「掬われる」とは?意味や使い方をご紹介

慣用句の「足をすくわれる」を漢字で書くと「足を掬われる」ですが、「足もとをすくわれる」という言葉もよく聞きますね。正しいのはどちらでしょうか?今回は「掬われる」の意味や、「足をすくう」と「足を引っ張る」の違いなどついてご紹介します。

目次

  1. 「掬われる」とは?
  2. 「掬」の漢字
  3. 慣用句「足を掬われる」

「掬われる」とは?

「掬われる」は、「すくわれる」と読みます。動詞の「掬う(すくう)」を受身のかたちにしたものです。「掬」は常用漢字ではなく、通常はひらがなで表記されることが多いため、目にすることはあまりないかもしれません。

「掬う」の意味と使い方

まずは「掬う」の意味を押さえておきましょう。「掬う」は「下から上へ動かす仕草」のことです。その仕草は次の三つに分けられますので、用例とともに見ていきましょう。

  1. 液状・粉状のものを、手や匙の中に入れて上げる(例:水をすくう)
  2. 液状・粉状のものの中から、目当てのものを外へ取り出す(例:金魚をすくう)
  3. さっと持ち上げる(例:足をすくう)

「湯船から湯をすくう」「汁物の具をすくう」などは日常的な動作ですね。これは、1や2に示したように、液体や粉の中からその一部を(あるいは中にある別のものを)取り出すことですから、漢字では「掬う」と書きます。

一方、相撲に「すくいなげ」という技があります。相手のまわしを掴まず、相手の脇に手を差し入れてさっと投げる技ですね。この場合は3の意味なので、漢字にすると「掬い投げ」となります。

「掬われる」という状態

「掬われる」は、動詞の「掬う」に、受身の助動詞「れる」が付いたものです。受身とは、ほかから動作を受けることを表わしています。自分から能動的にするわけではなく、誰かから「掬う」という行為をされる状態が「掬われる」なのです。

「掬」の漢字

「掬われる」で用いられている「掬」の漢字についても見てみましょう。この漢字の音読みは「キク」です。「掬する(きくする)」という動詞もあります。

「掬」の意味

「掬」は、両手をまるめて米粒をすくう動作を表わした文字でした。「掬する(きくする)」には、両手ですくい上げるという意味に加えて、「手にとってあじわう」「相手の事情を推しはかって理解する」という意味があります。

心情を推しはかる行為を「掬い上げる(すくいあげる)」と表わすこともありますが、相手への思いやりがそこはかとなく感じられる表現の一つです。

「掬」を使った二字熟語

  • 「一掬」…読み方は「いっきく」。ひとすくいまたはわずかな分量という意味です。
  • 「掬水」…読み方は「きくすい」。両手で水をすくうこと、またはすくった水を表わします。

慣用句「足を掬われる」

「足を掬われる(あしをすくわれる)」とは

「足を掬われる」は、「掬う」を使用した代表的な慣用句です。「足を掬う」の意味は、相手の意表を突き、失敗や敗北に導くことです。

つまり「足を掬われる」は、相手によって失敗や敗北に導かれてしまうことを指します。ちょっとしたすきを突かれ、ひどい目に遭ってしまうことです。想像すると、少しこわくなってしまうような言葉ですね。

「足を掬う」と「足を引っ張る」の違い

「足を掬う」の類似表現として、「足を引っ張る」があります。どちらも、人の成功や昇進を妨げる行為を表わします。このふたつの決定的な違いは、「意図的か、意図的ではないか」ということです。

「足を引っ張る」は、意図的に失敗させる場合だけでなく、意図せずにその結果になってしまった場合にも用いられます。ですから、懸命に頑張ったけれど、残念な結果に終わってしまったという時は「足を引っ張る」を使います。

逆に「足を掬う」は、意図的です邪魔をするという明確な意図を持って行う行為が「足を掬う」となります。これらを踏まえると、次のシチュエーションで使用可能な表現もご理解いただけるでしょう。
 

【ミスによる四死球で満塁のピンチに陥った】という場合
→「四死球がチームの足を引っ張ることになった」と言う。「足を掬う」は使用しない

【悪いウワサを流して同僚を陥れる】という場合
→「同僚の足を掬う」「同僚の足を引っ張る」のどちらも使用可能

「足を掬われる」or「足下を掬われる」

本来、正しいのは「足を掬う」「足を掬われる」ですでも、「足下(あしもと)を掬われる」という言い方を聞いたことはありませんか?後者を使っている、という方もいるかもしれませんね。

全国の16歳以上の男女を対象に、文化庁が毎年『国語に関する世論調査』を実施しています。平成28年度版の報告書の中に、慣用句の使い方についての調査結果がありました。

2000人ほどが回答したそのアンケートでは、「足下をすくわれる」を使う人は64.4%で、「足をすくわれる」を使う人は26.3%でした。「足下をすくわれる」が、「足をすくわれる」を圧倒的に上回っています。

言葉は時代とともに変化していきます。「足下をすくわれる」という表現の方が、市民権を得て、定着していることがうかがえる調査です。ただ、大多数の人が使っているとはいえ、正しい表現も覚えておきたいですね。


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