「機を見るに敏」の意味
「機を見るに敏(きをみるにびん)」とは、「チャンスをすばやくつかんで、的確に行動する様子」を指す言葉です。優秀な人物や称賛すべき行いなどを褒めるときに使われる、ポジティブな意味を持つ表現です。
「機を見るに敏」の使い方
「機を見るに敏」を使う場面
「機を見るに敏」は日常会話やビジネスシーンなど、幅広い場面で使うことのできる言葉です。ただし、少々お堅いイメージのある表現ですので、雑談などのフランクなやり取りには向かないかもしれません。
一方で、改まった場での会話や文章などでは、その堅さが逆に知的で賢明な印象を与えることもあります。ケースによって使い分けると良いでしょう。
「機を見るに敏」の例文
- 状況を即座に把握し、的確な指示を部下に出す。「機を見るに敏」とは、まさに彼のことを言うのだろう。
- 彼女は機を見るに敏なところがあり、投資案件の話を聞くとすぐに全財産のほとんどをつぎ込んで、結果的に巨万の富を得ることに成功した。
- 相手チームの的確な判断は、まさに「機を見るに敏」としか言いようがない。
「機」と「敏」それぞれの意味
「機を見るに敏」の「機」には「物事の大事なところ」や「物事が起こるきっかけ・きざし」などの意味があります。わかりやすく言うと「ちょうど良い状況やタイミング」といったところでしょうか。
また「敏」には、動作や頭の働きが「素早い」という意味があります。こちらは「俊敏(しゅんびん)」や「敏捷(びんしょう)」などの熟語でもおなじみですね。
「機を見るに敏」は、これら2つの語が組み合わさることで「物事の大事なところやタイミング」を見て「素早く動く」という意味を成しているわけです。
「機を見るに敏」の語源
「機を見るに敏」の直接の語源はわかっていませんが、中国の思想家である孔子の教えをまとめた書物『論語』に、「機を見るに敏」と似た記述が存在します。
「子曰 君子欲訥於言 而敏於行」
「子曰、君子欲訥於言、而敏於行」という一文は、「子曰く(しいわく)、君子は言にとつにして、行いに敏ならんことを欲す」と読みます。「徳のある人は、多くのことを話すよりも、素早く行動する人でありたいと願っている」という意味です。
この論語の一文は学校の漢文教材やテストで使われたり、ビジネス書に引用されたりするなど、日本においては比較的有名な論語のフレーズとして存在感を放っています。
この一節が「機を見るに敏」という慣用表現を生んだかは不明であるにせよ、2500年前の人の言葉が現代でも私達の行動指針となっている点は驚くべきことではないでしょうか。
「機を見るに敏」の類語
機に乗じる
「機に乗じる」とは、物事の推移を見極めて、都合のいい状況や時期のときにうまく行動することを言います。「機に乗じて攻め込む」などのように使うのが一般的です。
【使用例】
- 需要増大の機に乗じて事業を拡張し、現在ではシェアの8割を占めるまでになった。
当意即妙
「当意即妙(とういそくみょう)」とは、その場に適した機転を利かせることや、気が利く様子のことを指す言葉です。
「当意」とは「その場にふさわしい対応や工夫」を表す言葉で、「即妙」とは「即座に機転が利くこと」を意味しています。いずれも仏教に由来している言葉です。
【使用例】
- 数多くのトラブルに見舞われたが、その度に彼は当意即妙に対応した。
臨機応変
「臨機応変(りんきおうへん)」とは、「その場の変化に応じて、適切な手段や行動をとること」を指します。「臨機」とは「物事や事態に向かいあう」ことを表しており、「応変」とは「変化に応じる」ことを意味しています。
【使用例】
- 今後さまざまな困難が君たちを襲うだろうが、臨機応変に対応してぜひ乗り越えてほしい。