「元鞘」とは?
「元鞘(もとさや)」は、「元の鞘に収まる(もとのさやにおさまる)」ということわざを略した言葉で、「もとさや」、「元サヤ」などと表わされることもあります。また、「収まる」は、「納まる」と書かれることもあります。
一度、別れてしまった夫婦や恋人、仲たがいをして縁が切れてしまった人たちが、元のように仲の良い関係に戻ることを表しています。男女の関係について使われることが多い言葉です。
「鞘」とは?
「元鞘」という言葉で使われる「鞘(さや)」は、刀の刃の部分を保護するため、刃を収めておく筒状の覆いのことです。大切な刃を守り、切れ味を保つためだけでなく、刀を持ち歩いたり保管したりするときに、けがをしないように安全に保つ役割もあります。
日本刀の鞘をはじめ、その他にも槍やなぎなた、ナイフや脇差など、広く刃物の刃を収めるものが「鞘」と呼ばれます。
また、「鞘」には、次のような意味もあります。
- 鉛筆や、筆の先にかぶせて保護するためのキャップ。
- 相場の値段の差や、売値と買値との値段の差。利鞘(りざや)。マージン。
「元の鞘に納まる」とは?
「元の鞘に収まる」ということわざは、鞘から抜かれた刀が、もう一度、元の鞘の中に収まるようすから来ています。
刀には、それぞれの形に合わせた鞘が作られて使われることが多く、違う刀の鞘にはじょうずに収まりません。このように、刀が本来の鞘に収まるようすから、人間関係のたとえに使われるようになったようです。
「元鞘」例文
「元鞘」は、元鞘に収まる(納まる)の他に、元鞘に戻る、元鞘になるのように使われます。
- 婚活をしていたら、別れたカレよりいい人がいないのに気がついて、なんとか連絡を取って「元鞘」に収まることができた。
- あの二人は、ケンカ別れしてずいぶんたったと思っていたけれど、LINE(ライン)がきっかけで「元鞘」に戻ったそうだよ。
- あの芸人さん、離婚してから10年もたって、元妻と「元鞘」になったらしいよ。
「元鞘」類語
焼けぼっくいに火が付く
「ぼっくい」は漢字で書くと棒杭・木杭で「ぼうくい・ぼうぐい」とも読みます。一度、火が付いて燃えたことがある棒杭、つまり「焼けぼっくい」は、まだ焼けたことのない棒杭よりも火が付きやすいものです。
このことから、「焼けぼっくいに火が付く」は、過去に関係があったけれど、いったん縁が切れてしまった人たちが、また元の関係に戻ることをいいます。おもに、男女の関係に使われることが多い言葉です。
「焼けぼっくりに火が付く」と書かれやすいのですが、この表現は間違いです。松ぼっくりとは関係ありません。
その他の類語
その他に「元鞘」を言い換える表現には、次のような言葉が挙げられます。
- よりを戻す
- 復縁する
- 仲直りする
「元鞘」英語での表現
「元鞘」は復縁すると言い換えられますから、「元鞘」を英語で表現するときは「get back together」を使います。
【例文】
Mari and Takuya got back together again.
マリとタクヤは、また元鞘に収まった。
I wanna get back together with him.
彼と元鞘に戻りたい。
I got back together with my ex.
私は、元カノ(元カレ)とよりを戻した(元鞘に収まった)。[※ex=俗語で元カノ・元カレ・前妻・前夫]
刀の鞘が由来の言葉
反りが合わない(そりがあわない)
刀の湾曲の度合い(反り)と、鞘の湾曲の度合いが合わないと、刀がうまく鞘に収まりません。このことから、「反りが合わない」とは、性格などが合わず、人間関係がしっくりいかないようすを表しており、「新しい上司とは反りが合わない」のように用いられます。逆に、気があって関係がうまくいく場合は「反りが合う」といいます。
鞘当て(さやあて)
「鞘当て」とは、武士が道ですれ違うときに、お互いに刀の鞘が触れたことからケンカになってしまうことです。また、このことから転じて、ささいなことがきっかけになって起きてしまう争いごとのことも意味します。
一人の女性を巡って、恋敵である二人の男性が争うことも「鞘当て」といい、「恋の鞘当て」のように使われます。