「けば」とは
「けば」は、漢字で書けば「毛羽」または「毳」です。「けば」には次の3つの意味があります。
- 畳の表面などのささくれ。紙や布などの表面が擦れた時にできる、細かな毛状のもの。
- 蚕(かいこ)が繭(まゆ)を作る時に最初に張る、足がかりとなる糸。
- 地図で山などの傾斜を示す時に用いられる印で、最大傾斜の方向に描いたくさび形の短い線。
「けば」は、ほとんどは1の意味で用いられますので、1の意味での使い方などについて見ていきましょう。
「けば」の使い方
- このフランネルは平織りなので、けばが軽いという特徴がある。
- ジュート繊維はけばがあるため、保温性に優れている。
「けば」は、上の例のようにそのまま用いられるだけでなく、「けば立つ(けばが出来る)」「けばけば(けばができた状態)」という形で使われることもあります。
- その家は長年手入れをされることもなかったので、ドアや窓は軋みを立て、畳はけば立っていた。
- 昨夜から降り続いている雨が湖面をけば立たせている。
- 絵を描いている最中、何度も筆でこすってしまったから、紙がけばけばしている。
「けば」の関連語
「けば取り」
「けば取り」は、おもにインタビューや講演などの音声データを文字に起こす作業(テープ起こし)で用いられる言葉。「ケバ取り」と表記されることが多いようです。
文章を書く場合と違って、話している時には、「あー」「ええと」などの意味のない音、「はいはい」などの相槌、あるいは言い間違いなど、話と直接関係のない部分がありますね。
このような不要部分を「けば」と言い、文字に起こす際にこれらを削除することを「けば取り」と言っています。なお、「けば取り」をせず、発言者が発した音や言葉の通りにすべてを文字に起こすことは「逐語起こし(ちくごおこし)」と呼ばれています。
「けば焼き」
「けば焼き」とは織物や糸を熱した銅板に触れさせるなどして、表面のけばを焼く工程のことです。この工程によってけばが無くなると、表面が滑らかになって光沢が出ます。
「表面フラッシュ現象」
「けば焼き」と違い、こちらは意図せず火がついてしまうケースです。「けば」に火を近づけると、炎が一瞬にして表面に燃え広がることを「表面フラッシュ現象」または「フラッシュスプレッド現象」と言います。
「表面フラッシュ現象」は、着衣着火の原因ともなります。「表面フラッシュ現象」が起こりやすい条件には、布地が燃えやすい素材であること、乾燥していることなどもありますが、「けば」の間に空気が含まれていてるため燃え広がりやすい点も挙げられます。
火がついてしまった場合、叩いたりこすったりすると余計に燃え広がってしまいます。着衣に火がついた場合は、まず燃えている服を脱ぎましょう。脱ぐのが難しい場合は、水をかける、または、燃えている面を地面に押し付けて空気を遮断して消火します。
「けば」を含む言葉
「けば(毛羽・毳)」とは意味やルーツは異なりますが、「けば」を含む言葉には次のような言葉があります。
「ケバい」
「ケバい(けばい)」とは、「度を越して派手な様子」を指す俗語で、「けばけばしい」を省略した形です。おもに、「彼女の化粧、今日はちょっとケバいよね」のように、女性の化粧や服装を評する際に用いられます。
「けばけばしい」は、「とてもきらびやかで際立っている・人目に立つほど派手であるさま」や「どきついまでに派手である・派手すぎて品がないさま」を指す言葉。「けばけばしい」の語源は、一説には「けばや(派手で目立つさま)」とされています。
「ちゃけば」
2000年頃、「ぶっちゃけ」という言葉が流行ったのを覚えているでしょうか?「ぶっちゃける」の略で、「ここだけの話・暴露話」をする際の前振りとして使われていました。これは、やがて「要するに・本音を言えば」という意味合いで用いられるようになったのです。
「ちゃけば(チャケバ)」とは、「ぶっちゃけ話」の略。「本心を言えば」「はっきり言ってしまうと」といったニュアンスで、意味も用法も「ぶっちゃけ」とほぼ同じです。「ちゃけば、あの子、ムカつくよね」のように用いられます。
これらの由来となった「ぶっちゃける」は「ぶちあける」の音が変化したもので、「打ち明ける」を強調した表現です。