「了見」とは?
「了見(りょうけん)」は、考え、分別、思案、思慮、気持ちなどを表す言葉です。「料簡」とも書きますが、どちらも意味は同じです。書きやすさ、読みやすさからか、「了見」の字のほうが一般的に用いられているようです。
現代ではあまり使われない用法もある
「了見」には、辞書上では、下記の三つの意味が存在します。
- 考えをめぐらすこと、熟考して判断すること。
- 我慢すること、許すこと。
- とりはからい、処置。
2や3の意味は、現代の日本語ではあまり使われない用法であり、古典などで目にするのみですので、今回は、現在でも使われることのある1の意味や、そこから派生したと考えられる「考え、分別、思案」などの意味にしぼって解説します。
「了見」の使い方
「了見」の使い方に関して、日常会話では、「了見」に匹敵する意味の「考え」のほうが頻繁に使われます。下記に、「了見」の会話例を挙げてみます。
正しい使用法なのですが、「考え」「思い」などに置き換えたほうがわかりやすく感じるのではないでしょうか。
- 外国に留学さえすれば就職に有利だという君の了見は、時代遅れだよ。
- ここは、自分の了見をただ述べる場ではない。もっと協調性をもってほしい。
現代では使い勝手があまりよくない「了見」ですが、例外として、定型句のようになっている二つの言い回しは、よく見聞きします。その二つ「了見が狭い」と「了見違い」の使い方を、それぞれ詳しくご紹介します。
「了見が狭い」
「了見が狭い」とは、自分の考えが正しいと思い込み、他者の意見に耳を傾けようとしなかったり、取り入れることを嫌う、偏った考え方のことを指します。
(A男)
山下課長は、お気に入りの高田君の意見は採用するけど、他の課員の意見には耳を傾けようともしない。上司としてあまりに了見が狭いよ。
(B子)
私の婚約者はアメリカ人なんだけど、父は、家系に外人の血は入れないと、会ってもくれないの。今時、こんな了見が狭い人間っている?
「了見違い」
「了見違い」とは、考え違いという意味です。事実とは異なっている考えを、正しいと思い込んでしまう状態を指します。
ビジネスシーンにおいては、上司から部下、先輩から後輩への指導などでよく登場します。反面、目上に対して用いるのは失礼にあたる言葉ですので、気を付けましょう。
(C部長)
中村君は、下請け業者には無理難題を押し付けるものだと思っていないか?奢りがなせる態度で、たいそうな了見違いだよ。
(B子)
町内会費は、町に良い環境をつくるために納めて頂いているものです。みなさん、個人的我儘を通すためという了見違いは、改めてください。
「了見」の類語
「考え」
「了見」をもっともわかりやすい日本語で置き換えると、「考え」になります。「考え」とは、思考すること、また、その内容や、思考によってえた判断、結論、決意などのことを指します。
【文例】
- 新入社員のメンタルサポートを充実させるという山田君の考えは、今の時代に絶対に必要だ。
- 図書館民営化という件について、それぞれ考えを述べてくれませんか?
「意見」
「意見」には大きくわけて二つの意味があります。①ある事について、心に思い、考えること。②自分の考えをのべて、他者の過ちをいさめること。「了見」の類語としては、①の意味が当たります。
【文例】
- あなたにはあなたの意見、私には私の意見があります。冷静に、客観的に議論しましょう。
- トップが社員の意見に耳を傾けないような企業は、結局は発展していかないと思う。
「思慮」の意味と使い方
「思慮」とは、慎重にいろいろと考えること、またその考えを指します。おもんばかり、と表現することもできます。考える、という部分が「了見」と重なりますが、異なるポイントとして「慎重に思いめぐらす」という付加の意味があることに注意しましょう。
「了見」は、単なる考え、意見ですが、「思慮」には「思慮深い」など、長所としての誉め言葉にも使える意味が含まれます。
【文例】
- 山中君は、この数年で、思慮分別がある社会人に成長したね。
- あなたの思慮深いお言葉を伺っていると、この組織は絶対に大丈夫だと安心できます。