「笑み」とは?
「笑み」は、「笑む」の連用形、およびそれが名詞化した言葉です。現象としては、口角があがり、たいていの場合は目元もゆるむ顔の表情を示します。
定義としては、大きく分けて三つあります。
- 声を出さず、にっこり笑うこと。微笑むこと。
- つぼみが花開くこと。熟した果実が割れること。
- 鐙(あぶみ)の鳩胸(はとむね)部分の左右のくぼみ。
「笑み」の種類と使い方
他の「笑い」との比較をしながら、「笑み」をもう少し深く掘り下げみましょう。
「笑み」と「笑い」の違い
「笑み」とその他の「笑い」との大きな異なりのひとつが、「声を出さない」という点です。
「あはは」「わはは」「キャッキャ」「うふふ」「えへへ」など、笑いの声をあらわす言葉はたくさんありますが、このような声が出るものは、単なる「笑い」です。
「笑み」は、声がないことから、それだけ小さな笑い、静かで穏やかな笑いであることが判ります。大笑い>笑い>笑みとイメージすればわかりやすいかもしれません。
「笑み」と「その他の声を出さない笑い」の違い
「笑み」の類語はあとの項目でご紹介しますが、そこに入らない他の「声を出さない」笑いを紹介しましょう。
「苦笑」「忍び笑い」です。「笑み」の一種ではありますが、特定の感情が含まれる笑みのため、別枠としました。
「苦笑」は、不快感などネガティブな感情をもちながら、あえて笑むこと。「忍び笑い」は、なんらかの理由により、まわりに笑いを気づかれないために、声をおさえて笑うことです。笑いを誘引する感情はなんであれ、特別な状況下の笑いです。
場面に応じた「笑み」
「笑み」であっても、嬉しく楽しい笑みであるか、哀しみがありながらの笑みか、あるいは対人上、業務上のつくった笑みであるか、それは本人以外にはわかりません。
「笑み」の下には、さまざまに複雑な心理が隠れている場合があります。下記に、場面に応じた使い方を挙げてみましょう。
【例文】
- ウサギの顔洗いのしぐさの愛らしさには、思わず笑みがこぼれたわ。
- 入園式の我が子の晴れ姿に、親たちはみな涙ぐみ笑みを浮かべていた。
- 『モナリザ』は名画だけど、あの笑みは、喜びなのか哀しみなのか、謎めいているよね。
- 別れた彼からもらった手紙の束を破り終え、A子はひとり静かに笑んでいた。
- Tスーパーのレジ係は、社員教育のルールにより、たえず笑みを浮かべている。
- 決戦を前に、彼は不敵な笑みを浮かべていた。
- 真っ暗な部屋でナイフを握りしめながら、男は不気味に笑んでいた。
「笑み」の類語
- 微笑み・微笑(びしょう)…声を出さずにっこり笑うこと
- 破顔・破顔一笑(はがんいっしょう)…思わず顔をほころばせる笑み
- 喜色満面(きしょくまんめん)…喜びが顔に満ち溢れる笑み
- 含み笑い…(声を出さない笑み)
- スマイル…smile:「笑み」に対応する英語。カタカナ語として定着
「笑み」をめぐる日本の文化
日本人は、世界の人々からは、あまり感情をあらわにしない国民とみられています。東日本大震災で、津波や原発事故が続くなか、哀しみをこらえ笑みさえ浮かべる被災者の姿が世界で報道されました。
苦しみに耐える日本人として、大きな感動と称賛を呼んだことは記憶に新しいのではないでしょうか。
日本人の笑顔の真意
新渡戸稲造が書いた『武士道』では、日本人の悲しい時の笑みを、外国人が不可解に思う例をあげながら、その種の笑みを解説しています。
すなわち、それは相手に気遣いさせず、心配させないための配慮だというのです。また、儒教的な名残もあり、喜怒哀楽を抑える気風が残っているのかもしれません。
日本人は笑顔が苦手?
反面、日本人は、見知らぬ人に笑顔を向けるのが苦手な国民でもあります。アメリカなどに行き、すれ違いざま目があった他人からにっこり微笑まれて、うろたえた経験はないでしょうか?
自身の人間関係内、あるいは仕事上においては、気遣いの笑みの文化が育まれている日本人ですが、他者と自然に笑顔をかわす文化とは少々遠いようです。
「笑み」まとめ
嬉しい笑い、忍ぶ笑い、愛想笑い。笑みにもさまざまな感情があります。
心理学などの実験で、心からの喜びによる笑いは、目元がゆるみ、作り笑いの場合は口角だけが上がる、という傾向の結果が出たそうです。ピエロの目が悲しそう、あの人の笑いは目が笑っていない、などという言葉にも頷けますね。
そうであっても、笑いの表情をするだけでも、表情筋の動きで脳から分泌されるホルモンにより免疫力が上がる、という実験結果もあります。笑いが幸せの種であることは、確かであるかもしれません。