「暴言」とは?
「暴言」とは、他者の立場や人格、考えなどを無視し、傷つけることを意図して発する暴力的な言葉のことです。
物理的な暴力は、人の身体も心も傷つけます。言葉の暴力も、人の心を傷つけることで、その人の健康や生活にまで悪い影響を及ぼす可能性のある罪深いものです。
実際、名誉棄損で訴えられ、法的に罰せられる例もあり、単なる悪口というレベルのものではありません。
「暴言」の使い方
(A男)
部長から、『お前が低学歴でこの会社に入れたのは、コネだろう?迷惑な話だ』と言われたんだ。
実力で入社したのに、あまりの暴言だし屈辱だよ。パワハラで訴えようかな」
(B子)
バイト先の店長って、暴言し放題なの。
ジュディのことは「お前は肌の色が黒いから接客はするな」とか、私には「太っているんだからまかないはいらないよな」とか。
SNSで告発してみるつもりよ。
「暴言」の範囲
どのような発言を「暴言」と捉えるかは、論議されるところです。他者を傷つけたり、侮辱したりする言葉、という定義はあるとしても、悪意はあったのか、実は親愛の情をこめていたのか、受け手が敏感すぎたのか、など、様々に異なる背景や状況があるからです。
異なる背景における「暴言」
仮に背が極端に低くて悩んでいる少女がいたとします。彼女の恋人が、愛にみちた笑顔で、「可愛いおチビちゃん」と呼びかけた場合、逆にその少女は愛を感じ、コンプレックスさえ手放せることになるかもしれません。
またその少女が、アイドル志望だったとします。あるオーディションに参加したところ、審査員が皮肉たっぷりの冷たい笑顔で「可愛いおチビちゃん、どうぞこのままお帰りください」と言ったとします。これは、少女の心を傷つけ、かつ名誉棄損にさえあたりそうな暴言となります。
言葉の暴力性
結論としては、悪意や意図がなかったとしても、結果的にその言葉で人が傷ついた場合は「暴言」とされます。
逆に、受け手が笑い飛ばしたとしても、暴力的な言葉は「暴言」。基本的に、暴言の基準は、発し手と受け手の意図や感情によるのではなく、言葉そのものが持つ暴力性による、と言えそうです。
例え、背景が愛情だったとしても、「チビ」などのように、身体的な特徴についての発言、人種や出自などに触れての発言などは控えるべきでしょう。
「暴言」の類語と使い方
「暴言」の類語には、「失言」「放言」「罵倒」などがあります。共通する意味としては、非礼な言うべきではない発言、ですが、それぞれに異なるニュアンスがあります。
失言
「失言」とは、言うべきでない言葉を、図らずも口にしてしまうことです。自ら気づかないということからも、悪意はなく、かつ内容も攻撃性のないものが殆どです。
(C男)
環境問題担当の役人が、「夏はペットボトル飲料を山のように買い込む」と言ったんだぜ。
プラスチック対処が国際問題なのに、たいした失言だよね。
放言
「放言」とは、他者の心や状況への配慮なく、思ったままを無責任に口にすることです。「暴言」に比べて意図的な悪意はありませんが、「失言」と比べても他者への気遣いや思いやり、という態度はなく、結果的に他者を傷つける場合もあります。
(D子)
鈴木課長が、「うちの課には覇気が足りないな。業績アップしないのも、男が少ないからだよ」って言ったのよ。
実際は女性陣の売上のほうが大きいのに、あまりに無責任な放言だわ!
罵倒
「罵倒」(ばとう)とは、攻撃的な言葉で他者を激しくののしることです。「暴言」の対象は特定の他者のみならず、人以外の事象や状況も含まれますが、「罵倒」の対象は、特定の他者であることがほとんどです。悪意も強く、攻撃性の高い言葉です。
ただし、政治討論会や、悪しき権力への告発などの場面で、正義の罵倒とも言うべき発言が見られることもあります。
必ずしも、悪意による傷つけではなく、他者の非を激しく攻撃し、ののしる、という場合があることに留意しましょう。
(E男)
昨日の役員会議は、まるで戦場だったよ。
A社に吸収合併されるかどうかの瀬戸際だから、賛成派、反対派入り乱れての罵倒合戦で、会議の体をなさなかった。
役員がこんなありさまでは、合併やむなしと見たよ。