「虚無」とは?意味や使い方をご紹介

虚無。耳馴染みのある言葉です。日々の暮しのなかで虚無感を覚えることは誰しもあると思います。が、具体的に「虚無」とはどのような状態を指す言葉なのでしょう? ここでは歴史も振り返りつつ「虚無」の概念についてご紹介します。

目次

  1. 虚無とは?
  2. 虚無~何も無く、虚しい
  3. 虚無~人生に意味はない?
  4. 「虚無」の境地を超えて
  5. 「虚無」のまとめ

虚無とは?

「虚無」という語にはいくつかの意味があります。以下に順を追って、それぞれの意味合いと成り立ちをご紹介していきます。

虚無~何も無く、虚しい

現代日本のありさまを評した「飽食の時代」なる言葉が世に広まったのはいつごろのことだったでしょう。戦後、急成長を遂げた社会のなかで、多くの人々が衣食に不自由のない生活を送れるようになりましたが、反面、暮らしは豊かになったけれど、どこか気持ちは満たされない。ふとした拍子に心に吹くすきま風を感じる。

考え方次第で長くもあり短くもあるのが人生。どんなにポジティブな人でも、「生きるって虚しいなあ」と感じたことは一度ならずあるのではないでしょうか。ぼんやりと掴みどころのない表現になりますが、こうした「何も無く」「虚しい」状態が「虚無」という言葉の第一の意味です。


生きることに虚しさを感じる理由は、人間関係や経済事情をはじめとする卑俗的な出来事から、哲学的・観念的なところまでさまざまでしょう。これらは誰の身にもかかわることです。必要な「何か」が無いから満たされない。生きづらい。虚しい。「虚無」は普遍的な概念であり、事実、はるか古来より人は「虚無」を意識しながら営みを続けてきました。

虚無~人生に意味はない?

旧約聖書中の書『コヘレトの言葉』において、古代イスラエルの王ソロモンは、「空(くう)の空(くう)」という境地に至ったと記されています。「空の空」は「虚無の虚無」とも訳され、まさしく今回のテーマ「虚無」に言及した言葉です。

「なんという虚しさ。なんという虚しさ。何もかも虚しい」……絶対的な神の定めのもとに在るこの世界では、富も名誉も善行も悪行もあまりに相対的であり本質的な価値はなく、真の幸福にはつながらないというのです。ゆえにソロモン王は語ります。ただ「神を畏れ、その戒めを守るべし」と。

17世紀、オランダ絵画の黄金時代には、「ヴァニタス」と称される寓意画が流行し、一大ジャンルを形成しました。「ヴァニタス」はラテン語で「虚無」。頭蓋骨や、朽ちてゆく花や果物、立ち消えた蝋燭、弦の切れた楽器などを題材に、現世の富も名誉もしょせん虚栄であり、命は必ず尽きる。人生とは儚いものであることを表したのが、美術における「ヴァニタス」です。

また、18世紀から19世紀にかけては、ニヒリズム(虚無主義)と呼ばれる思想が台頭してきます。「ニヒル」はラテン語の「無」です。概念としては先に紹介した「空の空」や「ヴァニタス」と同様です。善悪の基準、道徳観、何が正しく何が間違っているかの価値も、時代とともに変化する虚しいもの。すべてはかりそめであり、ゆえに生きることは虚しい。

これら、世の中のあらゆる事物について、その価値や意義を認めないという態度が「虚無」という語の示す二番目の意味です。ご覧いただいたとおり、多分に厭世的でネガティブな思考といってよいでしょう。人生は無価値・無意味だと思いながら生きるのはけっして楽しいことではありませんし、時として自暴自棄な生き方につながらないとも限りません。

「虚無」の境地を超えて

では、そんな「虚無」と、私たちはどのように向き合えばよいのでしょう? 辞書で「虚無」という語を引くと、前述の意味合いのほかに「虚心であること」という意味も載っています。「虚心」とは謙虚で素直な心、態度のことです。

古代ギリシャの哲学者ソクラテスは、「無知の知」という概念を提示しました。ここでいう「無知」とは神と比較しての表現です。神の絶対性の前では、われわれの知性など無に等しいけれど、みずからが無知であることを「虚心」に認めるところから、真の知性への扉が開かれると、思想家であるソクラテスは主張したのです。

古代中国の思想家である老子もまた、宇宙の根源は無であり、人為の及ばぬものだから、気負わず無為自然を重んじることが最良の生き方であると説きました。これが「虚無の学」です。虚無には「何もない空間・無限の宇宙」の意味もあります。

「虚無」はたしかにマイナスのイメージを伴う言葉です。しかし、ソロモン王の「神を畏れ、その戒めを守るべし」もしかり、古来、人々は、「虚無」に絶望するのではなく、人生の「虚無」を認めたうえで、いかによく生きるかを考えようとしてきた。「虚無」の一語からは、そんな前向きな姿勢も感じ取れるとはいえないでしょうか。

「虚無」のまとめ

まとめると、「虚無」という単語は次のような意味を持つ言葉ということになります。

 

  • 何も無く、虚しいこといこと
  • 世の中のあらゆる事物について価値や意義を認めないこと
  • 虚心であること
  • 老子の虚無の学の基盤
  • 何もない空間・無限の宇宙

それぞれについてご理解の一助となれば幸いです。


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