「適宜」とは
「適宜」は、「てきぎ」と読み、「適(てき)」(ちょうど当てはまること)と「宜(ぎ)」(都合がよいこと)から成り立つ言葉です。これからも想像できるように、「適宜」には次のような意味があります。
- ほどよいこと。その場合・状況に、ちょうどよく合っていること、適していること。
- 思いのまま。その場の状況・その時々に応じて、各自の判断でよいように行動すること。
「適宜」の使い方
「適宜」は意味が二つある言葉です。意味ごとに例文を紹介しますが、とくに、最初の各文は、似たようなシチュエーションでも、意味が異なる例を挙げています。
「ほどよいこと」の意味の適宜
- 繁忙期には、アルバイトのグループ別に、適宜お昼休み時間を指示している。
- 夏休みの補習クラスの生徒には、適宜個別に指導をしている。
- 病院にきた救急患者には、適宜な処置をとることが何より大切だ。
- マニュアルは作った後も、適宜変更していくことを忘れずにしないといけない。
「思いのまま」の意味の適宜
- 繁忙期には、アルバイトに、各自が適宜お昼休みをとるよう指示している。
- 新年度のTOEIC日程表を渡され、適宜テストを受けるよう助言された。
- ツアーで美術館に着くと、ガイドから適宜見学してくださいと言われた。
- 習い事を始める際、パンフレットに適宜必要な物を持参と記載があった。
「適宜」の関連語
「適宜」には二つの意味があり、類語を知ると違いが明白です。意味ごとの類語と英語表現、それらの例文を紹介します。
「ほどよいこと」の意味の適宜
【相応(そうおう)】
- 意味:程よくつり合いがとれていること。相応(ふさわ)しいこと。
- 例文:子供達が友人宅で大変お世話になったので、名産品を送り相応のお返しをした。
【適当】
- 意味:①ある状態・目的・要求などに、ほどよく当てはまること。②まともに取り組まないで、いい加減であること。(ここでは①の意味が類語)
- 例文:条件に合う新築物件を見つけるのは難しかったが、中古の家なら、適当な物件があった。
【適時】
- 意味:あることをするのに、ちょうどよい時。
- 例文:日本証券業協会は、適時開示情報閲覧サービスを行っている。
なお、「適時開示」は熟語です。意味は、証券取引所に上場している会社に義務付けとなっている、適時・適切に重要な会社の情報を明らかに示すことです。
【随時(ずいじ)】
- 意味:①適当な時に行うこと。その時々。臨機。②日時に制限がなく、必要な時にはいかなる時にも。
- 例文:百貨店は、お中元・お歳暮シーズンになると、随時アルバイトを募集する。
【appropriately】
- 意味:ふさわしく、適切なやり方で。
- 例文:You must confirm it appropriately.あなたは適宜確認しなければならない。
「思いのまま」の意味の適宜
【随意(ずいい)】
- 意味:束縛や制限などを受けずに、思いのままであること。自分の心のまま。気ままに。
- 例文:一般の図書館は、入退館は随意である。
【裁量(さいりょう)】
- 意味:①自分の考え・意見により判断して、物事を処置・処理すること。②法律で認められた行政の一定の範囲内での判断。(ここでは①の意味が類語)
- 例文:レストランでのワインの仕入れは、ソムリエの裁量に委ねられている。
【自由自在】
- 意味:思いのままにすること。思いのままであること。
- 例文:兄はスマホを自由自在に使いこなす。
【at will】
- 意味:思いのままに。気の向くままに。
- 例文:He ate good food at will.彼は思いのままに美食した。
「適宜」と類語の意味の相違
「適宜」と同じような意味の熟語がいくつもあります。同じ場面に出てくることもあるので、それらの相違点を理解しておくといいでしょう。
「適宜」と「適時」と「随時」
「適宜」と「適時」と「随時」は、意味が微妙に異なる類語です。適切に使い分けられるよう、各意味の違いをしっかりと認識しておく必要があります。
- 「適宜」は、あることをするのに、適していることで、どのような時でも構いません。
- 「適時」は、あることをするのに、適している時です。時が関係します。
- 「随時」も、あることをするのに、適している時ですが、何回でもというニュアンスも含まれています。
【各例文】
- 植木鉢に水をあげるのは、夏は毎日だったが、冬は適宜行っている。
- そばを茹でている時ふきこぼれそうになったら、適時水をさしてください。
- 猛暑日に出歩く時は、随時水分をとってください。
料理における「適宜」と「適量」
料理のレシピに、「適宜入れる」「適量入れる」という言葉を見ることができ、場合によれば、同じレシピ内に二つとも出てきます。「塩を適宜入れる」と「塩を適量入れる」の例で違いを見てみましょう。
【塩を適宜入れる】
- 塩は入れても入れなくてもよく、味見をして各自の判断で決める。
- 塩を入れる場合、その分量は各自の判断・好みによる。
【塩を適量入れる】
- 塩を入れることが前提。
- 塩を入れる際、その分量は各自の判断・好みによる。
このように、「適宜」と一文字しか違わない言葉でも、それぞれの意味は多少異なります。「適宜」の二つの意味や、また他の類語との違いをきちんと把握して、場面に合わせて、この言葉を適宜使いこなしたいですね。