「嘘から出た実」の意味
「嘘から出た実」とは、嘘で言ったこと、冗談で言ったことが、結果として偶然にも本当のことになってしまうことを言います。
たとえそれが嘘でも、何かを言い続けていると言った本人もそれを聞いた人たちも、本当にそうかもしれない、という気になってしまいがちです。
また、冗談でさらりと言ったつもりのことが、実は本人も自覚することなく心の中で思っていたことだった、ということだってあります。そうした結果として「嘘」が「実=真実」になるということもある、ということです。
「嘘から出た実」の例文/用例と使い方
それでは、「嘘から出た実」の例文と用例から使い方を見てみましょう。
「嘘から出た実」の例文
- 愛ちゃん、元カレにしつこく復縁を迫られて、あきらめさせるために田中君に新しい彼のふりをしてもらったらしいんだけど、嘘から出た実で、結局田中君と付き合うことになったんだって。
- 両親に「料理人の修行のため」と偽って世界一周旅行に出たのだが、世界各国で美味しいものに出合い本当に料理の道に進むことを決めた。嘘から出た実とはこのことだ。
これらの例文のように、「嘘から出た実」は、最初は嘘や冗談だったことが、最終的に思いがけない結果になった場合に使われています。
「嘘から出た実」の用例
菊池寛『真珠婦人』
「まこと」というのは、嘘偽りのない本当のこと、真実、という意味です。漢字表記としては「実」だけでなく、用例のように「真」や「誠」も使うことができます。
「嘘から出た実」に似た形の表現
「嘘から出た実」に似た形の表現として「身から出た錆」があります。「身から出た錆」は、自分自身がやらかした行いが原因で災難に遭い苦しむことを言います。
「離婚届をつきつけられたのも身から出た錆だね。あんなに浮気を繰り返してたんだから」といった使い方をします。
「嘘から出た実」と「身から出た錆」は、形は似ていますが意味は全く違いますので、間違いのないように気をつけて使いましょう。
「嘘から出た実」といろはかるた
「嘘から出た実」は、江戸系いろはかるたで定番だったことわざです。その絵柄は当初は同じものが踏襲されていたと言います。それは遊女の絵札です。
遊女が小指を切り落とした絵柄や、指を切り落とそうとしてやかんを振り上げている絵柄が多く採用されていました。しかし、遊女が指を詰める絵柄が、どうして「嘘から出た実」と結びつくのでしょうか。
絵柄の解釈
その絵柄の解釈にはいくつかの説があるようです。一つ目は、遊女が商売のために客に愛想を振りまいていたら、相手が本気になってしまい、結局客に対して誠意を見せるために指を詰める羽目になった、という解釈です。
また二つ目は、最初は冗談半分だった遊女と客との関係が、次第に深みにはまっていき、最後には真実の恋が実ることになった、という解釈です。
いずれにしても「指を詰める」というのは穏やかではなく、子どもに見せたい絵柄ではありません。そこで戦後になると、子どもへの教育的配慮からか遊女の絵柄は見られなくなりました。そしてその代わりに、イソップ寓話をもとにした狼少年の絵柄が採用されるようになりました。
「嘘から出た実」の類語
- 瓢箪から駒が出る
- 冗談から駒が出る
- 冗談から本実(ほんま)
- おどけがほんとになる
「嘘から出た実」の英語表現
- Many a true word is spoken in jest.(冗談の中で真実の言葉が多く語られる)
- There's many a true word said in jest.(=上の文の別形)
「嘘」が含まれる表現
「嘘から出た実」の他にも「嘘」が含まれる表現はたくさんあります。そのうちいくつかをご紹介します。
【嘘つきは泥棒の始まり】
嘘を平気でつくようになると、盗みも平気でするようになるということ。
【嘘は後から剥げる】
嘘をついても、いつかは必ずばれるものだということ。
【嘘八百】
すべて嘘ばかりであること。
【嘘も方便】
時と場合によっては、目的を遂げるために嘘をつくことも必要であるということ。