「他人の振り見て我が振り直せ」とは?
「他人の振り見て我が振り直せ」という言葉ですが、実はこれは間違った言葉になります。本来は「人の振り見て我が振り直せ」というのが正しい使い方です。
「ひとのふりみてわがふりなおせ」という読み方は同じですが、「ひと」の漢字は「他人」ではなく「人」であるのが正しいです。
「ひと」には「人」と書く場合と、「他人」と書く場合があるために誤って広がった言葉であると考えられています。同じような誤用に「人の不利見て我が不利直せ」といった言葉があります。
「人の振り見て我が振り直せ」の意味
「人の振り見て我が振り直せ」とは「他人の行いの善し悪しを見て自分の行いを反省し、欠点を改めよ」という意味を持つことわざです。
人の行動を見てあざ笑ったり批判したりするのではなく、自分の行動を反省しようという教えの言葉です。自分のことよりも他人のこと、特に他人の欠点についてはよく目につくことから来ています。
「ふり(振り)」というのは「振る舞い(ふるまい)」という言葉から来ています。「振る舞い」は鳥が羽を振って空を自由に舞うようすに由来しており、元々は「振い舞う(ふるいまう)」という言葉でした。「動作や行為」といった意味を持ちます。
「人の振り見て我が振り直せ」の使い方
「人の振り見て我が振り直せ」は他人に対して「他人の失敗から学びなさい」という注意の言葉として使ったり、「自分も同じようなものなので気をつけよう」という自分に対する自戒の言葉としても使うことができます。
【例文】
- 彼の失敗を笑ってはいられない。人の振り見て我が振り直せというように自分も同じ失敗をしないように気をつけなければならない。
- 人の振り見て我が振り直せという言葉のように、ポイ捨てなどしないようにしましょう。
- あの有名な俳優が株で大損をし借金をしてしまったようだ。人の振り見て我が振り直せというように、自分は借金などしないようお金の使い方についてしっかりと考えていきたい。
「人の振り見て我が振り直せ」の類語
「他山の石」
「他山の石」とは「どんなに劣った人の言行でも、つまらない出来事でも、それを参考にしてよく用いれば自分の修養の助けになるということ。」という意味のことわざです。たとえ誤ったり、つまらない言動であってもすべてが自分の戒めになるということを表しています。
「他山の石」の由来は中国最古の詩集である「詩経・小雅・鶴鳴(かくめい)」にある「他山の石、以て玉を攻むべし」という「よその山から出た粗悪な石でも、それを砥石に使えば自分の玉を磨くのに役立つ」という意味の言葉にあります。
「殷鑑遠からず」
「殷鑑遠からず」は「いんかんとおからず」と読み、「戒めとなる前例は手近にある。すぐ目前の他社の失敗を見て、自分の戒めにせよ」という意味のことわざです。
失敗の前例についていう言葉なので、成功した例について使うのは誤りです。「殷」とは中国古代の王朝の名前、「艦」とは鏡のことで手本を意味しています。
「殷鑑遠からず」の由来は「詩経・大雅」の「殷鑑遠からず夏后の世に在り」という詩句にあります。この詩句は「殷の紂王(ちゅうおう)が滅びたのは、前代の夏の悪政を戒めとしなかったため」ということを意味しています。
「前者の覆るは後車の戒め」
「前車の覆るは後車の戒め」とは「前任の失敗は後人の教訓になる」ということを表すことわざです。前を行く車がひっくり返るのを見たら、後から続く車は同じわだちを通らないようにせよという戒めから来ています。
「前車の覆轍(ふくてつ)」、「前覆(ぜんぷく)後戒(こうかい)」、「覆車(ふくしゃ)の戒め」とも言います。