「痛ネイル」とは
「痛ネイル」は「痛いネイル」の略語で、漫画やアニメ、ゲームに関するネイルアートデザインを意味します。俗に言うオタクの女性を中心に、漫画やアニメ、ゲームの熱烈なファンによって愛好されています。
「痛い」とは
「痛ネイル」における「痛い」は、肉体的な苦痛の意味ではなく、「あいつ痛いよな」というように「見るに堪えない。酷く場違いだったり、年齢にふさわしくない言動をする様子」の意味で使われています。
ですから「痛ネイル」は、直訳すると「見るに堪えない爪」なのですが、ネイルアートに限らず漫画やアニメなどのデザインを施した「痛+名詞」と呼ばれるものは、必ずしも否定的な意味で「痛い」が使われていません。
その証拠に、通常「痛い」はある人物への印象として使われる言葉ですが、「痛+名詞」に限っては使用者自らが堂々と使用することも少なくないのです。「痛+名詞」には、「オタクであることをはばからず楽しむさま」「オタク趣味をひけらかすさま」といったニュアンスが含まれると考えてよいでしょう。
「痛ネイル」の歴史
「痛ネイル」は、初めはオタクの間で密かに楽しまれていましたが、タレントの中川翔子や歌手の宇多田ヒカルなどがブログやメディアで紹介したことから、一般にも広がりました。
2012年には秋葉原に痛ネイル専門店「痛color’s Yellow」が開店し、その後も各地のネイルアート店で「痛ネイル」の需要が増えているようです。
Geeky or girly? Hand-painted EVA nails! オタクっぽいのかガーリーなのかよう分からん、エヴァネイルアートじゃ! http://t.co/nKJd9LBc
— 宇多田ヒカル (@utadahikaru) October 14, 2012
「痛ネイル」以外の「痛◯◯」
「痛ネイル」だけではなく、漫画やアニメ、ゲームの熱烈なファンによって生み出された「痛」はほかにもあります。下に代表的な物をご紹介します。
痛車
漫画やアニメ、ゲームのキャラクターやロゴ、モチーフを車体に塗装したり、ステッカーを貼ったりして装飾した車のことを「痛車」といいます。車に描かれているので、当然一見しただけで持ち主がオタクであることがわかります。
「痛車」という呼称は、イタリア製の車「イタ車」にかけているとも言われています。日本では痛車のイベントが開かれているほど愛好家が多く、欧州にもファンが増えてきています。
痛バ
「痛バ」の「バ」はバッグの略です。漫画やアニメ、ゲームのキャラクターやロゴ、モチーフの缶バッジやキーホルダー、ぬいぐるみなどを付けて装飾しているバッグのことをいいます。
「痛バ」を持っていれば、イベント会場で周りの参加者に自分の好きなアニメやキャラクターを知らせることができ、グッズ交換や情報のやり取りに活用できます。
「痛バ」用に、透明のポケットが付いたバッグやリュックも販売されています。好きなグッズを外から見えるようにしてポケットに入れて持ち歩くことができ、「痛バ」愛好家に人気です。
痛印
好きな漫画やアニメ、ゲームのキャラクターやロゴ、モチーフを掘った印鑑のことを「痛印」といいます。自分の好みにオーダーメイドして彫ってもらうこともできます。
お遊びの印鑑に見えますが、「痛印」はちゃんと銀行印に使えます。通帳に好きなキャラクターが押されているなんて、ファンにとっては嬉しいですね。
ただし銀行印として使えるのは、朱肉をつけて押すタイプの「痛印」だけです。また自治体の規定によっては実印登録できない場合も多いので注意が必要です。
痛板
スキーやスノーボードの板にオタクデザインを施したものを「痛板」といいます。こちらもずいぶんと人気が高く、痛板乗りたちによるGJ(ゲレンデジャック)と呼ばれる痛板イベントも盛況のようです。
自分にあった「痛ネイル」を楽しむ
ネイルアートには様々な技術があり、工夫を凝らした「痛ネイル」が作られています。キャラクターの顔を立体的に盛ったり、5枚の爪を使いシリーズにしたりもできます。自分のアイデアで素敵な「痛ネイル」ができあがるのです。
キャラクターの顔など、見るからにオタクを感じさせる「痛ネイル」に抵抗があるなら、キャラクターの顔は描かず、キャラクターを感じさせる彩や柄を使い、ファンにだけ分かる「痛ネイル」を施すこともできますね。
また最近ではオタク的モチーフに限らず、寿司や歌舞伎、ハローウィンなどの行事をモチーフにした「痛ネイル」もあり、外国人にもファンが広がってきています。
「痛ネイル」まとめ
「痛ネイル」は今や多くの女性から支持されているネイルアートです。オタクが始めた「痛」とつくものは、徐々に広まり良さを知られ、オタクでない人にも使いやすく改良されることで市民権を得ているようです。
オタク文化は、日本の新しい文化を生み出しているとも言えますね。