「回文」の意味
「回文」(かいぶん)には、以下の二つの意味があります。
- 回覧用の文書。回状。回章。まわしぶみ。
- 和歌・連歌・俳諧などで、上から読んでも下から読んでも同音のもの。回文歌、回文連歌、回文俳諧などの呼び方がある。
ここでは、2の意味についてまとめていきます。
辞書的な意味としては、上記のように俳諧など一定の形式が決まったものについて言いますが、一般的には「前から読んでも後ろから読んでも読みが同じで、かつ、言語として意味が通る文字列」のことを回文と言います。
「廻文」とも書き、「かいもん」と読む場合もあります。
「回文」の使い方
- 何か面白い回文を知りませんか?
- この音楽の歌詞、実は回文になってるって知ってた?
「回文」のルール
回文の基本的なルールは、すでに述べた通り「前から読んでも後ろから読んでも、読みが同じであること」「言語として、意味が通ずること」の2点です。
ただし例外として、「ば」「ぱ」など濁音・半濁音、「っ」など促音、「ゃ」「ゅ」など拗音については清音(もともとのかなの音)と同一視され、区別されない場合がほとんどです。
また、助詞の「は」「へ」「を」を、助詞ではない「わ」「え」「お」として読むなど、音が合致していればかな遣いの違いを同一視することも慣例的に認められる場合が多いようです。
「回文」の例
回文の例をいくつかご紹介します。特に断りがないものは、作者・出典が不詳であるものです。
単語の回文
- 【2文字】ママ、パパ、みみ(耳) など多数
- 【3文字】トマト、りんり(倫理)、いえい(遺影) など多数
- 【4文字】キツツキ など
- 【5文字】しんぶんし(新聞紙) など
俳句・短歌の回文
- 草の名は 知らず珍し 花の咲く
- 叢草(むらくさ)に 瘡(くさ)の名はもし 備はらば なぞしも花の 咲くに咲さくらむ(『奥義抄』より)
文章の回文
- 私、負けましたわ。
- 世の中ね、顔かお金かなのよ。
- 住まいは田舎がいい、森と陽だまりでひと寝入り、飛ぶ鳥、稲と日照り、まだ独りもいいが、家内はいます。(小説家・森博嗣)
ローマ字の回文
- AKASAKA…地名「赤坂」がブランド化したもの
- NISHIOISHIN…小説家「西尾維新」
「回文」にまつわる文化
回文にまつわる文化をいくつかご紹介します。
回文の日
「回文の日」は、回文俳句を手掛ける宮崎二健氏により12月21日と制定されています。前から読んでも後ろから読んでも1221となることにちなんでいます。
1月21日、5月15日、11月11日なども回文の条件を満たしていますが、もっとも長く(桁数が多く)、もっとも多くの文字が使われていることが制定の理由ではないかと思われます。
宝船
「宝船」(たからぶね)は、日本伝統の縁起物、およびそれを用いた風習です。米俵や財宝を積んだ帆船の絵に七福神を描き、さらに下記の回文歌を書き添えた紙を正月に枕の下に敷いて寝ることで、縁起のよい初夢を見ることができるとされています。
この風習の起源は不明ですが、七福神や財宝を載せた船と同列に扱われている回文は、とても縁起のよいものと考えられていることがわかります。
英語における「回文」
日本語以外にも回文の言葉遊びは存在し、英語においては「palindrome」(パリンドローム)といいます。ルールは日本語とまったく同じです。
英語の場合、同音であるだけでなく同文となることがほとんです。その理由は、日本語のかなと違ってアルファべットは音節が文字単位ではないため、音のみを合致させる回文作成の制限が日本語よりもはるかに厳しいためです。
英語における回文の例
- Was it a car or a cat I saw?
- Dog as a devil deified, lived as a god.
「回文」まとめ
最古の回文は西暦79年に滅びた古代ローマの遺跡で発見されており、とても古くからさまざまな言語で言葉遊びや文字遊びの一環として散見されてきました。
作成可能な回文のパターンは理論上無限であり、文字数の上限も存在しないと考えられています。ただし、長くなればなるほど、意味ある文章としての体裁を維持することが困難となります。
日本語の回文で長いものは1000文字以上に達している作品もありますが、数文字であれば作成の難易度はさほど高くありません。興味をもたれた方は、日々の息抜きに少し頭を働かせてみてはいかがでしょうか。