「拘り」とは?
「拘り」は、(こだわり)と読みます。動詞「拘る」の連用形が名詞化されたもので、読み方さえわかれば、誰でも知っている馴染み深い言葉ですね。ただ、実はもうひとつの読み方(かかわり)も存在します。
「拘」の字義
「拘」は、音読みでは(こう)、訓読みでは(とらえる、とどめる、かかわる、かかずらう、こだわる)。字義はおもに、①とらえる・つかまえてとどめる、②かかわる、気持ちがとらわれる、の二つです。
この二つの字義から、心が対象に捉えられ、捕まえられることで「こだわり」となり、こだわることで「かかわり」となるといったイメージが読み取れるでしょう。次の項から、「拘り(こだわり)」と「拘り(かかわり)」に分けて見ていきます。
「拘り」(こだわり)とは
「拘り」(こだわり)の意味は、大きくわけて次の二つの意味があります。
- こだわること、気にかけること、拘泥(こうでい)すること
- (こだわりをつける、という慣用句において)難癖(なんくせ)をつけること、文句を言うこと
「拘り」(こだわり)の使い方
「拘り」(こだわり)は、前後の文脈によって、ポジティブな意味にもネガティブな意味にもなる言葉です。
たとえば「食に対する拘り」と言う場合を考えてみましょう。空腹が満たされればいいという食事ではなく、素材・調理法・味わい・栄養・盛り付けなど、「食」を大切にとらえる姿勢が見て取るならば、ポジティブな表現と言えるでしょう。
しかし、食に対する執着が強すぎて、好みに少しでも合わないものは受け付けられないという文脈であれば、ネガティブな表現ともなり得ます。実は「拘り」はもともとが悪い意味で使われていました。
「拘る」の語源の「拘泥」(こうでい)は、「さまざまな考え方があるなかで、一つのことのみに意識が向き、縛られてしまうこと」という意味です。ネガティブな意味での「拘り」には、こだわりが強すぎる、つまりは融通がきかない、というニュアンスがあります。
「拘り」(こだわり)の文例
- 真知子さんは、洋服に拘る人だ。ブランド志向というのではなく、デザインや品質、素材や色を吟味し、日々気持ちよく袖を通したいのだそうだ。
- 今月は、産地と無農薬に拘った野菜を使う特別メニューをご提供します。
- 鈴木氏は、生活のしかたへの拘りが強すぎて、夫のマイルールを押し付けられる奥さんは疲れはてている様子だ。
- テレオペの仕事では、細かいことに拘りをつけるクレーマーへの対応が最も大変だ。
「拘り」(かかわり)とは
「かかわり」は、多くの場合、「関わり」や「係り」と表記します。この場合は、関係する・重要な繋がりを持つ・影響することを表します。一方、「拘り」(かかわり)と書いた場合には、こだわりを持ってかかわるという意味です。
「拘り」(かかわり)の使い方
上述の通り、「関わり」「係り」と「拘り」では意味が異なりますが、ひらがなで表記されている場合は区別がしづらいものです。その場合は、前後の文脈から読み解きましょう。
「こだわりを持ってかかわる」という意味で使っているならば「拘り」と漢字で書く方が良いでしょうが、「こだわり」と読まれる可能性があるのでルビが必要かもしれません。
「拘り」(かかわり)の文例
- 学歴や家柄、ブランド名などレッテルにばかり拘りをもっていると、本質を見失いがちだ。
- 彼はジャンルに拘りなく、良いと思った音楽はなんでも聴いている。
- 弟子たちに自分の説の立証に拘りすぎないようにと教えていた。
「拘り」の類語
「拘り」(こだわり)の類語
「拘り(こだわり)」の類語として、次の二つの言葉を挙げることができます。「固執」(こしつ・こしゅう)があります。これは、自分の意見、自説を強く主張し、容易に変えようとしないことを意味する言葉です。
【文例】小林氏は、自分の考えに固執するあまり他者との協調を得ることが難しく、孤立しがちだ。
また、「執念」(しゅうねん)は、対象を強く深く思いつめること・対象へのこだわりが強く、諦めたり手放したりしない心のことを指します。
【文例】佐々木氏は、フリーエネルギーの開発に執念をもやし、実験を重ねている。
「拘り」(かかわり)の類語
「拘り」(かかわり)の類する言葉には「執着」(しゅうちゃく・しゅうじゃく)が挙げられます。一つの対象に心が強くひかれ、とらわれて、そこから心を離すことが難しいことを表す言葉です。
【文例】山田社長は、しだいに権力の座に執着する思いがうまれ、その結果、独裁的な人事に走っている。