「イモ」とは?
「イモ」とは、植物の地下部(地下茎や根)の一部分が養分を蓄え肥大化したものの総称です。養分は主にデンプンなどの炭水化物で、そこから発芽する次世代の生育の元になります。栽培の場合は、その元イモを「種イモ」と称します。
そのように、地下のイモ部分から芽吹く植物ですが、花も咲き、種子もつけます。品種改良には種子を用いる場合も多いとのことです。
ジャガイモの花などは、白、薄紫、ピンクなど様々な色があり、意外にも清楚で可憐な美しさです。マリー・アントワネットが好んで髪に飾ったというエピソードは、有名です。
「イモ」の特性
「イモ」の特性の筆頭にあげられるのは、なんといっても栽培が容易であることです。ジャガイモやサツマイモなどは、土地が痩せていても栽培が可能なため、世界のさまざまな国の歴史において、飢饉を救ってきました。
日本でも、戦中・戦後の食糧難に際し、サツマイモがさかんに栽培されました。その時代の人々が当時の食糧事情を語る時、「弁当のふたを開けると、ほとんどがサツマイモだった」「サツマイモは一生分食べた」など、同じような回顧談が多く聞かれます。
穀物と並んで、主食とされることもあるイモですが、含有水分が多いため、穀物と比べれば保存期間が短くなります。また、ジャガイモは緑色に変色した皮や発芽部分に毒性があるため、注意が必要です。
日本で食される「イモ」の種類
イモは、大きく分けると7種あるとされています。ジャガイモ、サツマイモ、サトイモ、ヤマイモの4種はポピュラーですね。ちょっと変わった残りの3種を紹介しましょう。
【コンニャクイモ】
名のとおり蒟蒻の素材となるが、生の状態では毒物を含むので、あく抜きをしなければ食せない。
【キクイモ】
デンプンもほとんど含まない、一風変わったイモ。天然のインシュリンと呼ばれるイヌリンという成分を含み、かつ、イモでありながら低カロリーであることから、近年脚光をあび始めた。糖尿病患者には、希望の食物と言える。
【アピオス】
別名アメリカホドイモ。北米で、インディアンのスタミナ源と称された。栄養価の高さから、「畑のウナギ」という異名もある。ミネラルバランスもよく、高血圧、アトピー、アレルギー、糖尿病など、さまざまな病気に効能があるとされる。
蔑称としての「イモ」とその使い方
畑から掘り出されて土にまみれている、あるいは、どんな地でも育つ、などのイメージから、「イモ」は蔑称としても用いられます。
接頭語的に名詞の前に「イモ」をつけて、あかぬけない、どんくさい、ださい、などの嘲りを示します。
【例】
- 芋侍:田舎出、あるいは貧乏だったり能力のない侍を侮辱した言葉
- 芋ねえちゃん:垢ぬけない若い女性への蔑称
派生した「イモ」の意味
昨今では、オンラインゲームにおいて、プレーヤーが同じ場所に潜んで動かないことを土に埋まる芋になぞらえ、あるいは、ほふく前進の動きを芋虫になぞらえて、「芋る」と蔑む若者言葉が生まれました。
また、襲撃が怖くて身動きできない状態も「芋る」と揶揄されます。今では、ゲーム以外の場面でも、動きが鈍かったり、ビクビクと怖気づく人に対して使われることが増えているようです。
【例文】
- ここで戦わないでどうするんだよ、芋ってる場合じゃないよ!
- 芋るプレーヤーが増えると、テンションさがるよね。
- 面接試験は、度胸だよ。芋ってたら勝ち抜けるわけないじゃん。
「イモ」まとめ
あか抜けない代名詞のように使われてきた「イモ」。しかし近年は、抜群のおいしさで、高価ながらも人気を集める品種が増えています。
スイーツにひっぱりだこのサツマイモ「安納芋」や、栗のような色と甘さを誇るジャガイモ「インカのめざめ」、機能性食品に近い扱いの「アピオス」などには、もはや泥臭いイメージはなく、健康志向の洒落た食材、というイメージさえもたれています。やがては、蔑称も消えてゆくかもしれませんね。