「即興」とは?意味や使い方をご紹介

「即興音楽」「即興で歌う」などに使われる「即興」という言葉。「その場の興にのって何かを作ること」という意味なのですが、この「作る」という意味はどこから生じたものなのでしょうか。今回は、「即興」の意味や使い方についてご紹介します。

目次

  1. 「即興」の意味
  2. 「即興」の使い方
  3. 「作る」という意味について
  4. 「即興」と「アドリブ」
  5. 創作分野以外の「即興」

「即興」の意味

「即興」(そっきょう)には、次の2つの意味があります。

  1. 当座におこる興味。座興。
  2. その場の興にのって詩歌などを作ること。

ここでは主に、2番目の意味について解説していきます。

「即興」が行われる分野

「即興」は、特に音楽、詩作、舞踊、演劇などの分野で行われ、「事前の準備なく、その場で作り、その場で表現すること」を意図して使われています。

例えば音楽であれば、作曲をしつつ同時にその曲を演奏するのが即興であり、詩作であれば、その場で浮かぶ言葉を即、詩として詠むのが即興です。

ずいぶん難しいことのように思えますが、創作の分野ではしばしば用いられる手法であり、「即興演奏」「即興曲」「即興劇」などの複合語も多く存在します。

「即」と「興」

即興の「即」は「ぴったりとつく」という意味であり、一方の「興」は「おもしろく楽しいこと」「(気持ちなどが)起こり、持ち上げられること」を意味する言葉です。

すなわち即興とは、コンサートホールなり舞台なり、「その場のおもしろさや盛り上がりに気持ちがぴったり一致して」起こるものです。

この点からも、即興を行う人があらかじめ気持ちや表現法を準備しておくものではない、という特徴がわかりますね。

「即興」の使い方

  • ピアノの前に座った彼は、観客の求めに応じて見事な即興演奏を披露してみせた。
  • 舞台の本番中に照明トラブルが発生したが、彼女は即興の演技で切り抜けた。

「作る」という意味について

「即興」は、その字義だけを参照すると「作る」という意味が含まれていません。あくまでも、「(その場の)興に即する」ことを表しているだけです。では、「作る」という意味はいかに生じたのでしょうか?

これは、原初の世界に立ち返り、創作とはいかなるものだったかを考えれば、理解しやすいかもしれません。

例えば、人類で一番最初に「音楽」を奏でた人には、楽譜も、使い方が定まっている楽器も、音律の規則もなく、何もかもが即興であったはずです。

おそらく当時は「創作」という概念すらまだなかった頃です。その人は知覚を駆使して自然を模索し、その場の興に自らを即した結果、それが音楽に連なる技となり、後に人々を感動させる芸術へ昇華したと考えられます。

現代の「即興」

現代においても、偉大な創作家はしばしば、優れたアイデアが浮かぶことを「何かが、天使が降りてきた」「ミューズ(芸術の女神)が囁いた」「霊感があった」などと表現することがあります。

何かが作られる時、何かを作りたいという気持ちがあってそれが作られるのではなく、作るという行為に人間を駆り立てる「興」が先立って存在する、というのが、「即興」という言葉に込められた「作る」の意味であるようです。

「即興」と「アドリブ」

「即興」は、しばしば「アドリブ」の同義語として扱われることがあります。「アドリブ」は、「任意に」という意味のラテン語に由来する言葉で、「即興的に演奏すること」「台本にないセリフを即興的にしゃべること」などの意味があります。

「即興」と「アドリブ」の違い

しかし、「即興」と「アドリブ」には以下のような違いがあるとして、厳密に区別すべきだという見方もあります。

  • 即興…すべてをその場で作り、表現すること
  • アドリブ…あらかじめ用意したパターンの中から、好きに選んで表現すること

例えばジャズ音楽では、元々のコード進行が許す範囲で任意に演奏することが「アドリブ」、コード進行自体を決定しながら演奏するのが「即興」と、分けて考えられることがあるようです。

とはいえ、アドリブもその場に即した判断で「即興的に」表現していることは確かです。この二つの言葉は、区別されることがあるにせよ、とても近い意味の言葉であると言えるでしょう。

創作分野以外の「即興」

冒頭でご紹介したように、「即興」が用いられる分野としては、音楽、詩作、舞踊、演劇などが特に有名です。これらの分野には、「リアルタイム性が重視される創作」という共通した特徴があります。

では、創作以外に即興が行われる分野はあるのでしょうか?ここでは、以下の2分野をご紹介します。

医療

医療分野には「即興医療」という言葉があります。ひとりの患者に対し最大限の条件で治療行為ができる病院での医療などとは違い、限られた条件でひとりでも多くの人間の命を救わなければならない、たとえば災害医療の現場などで求められるのが、この即興医療です。

即興医療の実践には、手近にあるものを治療器具の代用としたり、治療すべき患者の優先順位をつけたりと、高度な知識・技術、そして冷静な判断力が求められます。

経営

一流の経営者には、優れた「即興力」が求められると世に言われることがあります。会社の行く末を左右するような難しい経営判断を迫られたとき、検討や分析のための時間を省き、その場の直感に従って判断を下す才覚がこれにあたります。

さらには有力者とのコミュニケーションにおいても、その場で相手の気持ちを動かし、自分に興味を持たせる「即興的な」話術や振る舞いが、一流といわれる経営者の要件であるようです。


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