「流用」とは?
「流用」とは、大きくわけて二つの意味をもちます。
- すでに使い道が決まっているものを、それ以外の用途に用いること。また、融通して用いること。
- 国の予算執行において、同一の項の各目(対象別区分)の間で、相互に費用を融通して使用すること。
一般的な会話においては、1.の意味で用いられ、2.の意味で用いられることはほとんどありません。
「流用」の使い方
ネガティブな意味は一切ない
「流用」という言葉を耳にしたとき、多くの人がネガティブなニュアンスを感じるのではないでしょうか。
「流用」自体にネガティブな意味は一切ありません。しかし「A氏が自著にB氏の論文の一部を流用した。」という文章を読むと、A氏が悪い行為をしたというイメージが想起されがちです。
この例の場合、B氏の論文の一部を引用したことが、A氏の自著に付記されていれば、「流用」は悪い行為ではなく、論文作成上の正当な行為となります。
なぜネガティブなイメージがある?
では、なぜ「流用」にネガティブなイメージがついてしまうのか。それは、古今東西、引用や出典を明記せず、流用した文章やデータなどが、あたかも自分のオリジナルであるかのように見せかける悪質な「盗用」が後を絶たないからでしょう。
他者の作曲した曲を自作の曲として発表する、他者の文章を自分の文章として使う、他者の集積したデータを自分が集積したものとして論文に記載する、などの事件がメディアを賑わすことが多いため、「流用」は悪い行為と思われてしまいがちです。
上記の点を踏まえ、「流用」を使う場合は、引用や出典が明記されているか否かによって意味合いが異なってくることを理解し、文章の中で、その「流用」がどのような性質のものであるかが分かるように注記を付すことが必要です。
「流用」の文例
(教授A)
ある学会誌を読んでいたら、B教授の論文に、なんと私の論文の一部が丸ごと流用され、引用の注記もない。本人と学会に強く抗議し、対応を検討しているところだ。
(B子)
今回のウェディングドレスのデザインには、他のデザイナーのベールを合わせたの。発表の際には、悪質な流用と誤解されないために、コラボ企画と銘打つつもりよ。
(C男)
ライト社が自社製品の製造過程で我が社の特許技術を使っているという報告があった。無断流用かスパイに技術を盗まれたのか、ただちに調査に入ってくれ。
「流用性」について
「流用性」という言葉を見聞きすることがありますが、この場合の「流用」の使われ方を正しく理解しておきましょう。
すでに使い道が決まっているものを、それ以外の用途に用いる、という意味とは異なり、この「流用」は「汎用」(はんよう)と同義のものです。
汎用とは、例えば、多くのメーカーのエアコンに使用できる「汎用リモコン」をイメージすると分かりやすいかもしれません。「流用性」の「流用」は、ひとつのものを広い対象に用いることを意味しています。
「流用」の類語
「借用」
「借用」(しゃくよう)とは、他から借りて用いることです。様々なものが対象となりますが、「流用」と同様、許可なく無断で「借用」した場合は、罪に問われる場合もあります。物品の無断借用は窃盗とみなされることもありますし、文章や論文の無断借用は「盗用」と同義です。
【文例】
- 地域の情報誌にミッキーマウスのイラストがあったが、これはディズニー社の許可を得ない無断借用だ。
「引用」
「引用」とは、他者の文章や言葉を自分のものとして引いて、自分の文章や会話のなかに用いることです。この場合、原則としてその部分が「引用」であることを明記する必要があります。
【文例】
- 卒業論文に、学会誌に発表されていたあるデータを用いて自説の根拠とした○○君は、その部分が引用であることを明記し忘れたために、指導教授から厳しい叱責をうけた。