「嗜虐心」とは?意味や使い方をご紹介

「嗜虐心」とは、残虐なことを好む精神の傾向や心理のことを表す表現です。身近に「嗜虐心」を持った人がいたら怖いかもしれませんが、最近では軽めのニュアンスで使われることもあるようです。ここでは、「嗜虐心」の意味や使い方をご紹介します。

目次

  1. 「嗜虐心」とは?
  2. 「嗜虐心」の使い方
  3. 人が「嗜虐心」を持つ理由

「嗜虐心」とは?

「嗜虐心」(しぎゃくしん)とは、何かを痛めつけたり、損ない虐げることを好む人間の心理のことです。

「嗜虐」(しぎゃく)に「心」がついた言葉であり、この「嗜虐」が、「むごたらしいことを好む」という意味を持っています。まずは、「嗜」と「虐」、それぞれの字義を掘り下げておきましょう。

「嗜」と「虐」の意味

「嗜」(シ)という字は、「口」と「耆」(キ)から成りますが、この「耆」は「旨」の字に通じているとされ、すなわち「口で味わう、旨い、好む」という意味を持ちます。

一方の「虐」(ギャク)は、「虎」と「爪」から成り、動物のトラが爪で獲物を痛めつけるさまを表しています。その様子を思い浮かべると、「痛めつける、損なう」や「惨(むご)い」という意味が浮かんでくるのではないでしょうか。

すなわち「嗜虐」は、好物を口で味わうかのように、喜んで何か・誰かを痛めつける、そんな惨いさまを表す言葉であることがわかりますね。

「嗜虐心」の使い方

「嗜虐心」は、何らかの必要性に迫られているわけでもなく、ただ楽しむことを目的として何かを痛めつける(痛めつけようとする)、そんな人間の心理を指して使います。

物理的に手を出さずとも、精神的に追い詰める、プレッシャーをかける(ことを好む)形でも「嗜虐心がある」と言うことができます。また、「嗜虐心」が向けられる対象は、人間・動物などの生物が多いようです。無機物に対して使われることはほとんどありません。

一般に「嗜虐心」と言った場合は、一種の異常性を連想される方も少なくないと考えられるため、使用にあたっては十分に注意しましょう。

近年はやや軽めのニュアンスで使用されることも

「嗜虐心」は、近年では、「人をからかうのが好きな心理傾向」「困っていたり、たじろいでいたりする人にも、言動や行動でぐいぐい攻めていくのが好きな心理傾向」といった、やや軽めのニュアンスで使われることがあります。

この場合の「嗜虐心」は、非常に外向的、かつ他人に対して積極的な態度として観察されることがあり、場合によっては部分的な長所として捉えられることもあるようです。「好奇心旺盛」「からかい上手」「ドS」といった性格表現も用法が近いでしょう。

特に、マンガ、アニメなどフィクション作品では極端な嗜虐性を持ったキャラクターが(特に悪役として)描かれることが多く、現実の人間に比べると、このような軽いニュアンスを含めた「嗜虐心」を見る機会が多いかもしれません。

例文

  • おのれの嗜虐心を満たすためだけに及んだ彼の犯行に、世間が向けた目は厳しかった。
  • 内向的で、いつもおどおどしているその子の振る舞いは、いじめっ子の嗜虐心を刺激してしまうらしい。
  • 小さくて可愛らしいものを見ていると、嗜虐心が煽られてしまうんだと彼は語った。

人が「嗜虐心」を持つ理由

なぜ「嗜虐心」を持つ人がいるのでしょうか?あるいは、人が「嗜虐心」にかられてしまうのはなぜでしょうか?

人の心理は複雑であり、個人差もありますので、その理由を一言で簡明に語ることは困難ですが、代表的なものとしては次のような要因を挙げることができます。

①「嗜虐心」は普遍的な心理である

例えば、子猫や、小さな子どもなど可愛くてたまらないものを目にしたとき、人間の心には「守りたい」という気持ちと、心行くまで存分に干渉したい(反応を得たい)という気持ちが、同時に去来することがあります。

この後者にあたる気持ちが「嗜虐心」の正体と考えることができます。すなわち、人間には興味ある対象を深く知りたいという普遍的な心理があり、対象への物理的・精神的な干渉行為は、その方法のひとつなのです。

「頭をなでる」「じっと観察する」くらいなら構わないでしょうが、周りから「やりすぎ、嫌がってるじゃないか」と言われるほど干渉してしまうと「嗜虐的」という言葉が当てはめられてしまうのかもしれません。

②「嗜虐心」は他人との比較で生じる

人間は社会性の生き物であり、良くも悪くも「他人」に影響されて生きていると言われています。例えば、自分の現状と比較して他人の幸せをうらやましく思ったり、他人の成功を妬んだりする気持ちは、身に覚えがある方もいるのではないでしょうか。

時には、他人に対して「ひどい目に遭ってしまえばいいのに」と願うような場面もあるかもしれません。そのように、自他の不平等感を端緒として、意識的・無意識的に発生する他者への攻撃心が「嗜虐心」の正体といえるかもしれません。

ただ、社会性の生き物として他人のことを意識したり、競争心を喚起されたりすること自体は自然なことといえます。もしあなたに「嗜虐心」が生じたとしても、それを自制できる限りは何の問題もないと言ってよいでしょう。


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