「涎垂」とは?
「涎垂」は「涎(よだれ)」と「垂(たれる)」の二字で構成されています。読み方、用法は次の二通り。それぞれについては、次の項から詳述します。
- 涎垂(えんすい):「涎垂する」のかたちで、動詞として使用
- 涎垂れ(よだれ):名詞として使用
「涎垂」の意味と使い方①涎垂(えんすい)する
「涎垂する」は、文字通り涎を垂らすことも意味しますが、この後ご紹介する「垂涎」と同様、何かを強く欲している様子の描写として使われます。
【使用例】
- 流れてくる蒲焼の匂いに、思わず涎垂した。
- 限定制作のフィギュアにマニアたちが涎垂した。
- 先日発表された最新作は、ファン涎垂の傑作だ。
「涎垂」の意味と使い方②涎垂れ(よだれ)
「涎垂」は読み方のとおり、よだれという意味です。「涎」の一文字で「よだれ」の意味も読みもありますので、一般的にはそちらの表記が使われますが、「涎」と同じように用いることができます。
【使用例】
- 赤ちゃんに涎垂れ掛け(よだれかけ)をかけてやる。
「垂涎」とは?
「垂涎」は「涎垂」と語順が逆になっていますが、「涎垂」と同様に、動詞的な用法と名詞としての用法があります。
- 垂涎(すいぜん・すいえん):「垂涎する」のかたちで、動詞として使用
- 垂涎(よだれ):名詞として使用
1の読みに関しては、「すいぜん」が本来の読み方ですが、慣用的に「すいえん」とも読まれています。
「垂涎」の意味と使い方①垂涎(すいぜん・すいえん)
「垂涎」も涎を垂らすことを指します。また、何かを見て涎を垂らしている様子から派生して、何かを強く欲している様子の喩えとしても使われる言葉です。
【使用例】
- メインディッシュが到着すると、その豪華さに一同は垂涎した。
- 彼のコレクションはコレクター仲間なら垂涎必至の名品ぞろいである。
また、「垂涎」という言葉は、「垂涎の的(すいぜんのまと)」という連語でもよく用いられます。これは皆の羨望の対象であるという意味です。
【使用例】
- 町人たちの垂涎の的であった舶来の陶器は、殿様に献上された。
垂涎(よだれ)
「垂涎」は「涎を垂らす」と訓じることができ、その場合は「垂涎する」と同じ意味になります。一方、「垂涎」は「垂れたよだれ」そのものを指すこともあります。
ただし、先にご説明したとおり、一般的に「よだれ」は「涎」と表記されるので、「垂涎」の表記はあまり用いられません。
【使用例】
- 赤ちゃんの口の周りの垂涎を拭ってやった。
「涎垂」と「垂涎」の違い
これまで見てきた限りでは、「涎垂」と「垂涎」には意味・用法に大きな差はありませんでした。両方とも文章語的な表現であるという、文体的な特徴も共通しています。
違いが出るのは、どちらが一般的に使われるかという点です。「垂涎」が圧倒的に多く使われ、「涎垂」は稀な使い方です。
漢語由来の言葉として考えると、目的語である「涎(よだれ)」が動詞「垂(たらす)」の後に置かれる「垂涎」の語順の方が自然ですから、「垂涎」が一般的に使われるのは妥当と言えましょう。
また、「垂涎の的」という連語が広く使われていることも「垂涎」を優勢にしています。「垂涎の的」で一つの表現として定着しているので、たとえ意味が同じでも「涎垂の的」と言うことはできませんので気を付けてください。