「遡及」とは?意味や使い方をご紹介

「遡及」は、日常会話ではあまり使われない言葉ですが、ニュース報道や法律文書の中で見聞きした方もあるでしょう。「遡る」という漢字を見れば、「遡及」のおよその意味は、お察しのことと思われますが、今回は意味と使い方を詳しくご紹介します。

目次

  1. 遡及の意味
  2. 法律用語の「遡及」の意味
  3. 刑罰不遡及の原則
  4. 遡及の同音異義語
  5. 遡及まとめ

遡及の意味

「遡及」は「そきゅう」と読みますが、慣用的に「さっきゅう」と読まれる場合もあります。

「遡及」の「遡」は、水流にさかのぼってのぼる、過去にさかのぼる、「及」は、およぶ、追いつく、とどく、という意味をもちますので、「遡及」は過去のある時点までさかのぼる、という意味になります。

給料明細で「遡及差額」という項目を見たことがありませんか?これは過去のある時点までさかのぼり、不足分または超過分があったので精算したうえで差額を支払います、ということです。

遡及の使い方

例文

  • 過去の競技に遡及して、公式記録として残す。
  • 勲章を先の大戦にまで遡及して授与することに決める。
  • 1000年の過去の時代に遡及する超大作が上映される。

法律用語の「遡及」の意味

法律用語として、遡及効、不遡及などという場合の「遡及」は、法律を、その施行以前になされた行為や生じた事実にさかのぼって適用することです。言い換えれば、法律要件の効力を、その成立以前にさかのぼらせることです。

刑罰不遡及の原則

「刑罰不遡及の原則」は「罪刑法定主義(法律なければ罪なし)により、事件の後になって有罪とする法律を制定し過去にさかのぼって処罰することを禁止しています。ただし、民事法規では扱いが異なります。

遡及処罰の禁止

遡及処罰の禁止は憲法で明記されており、さらに刑法では事件後に刑罰が軽くなる、または逆に重くなるなどの変更があった場合について規定があります。以下はその参考条文です。

【憲法第31条】

何人も、法律の定める手続によらなければ、その生命若しくは自由を奪はれ、又はその他の刑罰を科せられない。

【憲法第39条】
何人も、実行の時に適法であつた行為又は既に無罪とされた行為については、刑事上の責任を問はれない。又、同一の犯罪について、重ねて刑事上の責任を問はれない。

【刑法第6条】
犯罪後の法律によって刑の変更があったときは、その軽いものによる。

遡及効

「遡及効」とは、法律の効力がその施行前にさかのぼって生じることです。言い換えれば、法律要件の効力が、その成立以前にさかのぼって生じることです。

遡及処罰禁止の例外 - 公訴時効

少し込み入った話になりますが、かつては殺人罪の公訴時効は最高15年でした。15年間、犯人が逃げ切れば処罰されなかったのです。それが、2004年に25年に延長され、2010年にはついに廃止に至りました。

この結果、2010年の改正法の施行時に公訴時効が完成していない事件の場合、事件当時にさかのぼって時効廃止の規定が適用されることとなりました。

では2010年の改正法の施行時に、すでに公訴時効が完成している場合はどうでしょうか。この場合は結局、犯人の「逃げ得」になります。しかし、世間でよく言われるように無罪になるのではなく、免訴判決が出されます。

先述の通り、法律が変わったあとに、さかのぼって罪を問うことは禁じられていますが、公訴時効に関してはこの限りではないというわけです。

遡及の同音異義語

「遡及」と紛らわしいのが、さかのぼって追及するという意味の「遡求」です。手形・小切手の所持人が振出人・裏書人に償還請求をすることです。

ほかにも、「訴求」という言葉もあります。これは、宣伝・広告などによって消費者の要求に働きかけることです。「訴求効果」は消費者の購買意欲を呼び起こす効果です。

遡及まとめ

自分が現在行っている適法な行為が、将来、処罰する法律ができて急に逮捕される事態になったらたまりませんね。そのために遡及処罰の禁止の原則があります。

ただし、グレーゾーンの行為については要注意です。刑事裁判にならなくても民事上の損害賠償の問題が起こることもあります。

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