「サビ残」とは
「サビ残」とは、サービス残業が略された言葉です。時間外手当の発生しない残業、不払い残業を意味します。
サービス残業を強要することは違法です。ブラック企業などが社会問題になるにつれ「サビ残」も問題となっています。
ちなみに、日本では「サービス」というと無料・無償のイメージが強くあります。しかし本来、英語の「Service」は「無料・無償」というよりは「労務」「取り扱い」「商売」といった意味が主です。「奉仕」という意味もありますが、奉仕が必ずしも無料・無償とは限りません。
そもそも「残業」とは
残業は、被雇用者が所定労働時間を超えて働く場合に発生します。被雇用者とは会社員やパート・アルバイトなどです。
一方、個人事業主や会社の役員は、被雇用者ではなく法律上も労働者ではないため残業という概念はありません。
また「何が残業・休日出勤か」は就業規則によります。労働法では「36(サブロク)協定」「変形時間労働制」「裁量労働制」など多様な勤務形態が認められています。
以下では分かりやすい例として、所定労働時間が9:00~17:00(休憩1時間)の勤務の場合として記述します。
「所定労働時間」と「法定労働時間」
所定就業時間は就業規則で定められた時間、法定労働時間は法律で定められた時間です。法定労働時間は1日8時間となっています。これは休憩時間を含めない時間です。
本来の終業時刻17:00でなく18:00まで勤務した場合は、所定労働時間を超えた1時間の残業をしたことになり、その分の残業代が発生します。ただし、この場合は9:00~18:00の9時間が拘束時間ですが、うち休憩時間を1時間とっていますので労働時間は8時間です。よって法定労働時間は超えていません。通常の給与の1時間分を追加で支払えば済みます。
一方、19:00まで勤務した場合は労働時間は9時間となり、所定労働時間を2時間超え、うち1時間は法定労働時間を超えています。この「法定労働時間を超えた1時間」については、雇用者は被雇用者に対し、割増賃金として×1.25(+25%)の賃金を支払う義務があります。また休日出勤についても同様に割増賃金を支払う義務があります。
「サビ残」が発生する要因
「サビ残」をなくし、残業代を正しく支払う(支払ってもらう)ためには、そもそも「残業をした」という客観的事実を残す必要があります。タイムカードなど客観的に就労時間を記録するものがなければ、残業を証明することは難しくなります。ただし個人で記述したメモなどでも法的に有効な場合があります。
タイムカードなどがある場合、出勤時と退勤時に正しく記録していれば客観的に残業時間がわかります。しかしタイムカードを打刻した後に残業をすると把握が難しく、「サビ残」の温床となります。
「ノー残業デー」の闇
企業などによっては、残業をしない「ノー残業デー」が設定されるケースがあります。場合によっては、ある時刻になると会社の蛍光灯を一斉に消して仕事ができないようにする、といった方法をとっていることもあります。
しかし実態として、「ノー残業デー」で職場で仕事ができないために仕事を持ちかえって自宅やカフェで働く形での「サビ残」もあります。以下の記事に詳しく書かれています。
「持ち帰り残業」については「サビ残」以外の問題も発生します。パソコンなどの紛失・盗難などにより企業情報が外部に漏れたり、パソコン損壊などにより必要なデータが消失するリスクが高まるからです。
また、職場外のカフェなどでパソコンで仕事をすると、誰でも画面をのぞき見できるため、やはり情報漏洩リスクがあります。
早朝「サビ残」
終業時刻以降の残業を減らす方法として思いつくのが、早く出勤することです。しかし出勤時刻より早く勤務した場合も残業にあたります。例えば以下のような記事があります。
「サビ残」まとめ
「サビ残」は残業代が支払われないという問題にとどまらず、労働時間の実態把握を困難にし、長時間労働や過労死などにもつながります。「サビ残」をさせることは違法ですから、職場に問題があり交渉の余地がなければ、労基署や、職場外の労働組合に相談する方法などもあります。