「疑惑」とは?
「疑惑」とは、ある出来事や人物、情報などを対象として、それが真実であるかどうか、不正があるかどうか、などと疑うこと、また疑いそのものを指す言葉です。
「疑惑」の字義
「疑惑」についての理解を深めるために、1つずつの漢字の意味を考えましょう。「疑」の音読みは「ぎ」、訓読みは「うたが(う)」「うたぐ(る)」です。
この漢字は、「ぐずぐずとためらうこと」「疑うこと、疑わしく感じること」、という二つの意味をもちます。「疑惑」に用いられている「疑」の意味は、後者です。
「惑」という漢字の、音読みは「わく」、訓読みは「まど(う)」です。「惑う」、もしくは「惑わす」、という意味をもちます。
したがって、この二つの漢字が重なる「疑惑」は、「(出来事、情報の存在や真偽について)疑い惑う」という意味になります。
「疑惑」の使い方
「疑惑」は名詞ですから、そのまま名詞のかたちで用いますが、動詞的な意味をもたせる場合には、定型的に付加する言い回しがあります。それらの例を挙げてみましょう。
- 疑惑をもつ(もたれる)
- 疑惑を向ける(向けられる)
- 疑惑を受ける
- 疑惑を招く
- 疑惑を晴らす(疑惑が晴れる)
(A男)
僕は、鈴木課長に対する不満を山本君にしか話していない。鈴木課長に伝わっているとなれば、告げ口をしたのは山本君だという疑惑をもつしかないよ。
(B男)
田中先輩は、飲み会で酔っ払い、まわりに鈴木課長への愚痴をこぼしていたんですよ。なのに、僕が課長に告げたと疑惑を向けられてしまった。
(C子)
ようやく仕上げた卒業論文の一部が、ある本からの盗用だという疑惑を受けているの。私は潔白よ。
(D子)
商品企画部の中村さんは、ライバルメーカーの商品企画部の人たちと仲がいいの。立場的に、情報流出の疑惑を招くような交友は慎むべきよね。
(E男)
バイトしているコンビニで、僕が深夜勤務の時に限って高額商品が盗まれる。犯行を疑われたけど、警察に隠しカメラを分析してもらい、疑惑を晴らしたよ。
「疑惑」の類語
「疑義(ぎぎ)」
「疑義」とは、意味や内容が明瞭でないこと、疑問をもたれるような事柄、を意味する言葉です。たとえば、なにかの証明をする際に、明確な根拠となるものを示せない場合、疑義あり、と見なされます。
- 有名私立高校の入試担当のA教諭は、ある官僚の息子の受験に際して、官僚から自身の口座に振り込まれた500万円についての説明が明確にできず、口利きの疑義ありとして捜査されている。
「疑念(ぎねん)」
「疑念」とは、疑いの気持ちを指す言葉です。疑いそのものではなく、「疑う心」という内面を意味していることがポイントです。
- 反原発の活動をするためにNPOを立ち上げる計画を進めているが、A氏が会議に加わった時にのみ情報が外に洩れている。メンバーのA氏への疑念は強まるばかりだ。
「疑心(ぎしん)」
「疑心」とは、疑いの心を指す言葉です。「疑心」単独ではあまり見聞きしないかもしれませんが、「疑心暗鬼」は、会話にも頻繁に登場しますね。
「疑心暗鬼」は、「疑心、暗鬼を生ず」という古代中国の思想書『列子』中の言葉を由来とし、それを短縮したものです。
疑いの心が、そこにいるはずのない鬼を暗闇にいるように思わせてしまう。すなわち、疑いはじめると、その心がなんでもない物も疑わしく思わせる、という例えです。
- 役員たちは二つの派閥に分かれているが、全員が全員に対し、敵対側に寝返らないかという疑心を抱いている。
- 雑貨屋の店主だった小林氏は、あまりの万引きの多さに、客に対して疑心暗鬼になりすぎ、ついに店を閉じてしまった。