「お達し」の意味とは?
「お達し」には、次の二つの意味があります。
- 役所や会社の上役からの通知
- 江戸時代、幕府から各機関に宛てた指示や命令
また1や2の意味のような指示や命令だけでなく、それらの通知が記されている文書そのものを指すこともあります。役所や上役から来る通知ですから、その内容は実質的に守らなければならないこと(=命令)と捉えて差し支えないでしょう。
江戸時代の「幕府」は、武家政権でもっとも権力を持つ者が治めていました。現在の「政府」や「省庁」、あるいは「役所」の役割を担っていた組織です。
「お達し」は、「権力が上である者」から発せられる命令を指しますから、現在使われている上記1の意味は、2の意味から派生していることがうかがえますね。時代が移り変わっても、「お上」からの「お達し」には従わざるをえないのでしょう。
「達」の字義
「達」は、「道が通じる」「届く」など多義的な漢字ですが、「お達し」においては「通知、命令」という意で用いられます。
「お達し」を用いた例文
- 関係省庁から、即刻工事を中止するようにとのキツイお達しがあったところだ。
- 社長から売上げを伸ばせとのお達しが来るのはいいが、精神論だけで事態は好転しないだろう。
- 当局からのお達しで、関係者以外の方をここから先へお通しするわけにはまいりません。
いずれの例文においても、「お達し」が上からの命令である以上従わざるを得ないというニュアンスが読み取れますね。
「お達し」の関連表現
「お達し」と似たような意味の言葉には、次のようなものがあります。
- 通知(つうち)…告げ知らせること
- 通告(つうこく)…告げ知らせること
- 通達(つうたつ)…(上位機関が指示を)知らせること
- 通牒(つうちょう)…公文書で通知すること
- 伝達(でんたつ)…命令・指示などを他に伝えること
- 周知(しゅうち)…広く知れ渡ること
- 連絡(れんらく)…情報などを知らせること
いずれも、情報や意思を周囲に知らしめるという意味を含んでいますが、「お達し」のような命令・指示の意味合いが含まれているのは「通達」のみです。したがって、これらの言葉はシチュエーションに合わせた使い分けが求められます。
また、これらの熟語に「通」の字が多く含まれているのも特徴です。これは、「通」に「はっきりと知らせる」という意味が含まれるからに他なりません。
「達」を含む四字熟語
「達」の字を含む四字熟語には、以下のようなものがあります。
- 上意下達(じょういかたつ)
- 上命下達(じょうめいかたつ)
これらは、上の立場の者がその意思や命令を下の立場のものにしっかりと伝える様子を表すものです。その意味では「お達し」と非常に関連が深い四字熟語といえます。
また、次のような四字熟語も存在します。
- 下意上達(かいじょうたつ)
こちらは、下の者の意見が上役にしっかりと理解してもらえる様子を表しています。「お達し」とは正反対の意味ですが、あわせて覚えてきたい熟語です。
「お達し」の英語表現
「お達し」と似たような意味を持つ英語には、次のようなものがあります。
- information【名】通達、伝達
- notice【名】通知、公示
- notification【名】(正式に)通知すること
- transmittal【名】通達、伝送
ただし、これらは単に情報を知らしめるといった意味合いだけを持ちます。「お達し」のように上からの「命令」や「指示」といった内容は表していません。もし、こういった内容をはっきり示す必要がある場合は、次のような表現を用いるほうがベターです。
- directive【名】(中央からの)指示、命令
- edict【名】(政府からの)布告、政令
- instruction【名】指図、命令
- order【名】命令