「親和性」とは?
「親和性」は、大きく分けて二つの意味をもつ言葉です。
- 物質と物質のあいだの、たがいが容易に結合する性質のこと。
- ある物事と物事の組み合わせにおける、相性のよさ。
ここでは1と2の意味と使い方を、それぞれの項目別にご紹介します。
対人関係における「親和性」について
「親和性」は、「親」と「和」という字面から、人と人の融和のようなイメージを喚起されがちですが、基本的には、対人関係で用いられる言葉ではありません。
コミュニケーション力の高い人を「親和性の高い人」などとする用例も散見されますが、辞書的意味からすると、これは誤用といえましょう。しかし言葉は生き物ですから、このような使い方が広まれば意味が変化する可能性はあります。
また、ある個人と集団のあいだで、能力や適性などの「相性がよい(悪い)」というニュアンスで「親和性がある(ない)」とする用い方は、既に市民権を得つつあるようです。
物質結合における「親和性」
理化学の世界においては、物質と物質の結合性の良さを「親和性」と表現します。この場合、「親和性がある(ない)」「親和性が高い(低い)」のように用いるのが一般的です。
「親和性がある」の場合は、物質と物質の結びつきに拒否反応がない、という水準に留まりますが、「親和性が高い」の場合は、物質同士の結合の相性がきわめてよい、非常に結びつきやすい、という状態を意味します。
細菌やウイルスの増殖度の目安にも
「親和性」という文字から、ポジティブなイメージを喚起されがちですが、理化学の分野では、細菌やウイルスの増殖度の目安などに使われることがあります。
たとえば、ある細菌やウイルスが、ある臓器や細胞において増殖しやすい傾向がある時に「親和性がある」「親和性が高い」と表現されます。
物質結合における「親和性」の使い方
- 生コンクリートとモルタルの親和性が高いことが実証されて以来、どれほど多くの近代建築や大型構造物がこのコンビを基礎として生まれてきただろうか。
- 様々な臓器に親和性を示すウイルスの存在は、人類にとって大きな脅威だ。
- 製薬会社の薬品開発は、薬剤の人体への親和性を繰り返し治験することで成り立っている。
物事と物事における「親和性」
「親和性」が、物事と物事のあいだで用いられる場合、ある物と物との文化的・機能的な相性や、何らかのノウハウとその対象との相性など、さまざまな組み合わせにおける相性の度合いとして用いられています。
こちらの意味においても、親和性が「ある(ない)」「高い(低い)」のように用いるのが一般的です。
とくに、現代で使用頻度が急増したのが、コンピュータの分野における「親和性」です。めまぐるしい速度で進化が進むコンピュータの世界では、ある機器やソフトのあいだで機能的相性が合うか合わないかは、非常に重要な観点となります。
物事と物事における「親和性」の使い方
- 我が社がこのたび開発したソフトは、このOSにきわめて親和性が高いことが実証されています。
- デジタル映像は、現代の観客参加型エンターテインメントときわめて親和性が高い。
- 「くまもん」は、キャラクターの愉快さと愛らしさに加え、その存在が地方文化の創生という国の方向性に親和性が高く、大成功をおさめた。
「親和性」の類語
融和
融和(ゆうわ):ある物事と物事が、馴染んで融合すること。うちとけて双方が親しくなること。
「親和性」が、結合しあう性質のことや相性の良さを表すのに対し、「融和」には、「性質」を超えて、交じり合って結果的にひとつのものになること(親しくなること)、というニュアンスが含まれています。
【用例】
- オリンピックは、国同士が競い合うことよりも、スポーツを通じて融和することに意味がある。
馴染みやすい
馴染(なじ)みやすい:ある物と物、あるいは人と人がなれ親しみやすいこと。
「馴染みやすい」は、「親和性」と同じように、ある物質と物質における結合の良さを表すことができます。また、人と人、人と環境など、人間を対象として多く用いられる言葉であることもポイントです。
【用例】
- 今治タオルは、繊維と水の馴染みやすさを徹底的に研究して作られているので、吸水速度がきわめて早い。
- A子は人懐っこいので、転校しても新しい環境に馴染みやすいだろう。