「巷」とは?意味や使い方を読み方を含めてご紹介

「巷」という言葉、あなたはご存じでしょうか?最近は耳にする機会も減ってきた言葉ですので、まず読み方がわからないという方もいらっしゃるかもしれませんね。しかしこれは我々の生活に根差した言葉なのです。今回は「巷」の意味や使い方を、読み方を含めご紹介します。

目次

  1. 「巷」とは?
  2. 「巷」の使い方
  3. 「巷」を含む熟語
  4. 「巷」の英語表現
  5. 「巷」のまとめ

「巷」とは?

「巷」の読みと字

「巷」という字は<ちまた>と読みます。音読みでは<こう>と読み、「巷間」(こうかん)などの熟語を作ります。

「ちまた」は「岐」とも書き、さらに「巷」の異体字として「衢」「衖」とも書きますが、ここでは「巷」に統一して意味を解説します。

「巷」の意味

「巷(ちまた)」は「道股(みちまた)」に由来する言葉であり、以下のような意味を持っています。

  1. 道の分かれるところ。わかれみち。つじ。
  2. 町の中の道路。街路。とくに、繁華な通り。
  3. ところ。場所。
  4. 世間。

「道が分かれるところ」とは、言い換えれば、多方面から多様な物・人・情報が集まり、交差する場所のことです。そのような場所は無数にありますので、匿名的な「場所」や、その集合としての「世間」という意味が派生的に生じたと考えられます。

現代において「巷」という言葉はもっぱら4.「世間」の意味で使われています。「門の外側にある大きな巷」などのように具体的な道のありかを指示している場合以外では、「世間」という意味で理解してよいでしょう。

「巷」の字義

「巷」という字は、「共   」という字と「巳 」という字が組み合わされてできています。「共」は道のことを指しており、「巳」は「邑(むら)」の略字です。すなわち「巷」は「村の中を通り抜ける道」という意を表します。

同じ部首・つくりをもつ漢字としては、「巷」にさんずいをつけて水や船の通り道を表す「港」、ひとそろいの風が通り抜ける道を表す「巽」などが挙げられます。

「巷」の使い方

「巷」という言葉は、社会や世の中、およびそこに生きる人々を指して使います。ひとつの家庭・学校・会社などの特定の範囲ではなく、主語となる者を正確には特定できないような、曖昧な含みをもった人々の集合と、それが織りなす社会が「巷」です。

また、「場所」の意味で「巷」を使う際にも「このあたり」「あのあたり」のような曖昧な含みがありますが、その場所がどのあたりであるのかは、あらかじめ了解された状態で用いられる場合がほとんどです。

さらに、話者のあいだで共通の理解があれば、「地獄の巷」などのように、実際には存在しない場所を比喩的に示すことも可能です。

例文

  • じゃじゃ馬だったあの花子さんに縁談の話が来たと、巷で話題になっている。
  • 巷の噂によれば、あの武家屋敷には毎晩恐ろしい女の幽霊が出るらしい。
  • 鹿が有害な動物であるという事柄は、この巷では常識だ。
  • 日露戦争当時、203高地は修羅の巷と化した。

「巷」を含む熟語

  • 巷間(こうかん)…ちまた。世間。
  • 巷説(こうせつ)…ちまたのうわさ。風説。
  • 巷談(こうだん)…ちまたのうわさ。世間話。
  • 陋巷(ろうこう)…狭くきたないちまた。むさくるしい町。

「巷」の英語表現

「巷」を表す英語表現としては、「public」(公共、世間)が適当でしょう。多くの人が集まる、匿名的で開かれた「場所」や、「世にいる人々」というニュアンスが「巷」とよく似ています。

また、場所としての意味はありませんが、「people」(人々)のように複数の人間を主語にする方法でも、「人々が~」「世間が~」という形で「巷」という意味を表すことができます。

例文

  • a matter of public knowledge(巷では誰もが知っている事柄)
  • People say that she will retire from the entertainment world soon.(巷の噂では、彼女は近く芸能界を引退するらしい)

「巷」のまとめ

近頃は、道を歩いても人とすれ違うばかりで、立ち止まって町の噂話をするような機会は減っています。そのため「巷」という言葉とその意味について、古めかしい概念だという印象を持たれる方もいらっしゃるかもしれません。

しかし時代が変わっても、人々が情報の集まる場所に集い、世にある様々な声を聞きたがるという点は不思議と変わっていません。

例えば、インターネットは情報の世界における巨大な交差路=「巷」であり、SNSに毎日書き込まれる口コミや評判は「巷の話題」と言い換えることができるのではないでしょうか。

「巷」という言葉そのものを使わなかったとしても、それが指し示すものは、私たちの文化的な生活の中に深く根差しているといえそうです。


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