「身から出た錆」の意味
「身から出た錆(みからでたさび)」とは、自分の犯した悪行の結果として自分自身が苦しんだり災いを受けたりすることを意味することわざです。
「身から出た錆」の「身」とは、人の体のことではなく刀の刀身のことを指しています。通常、刀は鞘に納めておくものですが、鞘に納めっぱなしで手入れを怠ると、刀そのものから錆が生まれてしまいます。よって、元々は刀身自身から生じた錆が刀を駄目にしてしまうという意味で使われていました。
実際に刀が錆びてしまうと、いざ使おうと思った時に鞘から抜けなくなってしまったり、刀自身が腐って使い物にならなくなってしまいます。最悪の場合命を落としてしまうことになりかねません。刀を錆びさせるということは、武士にとって命とりの所業だったのです。
現代ではそこから転じて、自分の悪行が原因で自分自身の首をしめることを「身から出た錆び」と、例えるようになりました。
「身から出た錆」の出典
「身から出た錆」は、『江戸いろはかるた』の「み」のことわざです。いろはかるたで有名なものは、『江戸いろはかるた』以外に『京都いろはかるた』と『大阪(尾張)いろはかるた』があり、それぞれの「み」のことわざは以下になります。
身は身で通る裸ん坊
意味:からだ一つあれば生きていけるということ。
蓑売りの古蓑
意味:他人のために働くばかりで、自分のことに手が回らないこと。
「身から出た錆」の使い方
「身から出た錆」は、自分の悪行や失敗が原因で結果として不利益を被ることを表現する場合に使います。悪い結果を表す言葉なので、良い結果の場合には使うことはできません。ご注意ください。
「身から出た錆」の例文
- 遊んでばかりで貯金を全くしていなかったから、病気になった時に生活に困る羽目になってしまった。「身から出た錆」とはいえ、ほとほと困り果ててしまった。
- 結婚するまで家事一切を母親に頼り切っていたので、あまりの料理の下手さ加減に姑に嫌みを言われてしまった。これから先も、「身から出た錆」だと諦めて聞き続けないといけないのかと思うとうんざりだ。
- 酒癖が悪いから飲みたくないと言っておいたのに、無礼講だからと酒を飲まされ、結果的に上司に暴言を吐いて左遷されてしまった。これも「身から出た錆」なのだろうか?
- 夜遊びが止められなくて離婚されたんだから、そんなものは可哀そうでも何でもなくて、ただの「身から出た錆」だ。
「身から出た錆」の引用
『浪』石川三四郎
『其中日記』種田山頭火
身から出たさびとはいひながら、仲々、つらいことですね。”
『お猫さん』村山籌子
※青空文庫出典
「身から出た錆」の類義語
「身から出た錆」と似た意味の言葉をご紹介します。
- 自業自得(じごうじとく)
意味:自分の行いの結果を自分が受けること。 - 自縄自縛(じじょうじばく)
意味:自分の言動・信条のために自由に動くことができずに苦しむこと。 - 悪因悪果(あくいんあっか)
意味:悪い行いには、必ず悪い報いが訪れるということ。 - 悪事身に返る(あくじみにかえる)
意味:自分で犯した悪事は、巡り巡って最終的には自分に帰ってきて自分を苦しめるということ。 - 仇も情けも我が身より出る(あだもなさけもわがみよりでる)
意味:他人から受ける酷い仕打ちも思いやりも、日頃の自分の態度の結果であるということ。 - 因果応報(いんがおうほう)
意味:善い行いをすれば良い報いがあり、悪い行いをすれば悪い報いがあるということ。
「身から出た錆」のまとめ
運動不足で体が思うように動かせない状態を「身体がさび付く」と表現することがあります。この運動不足で生じる「さび」も、ある意味「身から出た錆」なのですが、「身から出た錆」の「錆」とは違う「さび」になります。どちらにしても、自分自身から「錆」がでないように心がけたいですね。