「花より団子」の意味
ふだんの会話の中で、「あなたは花より団子ね」なんて言われると「食いしん坊」のイメージが先行して、「花より団子=食い意地が張っている」と思いがちですが、このことわざの本当の意味は、「梅や桜の花を愛でる風流よりお腹を満たす団子を選ぶように、実益のある物事を取る」ということです。
そのため、必ずしも対象が食べ物である必要はなく、お金や物や実利的な事情を優先する際にも、「花より団子」と例えることができます。同時にこの言葉は、芸術などを理解しない、つまり、美的感覚や情緒に乏しい人への皮肉として用いられることもあります。
それからもうひとつ、こちらはあまり使われないニュアンスかもしれませんが、「花より団子」には、「見栄えや虚飾よりも実質を重視する」という意味もあります。
「花より団子」の成り立ち
「花より団子」ということわざが生まれたきっかけは「お花見」です。もともと花見は神事の一つで、宗教的な行事でした。それがやがて、満開の花を愛でるという風習に移行したのです。
鎌倉・室町時代には、花見は貴族だけが行うものでしたが、徐々に武士階級にも習慣が広がって、「花を楽しみながらお酒や料理を楽しむ」というスタイルに変化していきました。江戸時代に入ると花見はすっかり庶民の娯楽となり、村々で人々が集まって宴席を楽しみながら、同時にその年の豊作を願うという行事になったのです。
「団子」のきっかけは秀吉?
安土桃山時代に豊臣秀吉が行なった、奈良の吉野山や京都・醍醐寺の裏山での大花見は、いまの時代にも語り継がれています。秀吉は各地から名産品や珍しい食材・菓子などを取り寄せて宴を楽しんだといい、花見に団子が付き物になったそもそものきっかけは秀吉とする説があります。
「花より団子」の誕生
江戸時代、花見が庶民のものとなったころには「花見団子」と称して三色団子が人気を博しており、そんな庶民の暮らしのなかから「花より団子」ということわざが生まれたのではないかともいわれています。
ちなみに、花見団子の三色には意味があって、紅(桃色)は春、白は冬、緑は夏を表し、「秋がない」から「飽きが来ない」という洒落で人気になったのだそうです。加えて紅白はいわずと知れた縁起物、また、緑の団子に使われる蓬(よもぎ)は、端午の節句に菖蒲(しょうぶ)とともに軒先に飾られるなど、邪気祓いの意味がありました。
「花より団子」の使い方
ことわざ「花より団子」の日常での使用例をご紹介します。
- あの人は「花より団子」だから、お土産は食べられるものにしよう。
- 名誉ある表彰状より賞金を欲しがるなんて、君は「花より団子」だね。
- みなさん、花より団子もいいですが、いったん箸を休めてあの素晴らしい景色をご覧ください。
- いやいや仲間たちにつきあって遊びに行くより、僕には目標があるんだから断って勉強しよう。「花より団子」だ。
通常「花より団子」は、他人を冷やかしたり、自身を謙遜してユーモラスに表現するときに用いる言葉ですから、目上の人やあまり親しくない相手には使わないほうがよいでしょう。
なお、上記の例の四番目は、冒頭でご紹介した「見栄や虚飾よりも実質を重視する」という意味の用法です。
「花より団子」の類語
ことわざの中には「猫に小判」「豚に真珠」のように同様の意味を持つものが多々あります。ここでは「花より団子」に類似したことわざをご紹介します。
- 「色気より食い気」
- 「名を捨てて実(じつ)を取る」
- 「花の下より鼻の下」
いずれも意味は「花より団子」と同じと考えてかまいません。三番目の「鼻の下」は「口」のこと、つまり「食い気」のことです。
「花より団子」の英語表現
ことわざは日本だけでなく、もちろん海外にも数多く存在しています。最後に「花より団子」と同じ意味を持つ英文のことわざをご紹介しておきます。
- Bread is better then the songs of bieds.(直訳:鳥の歌声よりもパンが良い)
- Pudding rather than praise.(直訳:賞賛よりプディング)
どこの国でも人間の考えることは同じようですね。