「嘘も方便」とは
「嘘も方便」とは、「嘘をつくのは良くないが、物事を円満にまとめるためには、嘘をつかなくてはならない時もある」という意味のことわざです。
「嘘」には「事実でないこと」「人をあざむくために言う、事実に反したこと」という意味があります。また、「正しくないこと」「不適当なこと」という意味もあります。
そして、「方便」とは「目的を果たすための一時的な手段」という意味を表します。もともとは仏教語で、衆生(しゅじょう:全ての生き物。特に人間を指す)を導くのに用いる、便宜的な方法のことをいいます。
また、このことをわざを英語で表すと、「The end justifies the means(目的は手段を正当化する)」という文章になります。
「嘘も方便」の由来
「嘘も方便」という言葉は、「法華七喩(ほっけしちゆ)」という仏教の教えが由来です。「法華七喩」には七つのたとえ話があり、その中の一つ、「三車火宅(さんしゃかたく)」という話がもとになっています。
「車がある」というのは嘘だったのですが、嘘をついたおかげで子どもは助かったのです。
「嘘も方便」の使い方
正しい使い方
- 上司が野球についての知識を自慢気に話し、「君はこんなこと知らないだろう」と言った。しかし、僕は実は大の野球ファンなので、その話は知っていた。嘘も方便で「勉強になります」と言ったが、仕方ないことだろう。
- 誕生日に、友人から紅茶茶碗をもらったが、実は同じものをすでに持っていた。しかし友人の気持ちが嬉しかったので、嘘も方便で「ありがとう、これ欲しかったんだ」と笑顔で受け取った。
例文では、相手を思いやり、傷つけたくないという理由で、あえて嘘をついていることがわかります。嘘はつきたくはないけれど、正直に言うと相手が嫌な気持ちになるので、仕方のない手段だったのかもしれません。
誤った使い方
- 今日は仕事に行きたくないので、元気だったが「風邪を引いたので休みます」と連絡をした。休むために、嘘も方便だ。
- 嘘も方便というし、友達が困っていると偽って彼女にお金を借りた。
このような「嘘も方便」の使い方はしません。これでは単なる「嘘」になります。相手を思ってというより、自分に都合のいいことしか考えていないからです。
「嘘」を使ったことわざ
「嘘」にまつわる言葉は数多く存在します。その中から、皆さんもよく耳にするようなものをご紹介します。
- 嘘つきは泥棒の始まり
- 嘘から出た実(まこと)
- 嘘八百
「嘘も方便」のまとめ
皆さんも仕事や学校などで多くの人と関わる場合は、「お世辞」や「社交辞令」を言うこともあるのではないでしょうか。そう考えると、「嘘も方便」な場面は多々あるのかもしれませんね。
「嘘」ばかりついていると周囲からの信用をなくしてしまうかもしれませんが、常に「正直」でいるのも難しいものです。上手にバランスを取りながら、優しさのある嘘をつけるようになれたら良いのではないでしょうか。