「諧謔」とは?
「諧謔」(かいぎゃく)とは、おもしろい気のきいた言葉、おどけ、しゃれ、滑稽、ユーモアなどの意味を持つ言葉です。
「諧謔」は、古風かつ堅い印象がありますので、普段の生活ではなかなか聞くことのない言葉かもしれません。
しかし、「気のきいた言葉」や「ユーモア」という意味に注目すれば、現代社会においても十分に通用し、また求められる素養のひとつであると言えますね。
「諧謔」の使い方
「諧謔」という言葉は、「諧謔を弄(ろう)する」「諧謔に満ちた」などの形で、人に何らかの感慨を与えるような、おもしろおかしいユーモアやしゃれ(洒落)、おどけたさま、滑稽なさまに対して使います。
また、「諧謔」は、「諧謔がある」「諧謔がわかる」などの表現で、ユーモアやしゃれを使いこなす人まで意味合いとして含むことがあります。
人をその対象に含む使い方の場合は、単純に「ユーモアやしゃれを使う人」というだけではなく、「表面的な言葉(情報)に囚われず、物事を深く理解できる、分別ある人」といったニュアンスを含むことがあります。
ネガティブなニュアンスもあるため注意
ただし、「諧謔」にはネガティブなニュアンスが含まれる場合があります。悪い言い方をすれば、「諧謔」とは言葉遊びであり、時には回りくどい批判や皮肉として用いられることもあるからです。
「諧謔」の意味として冒頭にご紹介した「おどけ」「しゃれ」「滑稽」などの言葉の中にも、「ふざけるさま」「ばかばかしいこと」というメッセージが込められています
ユーモアも使い方によっては人を不快にさせるのと同様に、「諧謔」もまた、用いられる状況や相手によって、良い意味にも悪い意味にも転じうるということを覚えておきましょう。
用例
- あの作家の文章は諧謔に満ちている。少々難解だが、他の作家には真似できない面白さがあるね。
- 諧謔を弄するな。君は、もっとシンプルに物事を説明できないのかい?
- 誰も見向きしないいわくつきの骨董品だったが、諧謔を理解する彼にとっては、魅力的な商品だったらしい。
- あのお客は、贋作であることを知りながら話題作りのためにあの品を買ったんだよ。諧謔のありそうな人だったからね。
「諧謔」の字義解説
「諧」
「諧」の字は、「言」(ことば)と、「皆」(そろえる、やわらげる、調和する)が組み合わされて成り立っています。言葉を調律しているようなイメージですね。
「諧」の字がつくる熟語には、以下のようなものがあります。
- 謔易(かいい)…言行がおどけてかるがるしい、くだけている。
- 俳諧(はいかい)…俳句、連歌などの総称。
「謔」
「謔」の字も、「ことば」を表すごんべんは共通です。「虐」のつくりは、「ことさらに楽しむ、たわむれる」などの意です。たわむれに言葉を使って楽しんでいるさまが浮かびますね。
「謔」の字がつくる熟語としては、以下のようなものが挙げられます。
- 謔劇(ぎゃくげき)…たわむれる、ふざける、おどける。
- 謔笑(ぎゃくしょう)…ふざけて笑う、冗談を言って笑う。
「諧謔曲」について
「諧謔曲」(かいぎゃくきょく)とは、イタリア語「スケルツォ(scherzo)」の訳語であり、楽曲の性格を表す分類のひとつです。特定の形式やリズムに囚われない、急速なテンポや激しい曲調の変化などを特徴とします。
「スケルツォ」のもともとの意味は「冗談」です。特定の形式に束縛されない滑稽なさまからこう名付けられましたが、「ふざけた曲」というイメージはなく、今日では伝統ある楽曲形式のひとつとして認知されています。
ベートーヴェン、ショパン、チャイコフスキーなど著名な音楽家にも採用された楽曲形式であり、「悪魔的スケルツォ」「スケルツォと行進曲」など、楽曲名にも用いられています。
「諧謔」のまとめ
字面も読み方も難解であり、もしその素養を身につけようと思っても一昼夜で習得することは困難であろう「諧謔」。
しかし考えようによっては、この難しい言葉を理解し、使いこなすこともまた、「諧謔を弄する」行為に含まれるかもしれません。
付け焼き刃の「諧謔」ではすぐに見破られてしまうかもしれませんが、言葉を豊かにし、対人関係を充実させるためにも、「諧謔のわかる人間」を目指してみるのは悪くないかもしれませんね。