「オノマトペ」の意味
「オノマトペ」という外来語は、直接的にはフランス語の単語を日本風に表記したものです。意味は「擬声語、擬音語、擬態語」などとされます。当てはまる日本語が複数あるのは、この言葉の概念を示す日本語が一つに定まっていないためです。
耳に聞こえてくる物音や、動物の鳴き声、人の感情や気持ち、見た目に感じられる風景の様子などを、言葉で説明するのではなく、その音をそのまま模倣して表現することが、日本語ではよくあります。これが総称して「オノマトペ」と呼ばれています。
音を模して言い表す「オノマトペ」は日本語に限らず、英語、中国語など各国の言葉にもたくさんある、人類の言語共通の表現方法だといえます。
「オノマトペ」の語源
「オノマトペ」という外来語は、フランス語の「onomatopée」(オノマトペ)が語源になっています。この単語をそのまま日本語読みにしたものです。ちなみに英語では「onomatopoeia」(アナマタピーア)と言うそうです。いずれも「擬声語、擬音語」といった同じ意味合いの言葉です。
これらのフランス語や英語は、もともとは古代ギリシャ語の「ὀνοματοποιία」(オノマトポーア)が語源になったといわれます。この言葉は、和訳すると「言葉をつくる」という意味を示すそうです。つまり「オノマトペ」は、耳から入る音や心に感じる音をそのまま、新しい言葉として再現し、口にしたり書き出す、いわば「モノマネ」や「形態模写」のような行為と、その言葉のことを指すといえます。
日本語での「オノマトペ」の例
擬音語の「オノマトペ」例
一口に「オノマトペ」といってもさまざまな種類があります。まず日本語における「擬音語」のオノマトペの主な例を挙げてみます。これは動物や虫の鳴き声、自然の音の表現など、オノマトペとしては一番身近なものだといえるでしょう。
【動物の鳴き声】
- メーメー(羊)
- ブウブウ(豚)
- ワンワン(犬)
- ニャーニャー(猫)
- コケコッコー(鶏)
- ザーザー(雨が降る音)
- ジャブジャブ(水がぶつかる音)
- ビュービュー(風が吹く音)
- ゴロゴロ(雷が鳴る音)
- バタン(ドアが閉まる音)
- ギシギシ(床などがきしむ音)
- ドカン(爆発音)
- ゴトゴト(電車が走行する音)
- チン(電子レンジの音)
擬態語の「オノマトペ」例
オノマトペには「人の気持ちや物事の様子」を表現する「擬態語」もあります。実際にはそうした音は聞こえませんが、あたかもそう鳴っているかのように擬似的な言葉で表すものです。
ただ研究者の中には「ギクリ」「ピン」など感情の内面を表すものを「擬情語」、「ひらひら」「ピカピカ」など外面的な様子を「擬容語」と区別したり、「ぴったり」「ちゃんと」など日本語の一般表現と区別しがたいものなど、分類は厳密とはいえない面もあるようです。
- パラパラ(紙などをめくったり、散らばる様子)
- メロメロ(惚れ込んで心酔する様子)
- もくもく(煙などが大きく立ち上る様子)
- ジーン(感動して涙が流れそうになる様子)
- ほんわか(心がなごんで、気分がいい様子)
- ぐずぐず(煮え切らず仕草が遅い様子、幼児がむずかる様子)
外国語での「オノマトペ」の例
「オノマトペ」は日本語に限らず、外国語にも豊富に見られるものです。ここでは「犬の鳴き声」(日本語ではワンワン)を例に、各国の代表的なオノマトペがどう違うか列挙してみます。
- 英語…bow-wow
- フランス語…ouaf-ouaf
- ロシア語…gaf-gaf
- 韓国語…meong-meong
- アラビア語…hau-hau
- スワヒリ語…gon-gon
「オノマトペ」のまとめ
オノマトペは、人間の言語表現やコミュニケーション方法の豊かさを示すとても良い事例ではないでしょうか。例えば幼児語の「ブーブー」はそのまま車という名詞になったり、意外なところでは、英語の「新技術語」ともいえるパソコンの「クリック」は、元来、マウスを押す音を摸したものなのだそうです。言語学の世界では「格が低い」「幼稚」などとして積極的研究が遅れている分野だともいわれ、残念な気がします。