「狡猾」とは
「狡猾」の意味
「狡猾(こうかつ)」とは、「ずる賢いこと」や「ずる賢いさま」を表す名詞、形容動詞です。「狡猾さ(こうかつさ)」は、「狡猾」から派生した名詞。また、小説などでは「狡猾い」と書いて「ずるい」と読むこともあります。
「狡」という漢字
「狡」という漢字には、次のような意味があります。
- 狂う。乱れる。
- こすい。ずるい。わる賢い。ずる賢い。
- 素早い。すばしこい。はしっこい。身のこなしが柔らかい。
「狡」は音読みでは「コウ」、訓読みでは「くる(う)・こす(い)・ずる(い)・わるがしこ(い)」と読みます。
「猾」という漢字
「猾」という漢字には、次のような意味があります。
- ずるい。悪賢い。また、そのような者のこと。
- 乱す。乱れる。混乱させる。かき乱す。
音読みでは「カツ」、訓読みでは「みだ(す)・みだ(れる)・わるがしこ(い)」と読みますが、訓読みではほとんど用いられません。
「狡猾」の使い方
「狡猾」は主に、「狡猾な○○」「狡猾そうな○○」「狡猾である」のように用いられます。ずる賢いという意味なので基本的には褒め言葉には使いません。
【例】
- 彼はおとなしそうに見えて、実は狡猾な人物だ。
- 老人の狡猾な企みにしてやられた。
- 少年は帽子の下で狡猾そうな笑みを浮かべていた。
- 彼女がそんな狡猾だったなんてショックだよ。
「狡猾」の類語
「狡獪」
「狡獪(こうかい)」は、悪賢いことを指す言葉で、「狡猾」と同義です。しかし、「狡獪」は文学作品などでは用いられていますが、全体的には「狡猾」が使われることの方が多いようです。
「狡い」
「狡い(こすい)」には、利にさとくずるい、ケチであるという意味があり、「あいつほど狡い人間には会ったことがない」のように用いられます。
「狡辛い/狡っ辛い」
「狡辛い(こすからい)」あるいは「狡っ辛い(こすっからい)」とは、ずるく抜け目がない、悪賢い、ずるくてけちけちしていることを指す言葉で、「狡辛いことばかりしているといつか痛い目を見るよ」のように使われます。
「邪知/邪智」
「邪知/邪智(じゃち)」とは、悪知恵、奸智(悪賢い知恵)を指す言葉で、「あの邪知に長けた老女には誰も敵わない」のように用いられます。
「狡猾」を含む四字熟語
「狡猾奸佞」
「狡猾奸佞(こうかつかんねい)」とは、ずる賢く立ち回ることを指す言葉です。「奸佞(かんねい)」は、心が曲がっていて悪賢く、人にこびへつらうことやその様子を指しています。
「狡猾剽悍」
「狡猾剽悍(こうかつひょうかん)」は、賢く、その行動が素早く強引に行われることを表す言葉です。
「剽悍(ひょうかん)」は、すばやい上に荒々しく強いことやその様子を指しています。
「狡猾老獪」
「狡猾老獪(こうかつろうかい)」は、経験豊富で悪賢いことを意味する言葉です。「老獪(ろうかい)」には経験を積んで悪賢いという意味があります。
「怜悧狡猾」
「怜悧狡猾(れいりこうかつ)」は、悪賢いことを指している言葉です。「怜悧(れいり)」には、賢いこと、利口なことやその様子、あるいは利発という意味があります。
キツネは狡猾?〜キツネにまつわる英語表現〜
「狡猾」を表す英語表現はいくつかありますが、ここでは「ずる賢い人・狡猾な人」の代名詞ともなっている「fox(キツネ)」を使った慣用表現をご紹介します。
「fox」を使った慣用句
【sly as fox】
「とてもずる賢い・狡猾だ」という意味の慣用句で、"My sister is as sly as a fox."(妹は狡猾だ。)のように用いられます。
【Don’t let the fox guard the henhouse.】
直訳すると「キツネに鶏小屋の番を任せるな」。キツネのように狡猾で信用のおけない人には、大事な仕事を任せるなという慣用句で、日本の「猫に鰹節」に当たる言葉です。
【A fox is not caught twice in the same snare】
直訳すると「キツネが同じ罠に二度かかることはない」。キツネの賢さ、狡猾さに由来する、一度上手くいった方法が何度も通じるわけではないという諺です。
キツネは賢くて厄介な相手
古来、キツネは人間の近くに生息している動物で、鶏やウサギなど家畜の敵であり、毛皮を取るために狩る対象でもありました。
キツネはもともと頭のいい動物ですから、人間が相対する敵や獲物としては、非常に厄介な相手だったのでしょう。「してやられた。悔しい!」のような感情も手伝って、キツネ=狡猾というイメージになったのかもしれません。