「パラノイア」とは?
パラノイアは、強い妄想を症状とする精神病です。抱く妄想の特性によって、数種の型が分類されています。
日本語では妄想症(かつては、偏執病)と称されますが、妄想性パーソナリティー障害、妄想性障害、妄想型統合失調症という診断名がつく場合もあります。
強い妄想は、統合失調症の症状と重なりますが、この病気とは異なる部分を多く持ちます。統合失調症の妄想が支離滅裂で現実性を持ちがたいのに比べ、パラノイアの妄想は、対象人物や出来事に強い認知のゆがみを投影させた妄想です。従ってストーリーにある種の一貫性を持ちます。
「パラノイア」の主症状
「パラノイア」のおもな症状を、下記に挙げてみます。
- 【被害妄想タイプ】他者から悪意をもたれたり、攻撃されるという妄想。財産や地位を奪われると怯え、反撃に転じることもある。
- 【誇大妄想タイプ】自分は特別な存在で、絶対的な力の保有者であるという妄想
- 【被愛妄想タイプ】異性から強く愛されているという妄想
- 【嫉妬妄想タイプ】恋人や伴侶に不貞があると確信する妄想
- 【心気妄想タイプ】健常であるにも関わらず、病気を確信する妄想(心気妄想タイプ)
一般的なパラノイア
妄想以外では、思考、全般的な行動に異常は見られず、人格的な破綻や荒廃もほぼありません。そのため、普通に生活を送り、社会で働いている場合がほとんどです。
とはいえ、大方の妄想が対人関係を含んでいるため、その点での問題や困難がつねに起こりがちです。被害妄想の場合は相手に敵意を抱きますし、誇大妄想も、他者に支配的目線となりがちです。嫉妬や被愛の妄想も、トラブルの種となります。
リーダーとしてのパラノイア
非常に能力がすぐれ、指導的な立場となっている人がパラノイアである場合、政治的には独裁者、社会的にはワンマン社長、などと称されるリーダーになりがちです。
自己の絶対性を疑わず、同時に周囲への猜疑心が異常に強いパラノイアが最高権力を握った場合、暴走してゆくケースが多いのです。ヒットラーやスターリンはパラノイアであったと推測されています。
「パラノイア」の使い方
- うちの会社の役員会議は名ばかりだ。社長は自分の方針を述べるばかりで、役員陣の言葉は全くの無視。ちょっとでも進言しようものなら、すぐ降格だ。社長はパラノイアだよ。
- A子のヘアスタイルを褒めたら、それ以来「私に嫉妬している、私の彼を狙っている」とずっと非難されているの。怖いけど、パラノイアという病気らしいわ。
- おふくろは、症状なんてないのに、自分が白血病だと言い張るんだ。しかたなく検査を受けさせたら、そのあと精神科にまわされて、パラノイアだと診断されたよ。
ゲームの「パラノイア」
「パラノイア」というタイトルのロールプレイングゲームが、人気を博しています。実は、ゲームに登場するパラノイアは人間ではなく、「パラノイア的なコンピューター」です。ストーリーを要約して紹介しましょう。
以降、コンピューターは、共産主義者の攻撃から市民を守るという妄想のもと、市民(ゲームのプレイヤー)を「アルファ・コンプレックス」に隔離し、独裁的支配を続けている。
プレイヤーは、都市の支配者であるコンピューターから、共産主義者の流入、あるいは、市民のなかの反逆者を制圧するための様々なミッションを受けて戦い続ける。
支配者であるこのコンピューターは、自身が「常に正しい指導者」であり、「市民のなかに反逆者がいる」と思い込んでいます。その妄想ゆえに、疑問を呈する市民は、すべて反逆者とされてしまいます。
市民同士も疑心暗鬼となり、互いを反逆者として警戒する不毛な戦いが続きます。このゲームのタイトル「パラノイア」は、狂ったコンピューターの妄想が妄想をよぶ社会そのものを指しています。現代社会が陥りかねないパラノイア的思考の風刺ともなるゲームだと言えましょう。