「ほくそ笑む」とは?
「ほくそ笑む」は物事が計画通りに進んだと満足した時に一人静かに笑うことです。自分が立てた筋書き通りになったと悦に入る笑い方で、悪代官や悪い役人の浮かべる笑いを表現するのによく使われる言葉です。
「ほくそ笑む」の使い方
「ほくそ笑む」はよく、悪いたくらみが上手くいったときにニヤニヤ笑うこと、と言われます。
しかし、この説明は正しくありません。「ほくそ笑む」のポイントは以下の3点であって、必ずしも悪いことにだけ使われるものではないからです。
【ポイント】
- 物事が計画通りに、自分に都合の良いような結果になった。
- 声を出さない。
- 一人でこっそり笑う。
「ほくそ笑む」の例文
- へそくりをためてほくそ笑んでいたら娘にばれてしまった。
- おそらく我々は彼の掌で踊らされていただけだったのだろう。奴がほくそ笑む姿が目に浮かぶ。
- 料亭でほくそ笑む姿はさながら時代劇の悪役そのものだった。
- 試験中にほくそ笑んでいて不気味だったが、出題が予想通りだったので笑ってしまったそうだ。
「ほくそ笑む」の由来
「ほくそ笑む」は、かつては「北叟(ほくそう)笑む」だったと言われています。北叟とは北の方に住んでいるおじいさんです。
一説によると「人間万事塞翁が馬」の故事で知られる塞翁のことだとか。塞翁は、北方の国境付近に建てられた要塞近くに住んでいたおじいさんという意味です。
このおじいさんは占いや予言を得意としていたそう。自分の占いや予言が当たると自分の予想通りだ、と笑っていたらしく、そこから今のような意味になったとされています。
「塞翁が馬」とは
「塞翁が馬」とは良いことや悪いことは人間には予測しがたいものであるという意味の故事成語です。
ある時、塞翁の飼っている馬が逃げ出しました。この逃げ出した馬は後に戻ってきますが、その時に優れた馬を連れてきてくれました。塞翁は苦労せずに馬を一頭得られたわけです。
しかし、この馬に乗ろうとした塞翁の子供は落馬してケガをしてしまいます。ところが、このケガのおかげで、直後に起きた戦争に行かなくて済みました。
このように、思いがけないことが良いことや悪いことにつながるので、幸福や不幸は誰にも予想ができないという意味です。また、だから過剰に喜んだり悲しんだりしてはいけないという意味でも使われます。
「ほくそ笑む」の類義語
含み笑い
「含み笑い」は口を閉じて声をあげずに笑うことです。にっこり笑うというよりはにやりと口元に笑みを浮かべる笑い方です。笑っている様子を見ている人からするとやや不気味な印象を与えるためか、もっぱら悪役の笑い方として使われます。
漫画やアニメで「ふふふ」や「うふふふふ」、「くくくくく」といったオノマトペを見たことはありませんか?これらは「含み笑い」を表したものです。
うすら笑い
「うすら笑い」は声を出さずに口元だけを動かして作る笑いです。「薄笑い」とも言います。
「うすら」とはかすかに、わずかにという意味で、普通の笑い方よりも表情の変化が少ない笑いです。困惑した時にも見られますが、人を軽蔑したり小ばかにしたりするときにもよく見られます。
例えば、威張ってばかりの上司が失態を見せた時などは、大声で笑うわけにはいきませんよね。そんな時に声を出さずに口元だけで笑っている様子が「うすら笑い」です。
苦笑
「苦笑」は字のごとく苦々しい気持ちを伴いながらも仕方なく浮かべる笑いのことです。「にがわらい」とも言います。
自分や相手の行動や発言、しぐさなどが愚かでおかしいものに感じ、笑うしかない状況で浮かべる笑い方です。
例えば、無邪気な子供に年齢や配偶者の有無を問われた時。バツの悪さから作り笑いを浮かべる人も多いのでは?こういった笑いが「苦笑」です。