「社畜」って?
近年、SNSなどでよく見かける「社畜」という言葉、みなさんはご存知ですか? この「社畜」という言葉は現代が抱える社会問題と密接に関連した言葉です。
この「社畜」という言葉を見ていくことによって現代がどんな社会なのかということが理解できるかもしれません。「社畜」の由来・意味や使用法を見ていくと同時に、なぜ「社畜」という言葉が使われるようになったのかということも合わせて考えてみましょう。
「社畜」の由来
もともと「社畜」という言葉は存在しませんでした。つい最近につくられた造語です。では「社畜」にはどのような由来があるのでしょうか。
「社畜」という言葉にはモデルとなっている言葉が存在します。「畜」の字から連想できるかもしれませんが、「家畜」という言葉です。家畜は「人間が飼育をして、人間のために利用される獣のこと」を指します。たとえば牧場で育てられた牛などが当てはまります。牧場の牛は人間の手で育てられ、育った結果、食肉として出荷されたり、メスの牛であれば搾乳され、その乳は牛乳として出荷されます。
家畜は人間が生計をたてるために育てられる動物であり、人間が生きていくために利用される動物を指します。この「家畜」という言葉の「家」が「社」に入れ替わってできたのが「社畜」という言葉です。
「社畜」の意味
では「社畜」という言葉はどのような意味を持っているのでしょう。
「社畜」の「社」は「会社」の略語です。このことからもわかる通り、「会社のために飼いならされ、利用される人間」というニュアンスを含み、あまりの激務のために人権が尊重されずに、生活の大部分を犠牲にしながら会社によって働かされる人間を指す言葉です。
そもそも「畜」という字は「畜生」のことであり「人に養われて生きている動物」を指しています。「人間性」が認められていないほどに働かされている、つまり「奴隷」のように働かされている状態のことをまるで動物のようだ、という比喩で表現しているのです。
使い方としては「彼は会社で宿泊してまで働いている。まるで社畜だよ」、「家に帰ってもすぐに寝ちゃって、起きたら会社にいく。社畜みたいな生活だよ」というように、自己や他者の異常な働き方を「社畜」という言葉で表現します。
「企業戦士」という言葉との違い
しかし、なぜ近年になって急に「社畜」という言葉が使われるようになったのでしょうか。
第二次世界大戦が終わったのち、1960年代後半から日本はいわゆる「高度経済成長期」という時代に入りました。日本の経済が急激に上向きになり、国全体が豊かになり始めた時代です。その時代の中では「私生活を犠牲にしても、会社のために一生懸命働く人」のことを「企業戦士」という言葉で表現していました。
「戦士」という言葉は戦争の影響を受けているということもわかりますが、この言葉には「社会のために必死に働く」という肯定的なニュアンスが含まれています。昭和の当時は必死に働く人は賞賛されていたようです。
「社畜」の誕生
しかし、時代は平成に変わり、人々の働き方も変わりました。「ワーク・ライフ・バランス」、つまり仕事と私生活のバランスが重んじられる時代になりました。その中で「私生活」があまりにも尊重されずに「仕事」だけしている、しかも自分の意志とは反するぐらい働かされてしまうことは否定的なニュアンスが含まれるようになりました。
そんな時代の中で「会社のために必死に働く人」は「会社に奴隷のように働かされる人」という姿に変わり、それと同時に「企業戦士」という言葉が消えてその代わりに「社畜」という言葉が誕生したのかもしれません。
やはり、時代の変化とともに言葉もその姿を変えていくのですね。