「悋気」の意味
「悋気(りんき)」とはやきもちを焼くことという意味です。恋人や配偶者など自分が愛している人が自分以外の人を好きになるのを不満に感じることです。
恋愛がらみに限っては、嫉妬と同じ意味です。しかし、「悋気」には羨んだりねたんだりするという意味はありません。あくまでも色恋沙汰でのみ使われます。
「悋気」は、現代ではあまり使われていない古風な言葉です。ことわざや四字熟語の他、落語や時代小説などで用いられます。
「悋気」の使い方
- デート中にほかの人ばかり見ている恋人に悋気する。
- どうやら後輩は浮気な彼女に悋気しているようだ。
- 悋気も恋の駆け引きみたいなもので、目くじら立てるほどのことでもないだろう。
「悋気」の付くことわざ
悋気は恋の命
「悋気は恋の命」とは焼きもちを焼くのは恋が続いている証拠で、焼きもちを焼かなくなったらもうその恋は終わっているという意味です。
焼きもちを焼くのは「なんで他の人を見るの?、私だけを見てよ」と他の誰でもない、自分を見てほしいという気持ちがあればこそです。
焼きもちを焼かないということは、もう相手がどこに行っても良いという無関心ともいえるわけです。となると、嫉妬しなくなった時というのは恋の命が尽きた時と言えますね。
悋気せぬ女ははずまぬ鞠
「悋気せぬ女ははずまぬ鞠(まり)」ということわざもあります。鞠は和風のボールのようなものです。バウンドさせて遊ぶ「まりつき」に使います。
弾まない鞠は遊んでいてもつまらないものです。嫉妬しない女性も同じく張り合いがない相手、という意味です。
悋気は女の七つ道具
「悋気は女の七つ道具」とは、嫉妬は恋愛において相手と駆け引きするための武器となりえるという意味です。嫉妬していることを上手に示せば、男性を操縦することもできるということです。
なお、七つ道具とは何事かをなすために必要な道具のこと。古くは武士が戦うための道具のことを呼びました。
武士にとっての七つ道具は、刀、太刀、弓、矢、兜、具足、母衣(ほろ)の七つです。恋する乙女にとっての残り六つが何であるかは、残念ながら語られていません。
法界悋気
「法界悋気(ほうかいりんき)」とは、自分には関係のない人たちの恋に嫉妬することです。交際しているわけでも結婚しているわけでもない第三者への嫉妬のことで、別名おか焼きとも言います。
例えば、自分が好きな芸能人の結婚が例として挙げられます。交際どころか、相手は自分のことを顔も名前も知らないことが多いでしょう。それにもかかわらず、「どうしてあの人と」と感じてしまう気持ちが「法界悋気」です。
「法界」は元々仏教用語で世界すべてのことでした。今では自分とは何の縁もない人という意味で使われています。
「悋気」の類義語
焼きもち
「焼きもち」は「悋気」と同じく嫉妬するという意味です。嫉妬することを「焼く」と言いますよね。これに言葉遊びで「もち」を添えたのがはじまりと言われています。
古くから親しまれていた言葉のようで、「焼きもち焼いても手を焼くな」や「焼きもちと欠き餅は焼く方が良い」などことわざにも見られます。
緑色の目をした怪物
「緑色の眼をした怪物」もまた嫉妬を表す言葉です。その出典は、シェイクスピアの代表作の一つ『オセロ』に登場するイアーゴのセリフ。オセロ将軍に対し、妻のデスデモーナが不倫しているのではないかとイアーゴが話すシーンで使われます。
イアーゴは嫉妬を人の心をもてあそぶ怪物にたとえ、嫉妬の苦しみにとらわれてはいけないと諭します。
嫉妬心が怪物とされるのは、キリスト教の七つの大罪に由来します。嫉妬はレヴィアタンという神が作った巨大な蛇のような怪物にたとえられ、寓意画でも、例えばイタリアの芸術家ジョットが作成した『美徳と悪徳』で嫉妬の象徴として蛇が描かれています。
緑色が嫉妬の象徴とされるのはギリシアの女流詩人サッフォーの詩に由来すると言われていますが、正確なことはわかっていません。
「悋気」と落語
「悋気」は落語でも取り上げられることの多いテーマです。題目だけ見ても『悋気の独楽(りんきのこま)』や『悋気の火の玉』などがあります。
落語から生まれた言葉に「悋気は女の慎むところ疝気(下腹部、泌尿器や生殖器など)は男の苦しむところ」というものもあります。
「悋気」は女性が慎んだ方が良いもの、「疝気(せんき)」は男性が病むことの多い場所という言葉遊びです。