「物心」の意味
「物心」は「ものごころ」と読む場合と、「ぶっしん」と読む場合とがあります。読み方によって意味が異なりますので、それぞれの意味を見ていきましょう。
「ものごころ」の意味
「ものごころ」は、「人情・世の中のことなどを理解する心」のことです。主に、「物心が付く」や「物心を覚える」という慣用句として用いられます。どちらも「小さな子供が世の中の裏表や、デリケートな人間関係、人の気持ちについて理解し始める」ことを表します。
物心が付くという事は、子供が自我に目覚めるという事。つまり、大人になるための第一歩と考えられます。
「ぶっしん」の意味
「物心」を「ぶっしん」と読むことに慣れていない方も多いでしょう。「ぶっしん」の意味は、「物質と精神」です。「物心両面で」や「物心共に」といった言い回しでよく使われます。
「物心両面(ぶっしんりょうめん)」とは、物質面と精神面の両方を指す言葉です。
「ものごころ」と「ぶっしん」の読み分け方
「物心」を「ものごころ」と読むか、「ぶっしん」と読むかは文脈によって判断します。上述した通り、「物心が付く・物心を覚える」の場合は「ものごころ」と読んで間違いありません。
「ぶっしん」と読むのは、例えば、哲学などにおいて、物質と精神が別の物であるといった話をしているとき。組織運営や経済において、物理的な事(金銭的な援助など)と精神的な事(メンタル的なサポートなど)の話をしているときなどです。
「物心」の使い方
物心(ものごころ)の例文
- 僕が物心付いた頃には、ペットの柴犬は家族の一員だった。
- 物心を覚えた頃に初めて買ってもらったゲームで未だに遊んでいる。
物心(ぶっしん)の例文
- 物心両面から君の事を後押しすると決めた。
- 彼は物心共に不自由した事がなかった。
「物心一如」とは
「ぶっしん」を含む言葉に「物心一如(ぶっしんいちにょ)」があります。「一如」は「真理はただひとつである」ことを指しますから、「物心一如」は「物質と精神は一体である」という意味です。
「物心一如」の関連語
【心身一如(しんしんいちにょ)】
「精神と身体は一体である」という意味です。引き合いに出している物は少し異なりますが、身体も物質と捉えるならば「物心一如」に近い表現とも言えるでしょう。
【物心二元論(ぶっしんにげんろん)】
フランスの哲学者、デカルトが唱えた「身体と精神は別物であるとする説」のことで、「心身二元論」と呼ばれることもあります。
簡単に言うと、「身体」は「目に見えるもの」、「精神」は「目に見えないもの」という点で決定的に違うという事です。この説が指し示す内容は「物心一如」とは正反対ですね。
「物心が付く」時期
「物心が付く」のは、個人差はあるものの、だいたい3歳〜4歳ぐらいと言われています。「ものごころ」自体は目に見えません。そのため、物心がついたかどうかは、分別のある行動がとれるようになってきたなどの事象から判断するしかないからでしょう。
ところで、「物心が付いた頃」=「遡れる限りで一番古い記憶がある頃」というイメージしている人も多いかもしれませんね。「物心」と「記憶」は別の物なのに、このようにイメージされるのはなぜでしょうか。
個人差はあるものの、多くの場合、人が覚えている一番最初の記憶(古い記憶)は、3歳頃の記憶とされています。
一般的に、物心が付く時期も一番古い記憶がある時期も3歳頃。そのため、このようなイメージが持たれていると考えられます。
「物心」を英語で
「ものごころ」の英語表現
「物心(ものごころ)」は、英語で「discretion(思慮分別)」と表現することができます。しかし、大抵の場合は、「物心が付く頃」という言い回しで用いるので、「ever since A can remember」というイディオムを使うと良いでしょう。
これは、上述した「物心が付く頃」=「一番古い記憶がある頃」という解釈ですね。
[例文1]
- I was in love with her ever since I could remember.
- 訳:物心がついた頃には彼女が好きになっていた。
[例文2]
- The pet dog was part of my family ever since I could remember.
- 訳:物心を覚えた頃にはペットの犬は家族の一員になっていた。
「ぶっしん」の英語表現
「物心(ぶっしん)」は、話題によって「material and mental(物資面と精神面)」「money or spirit(資金面と精神面)」「mind-body(心身)」のように表現することができます。また、「物心両面」の場合は、「both physically and spiritually」となります。
[例文3]
- I have decided that he's being supported with both physical and spiritual.
- 訳:私は物心両面で彼を支えていくと決めた。
[例文4]
- He had no inconvenienced for money or spirit.
- 訳:彼は物心共に不自由した事がなかった。