前門の虎とは?
読み方
「前門の虎」は実は略語で、「前門の虎、後門の狼」が正しい形です。「前門の虎、後門の狼」は「ぜんもんのとら、こうもんのおおかみ」と読みます。
意味
「前門の虎」は一つの災いやトラブルに対処し終えても、また次のトラブルに巻き込まれてしまうことのたとえです。虎と狼は肉食獣なのでトラブルや災いのたとえです。
一般的には挟み撃ちにあって身動き取れないとか逃げ場のない袋の鼠といった意味で使われますが、誤用であるという意見もあります。
前門の虎の由来
「前門の虎」は中国の『趙弼(ちょうひつ)』に由来する言葉です。前門で虎と遭遇し、なんとか防いだ後に今度は後門に狼が現れてこちらもどうにかしなければならないという意味で登場します。
元々は不幸やトラブルが続くことのたとえだったのですが、いつしか字義通りの挟み撃ちという面が強調されて今のような使われ方がされています。
前門の虎の使い方・例文
使い方
正式な形の「前門の虎、後門の狼」の形でもよく見られますが、省略形の「前門の虎」でも使われます。本来の不幸が重なるという意味よりも挟み撃ちという意味での使用の方が近年は多く見られます。
例文
- 期末テストが終わったと思ったら夏休みは補習と講習か。やれやれ、前門の虎だ。
- 会社では部長、家では鬼嫁。前門の虎、後門の狼とはまさにこのことだ。
- ふたまたがばれてしまって、二人から三白眼で睨まれている。前門の虎で逃げ場がない。
前門の虎の類義語
虎穴を逃れて竜穴に入る
「虎口を逃れて竜穴に入る」は「ここうをのがれてりゅうけつにはいる」と読みます。
「虎口」は「虎穴に入らずんばすなわち虎児を得ず」にでてくる「虎穴」と同じく虎が住んでいるような危険な場所という意味です。「竜穴」も竜が住むような場所で危険の代名詞です。
虎のすみかを逃れたら今度は竜のすみかに入り込んでしまった。つまり、トラブルから逃れてもまたトラブルに巻き込まれるという意味です。
一難去ってまた一難
「一難去ってまた一難」は「いちなんさってまたいちなん」と読みます。一つ災難が過ぎたと思ったら、そのそばからまた次の災難がやってくるという意味です。
泣きっ面に蜂
「泣きっ面に蜂」とは、「なきっつらにはち」と読みます。トラブルがあって泣いているところにさらに蜂が飛んできて刺されてしまう様子から、不幸な事態が重なることや悪いことが立て続けに起きるという意味で使われます。
弱り目に祟り目
「弱り目に祟り目」の読み方は「よわりめにたたりめ」です。「弱り目」は弱っている、困っている状況を表します。そして祟り目は神や仏からの祟りや罰です。困っているところにさらに追い打ちをかけるように祟りがやってくる様子を表します。ここから、災いや災難が続くことを表します。
前門の虎の英語表現
A precipice in front, a wolf behind.
「A precipice in front, a wolf behind.」は直訳すると「前に絶壁、後ろに狼」となります。絶壁と狼に挟まれて身動きできないという意味です。
Between scylla and Charybdis.
「Between scylla and Charybdis.」とは、板挟みになって適切な行動を取るのが困難な様子を表します。
「scylla」とはイタリア本土とシチリア島の間にある危険な岩礁地帯です。ギリシア神話ではここに怪物が住んでいたとされ、その怪物のことを指すこともあります。頭が6つ、足が12足あるとされ、船を襲って船員を食べていたとも言われています。
「carybdis」は同じくイタリアのシチリア近海にある大渦巻のことです。ギリシア神話では海神ポセイドンと大地ガイアの子で大渦巻の神を指します。
どちらも船乗りにとっては危険で、かじ取りが難しいたとえとして使われます。