身の身体機能についてユーモアを交えて使うケースも多く、親しみやすい表現として受け入れられています。

「覚束ない」と「不確か」はどう使い分ければいいですか?

「不確か」が客観的事実としての不確実性を指すのに対し、「覚束ない」は主観的な不安や曖昧さを含む点が異なります。例えば「情報が不確かだ」は事実として、「情報が覚束ない」は話者の不安感が強調されます。文脈によって使い分けることで、ニュアンスの違いを表現できます。