虎子とは
虎子の意味
虎子には二つの読み方があります。一つ目は「とらのこ」、もう一つが「こじ」です。まれに「こし」と読むこともありますが、意味は「こじ」の時と変わりません。
- 「とらのこ」…とても大事にしているもの
- 「こじ」…手に入れにくいもの
「とらのこ」の意味
虎子にはとても大事にしているもの、秘蔵の品という意味があります。古い表現ですが、虎の子の財布なんて言い方もあります。
これは、虎の子供が大切に育てられていることに由来します。虎は自分の子供を決して手放さない、非常にかわいがるという習性があります。他のネコ科の動物はおおむね半年ほどで親離れしますが、虎はその4倍から5倍の2年程度は親元にいるといわれています。
今では、お金や資産などの経済的価値のあるものの他、簡単には人に見せない秘蔵の品や弟子のことも「とらのこ」と呼びます。
「こじ」の意味
「こじ」と読む場合には虎子は手に入れるのが難しいもののたとえとして使われています。なぜ虎の子供が手に入れにくいもの代表になったのでしょうか?
その理由は虎が猛獣だからです。今でこそ動物園で飼育されていたり、お金持ちの家でペットとして飼われていたりしていますが、虎は人を襲うこともあります。ましてや可愛がって育てられている虎の子供を捕まえるのは、並みの苦労でできることではないでしょう。
中島敦の『山月記』でも人食い虎が出る道は危険だといわれていましたね。このたとえはことわざ「虎穴に入らずんばすなわち虎子を得ず」でよく知られています。
虎子の使い方
「とらのこ」の使い方
- 大事にしていたとらのこの財布を失くした時、祖父はとても焦っていた。
- 「先生、今日はとらのこの新弟子をご紹介してくださるそうですね?」
- さすがにとらのこである貯金には手を付けられないよ。
一つ目の文は大事なものという意味ですね。二つ目ではむしろ隠してきた秘蔵の弟子という意味合いが強くなります。最後の文ではへそくりのお金を指しています。
「こじ」の使い方
- 虎穴に入らずんばすなわち虎子を得ず。(危険を冒さなければ大きな成功は得られない。)
- 虎子地に落ちて牛を食らうの気あり。(虎の子供は生まれてすぐにでも牛を食べるほどの激しい気性を持っている。)
「こじ」は「とらのこ」と違いそのままでは文章中に登場しません。上記のようにことわざや、その脚色として使われます。
虎と豹
虎の子渡し
虎子には虎の子渡しという故事があります。虎から生まれた子供は三匹いたら、一匹は他の子供を食べてしまう豹であるというのです。
もし川を渡るとなったら考えて一匹ずつ運ぶ必要があるでしょう。そのようにあれこれ考えて生活をやりくりすることを虎の子渡しといいます。
この故事では豹は虎から生まれると考えられているようですが、もちろん、そんなことはありません。虎と豹は別の生き物です。日本には虎はいなかったから、違いがわからなかったのだろうといわれています。その違いを見てみましょう。
模様
虎の毛皮は縦横の縞模様。一方豹は点々がいくつもある斑点模様です。藪や林で暮らす虎には縞々の方がカモフラージュになるといわれています。一方、豹は木の上や幹に上って擬態するので、斑点の方が良いようです。
生息場所
虎は藪や林、湿原などに暮らしています。あまり木には登らず、茂みや岩陰に隠れます。豹は木に登ることも得意で木の上で獲物を狙うこともあります。