「曖昧模糊」の読み方と意味
「曖昧模糊」という四字熟語は「曖昧」と「模糊」という二つの熟語が合わさって成り立っています。「曖昧」は「あいまい」、「模糊」は「もこ」と読みます。
「曖昧」の「曖」という漢字は、「暗い」「はっきりしない」「覆い隠す」といった意味を示します。また「昧」という字もまた「暗い」「愚かで、ものごとを知らない」といった意味合いを持ちます。つまり「曖昧」はどちらも同じ意味の漢字を重ねたもので、「はっきりしないこと」「ぼやけていること」や「いかがわしい」といった趣旨の言葉です。
一方「模糊」も「曖昧」と似た意味合いを持つ熟語です。「はっきりしないさま」や「ぼんやりとしたさま」「もうろうとした状態」を表します。太宰治の作品「佐渡」に「あの雲煙模糊の大陸が佐渡だとすると、到着までには、まだ相当の間がある」といった一節があります。「雲煙模糊」とは、雲と霧でぼんやりとかすむ姿を表現した言い方です。
このように「曖昧模糊」(あいまいもこ)は同じような意味の字と熟語を連ねた形になっており、「(ものごとが)はっきりせず、ぼんやりしている」ことを強調する意味合いを持つ四字熟語だといえます。
「曖昧模糊」の使い方
「曖昧模糊」は「ぼんやりして、はっきりしない」という状態を、より強めて言う表現だといえます。難しい漢字を使用していますので、日常的な会話やSNS、メールなどではあまり用いないかもしれません。
主に小説や論説などの文章語として使われる、比較的堅い表現ですが、「はっきりしない」さまを取り立てて表現するには、便利な四字熟語でもあります。
態度や言を左右にして、どちらの立場を取っているのか判然としない。境界線がはっきり分からない。両方に配慮してあえてぼかした言い方をする。現代社会ではこうした状況や場面は大変頻繁に見受けられます。これらを端的に表現する際に「曖昧模糊」は非常に適した言葉でもあります。
社会人やビジネスパーソンのたしなみとして、知っておきたい表現の一つといえそうです。
「曖昧模糊」の類語と例文
「曖昧模糊」の類語の例
・有耶無耶(うやむや)
・五里霧中(ごりむちゅう)
・あやふや
・朧気(おぼろげ)
・不明瞭
・漠然(ばくぜん)
・朦朧(もうろう)
・茫漠(ぼうばく)
「曖昧模糊」の例文
・あまりに曖昧模糊とした説明に、聞いていてだんだん腹が立ってきた。
・彼は両方の顔を立てるために、あえて曖昧模糊としたことしか言わないのだ。
・主張が全く違う彼らのグループと合流すると、わが党が目指す政治が一層曖昧模糊なものになってしまいかねない。
「曖昧模糊」の英語表現
「曖昧模糊」はある意味で日本語的な表現かもしれませんが、英語にも似た言い方は多いようです。
・vague (漠然とした)
・obscure (あいまいな)
・dark (暗い、分かりにくい)
・faint (かすかな、弱々しい)
・dim (ほの暗い)
・foggy (霧が立ちこめた)
英語の例文としては次のようなものがあります。
・His theory is very obscure. (彼の理論は曖昧模糊として理解できない)
「曖昧模糊」のまとめ
私たちが暮らす現在の社会には、正体がよく分からない、はっきりしないものごとがあふれているためでしょうか、今回ご紹介したように「曖昧模糊」の類語には非常にたくさんの、バラエティに富んだ表現があります。
一方、「曖昧模糊」の反対語・対義語は「明々白々」「一目瞭然」など、あまり種類が多くない印象です。やはり世の中には「曖昧模糊」なものの方が多いのだな、と言葉を見比べるだけでも感じられるようです。
なお、今では漢字はPCやスマートフォンでの変換が一般的ですから、間違うことは少ないかもしれませんが、「曖昧」の「昧」は「味」ではありませんので、使用の際はご注意ください。