「アンソロジー」とは?
「アンソロジー」(英語:anthology)とは、複数の作家による作品を集めてひとつにしたもの、あるいは同一作者の複数の作品をひとつにまとめたもののことです。
和訳では「選集」や「歌集」などとされますが、格調高い文学作品から、個人レベルの漫画・アニメ原作の同人誌まで規模・ジャンルを問わず、発表形態も様々であるため、「作品集」と訳すのが適切かもしれません。
基本的には「アンソロジー」と言えば「書物」のイメージであり(映画作品など、書物以外を指す場合もないわけではありませんが)、紙媒体や、紙媒体を元にしたコンテンツを指すことが大半と捉えてよいでしょう。
基本的に何らかの「テーマ」(主題)がある
「アンソロジー」は、一般的には、あるひとつのテーマ(例えば「花について」など)が設定され、そのテーマに従って複数の作家がそれぞれ作品を寄せる、というかたちで企画・編纂(へんさん)されます。
一作家の作品をまとめる際も同様で、いくつかの作品の中から、あるひとつのテーマに絞って作品を抜き出してまとめたものを「アンソロジー」と呼びます。
例えば、漫画家:手塚治虫はとても多くの作品を残していますが、その中から「猫」を中心に扱った作品のみを抜き出し、一冊の本としてまとめたアンソロジーコミックが存在します。
「アンソロジー」の使い方
上で述べた通り、「アンソロジー」には基本的には何らかのテーマがあるため、「〇〇(テーマ名あるいは作品名)コミックアンソロジー」や「愛のアンソロジー名詩集」など、テーマを伴った題名で発表されることが大多数です。
もし「アンソロジー」と題になくても、複数の作家がそれぞれテーマに沿った短編作を提供しているようなひとつの媒体は、関係者や読者により慣例的に「アンソロジー」と呼ばれることがあります。
「作品集」「傑作選」「~コレクション」といった呼び方をされることもあります。
例文
- 詩に興味があるのだが、好みの詩人がまだいないので、まずは「日本の名詩集100選」と銘打たれたアンソロジーを手に取ってみる。
- 私は〇〇(作品名)の大ファンだ。そのファン向け作品として「〇〇アンソロジーコミック」が発売されたので、ぜひ買わないと。
- 「未来」をテーマにしたSFアンソロジー小説を買った。11人の作家が短編を寄せており、それぞれ独創性のあるアイディアが楽しめた。
- 迷ったらいつもアンソロジー形式の漫画を買ってしまう。一人くらいは好みの絵柄の人がいるし、好みの物語も見つかるから。
「アンソロジー」のメリット・デメリット
メリット
- 「アンソロジー」の収録作品は基本的に短編であるため、発表側が作りやすく、受け手側も触りやすい。
- 作家というよりも、ジャンルやテーマを優先して作品に触れたい受け手にとって触りやすい。
- 複数の作品が収録されているので、これといって気になるタイトルがない時に「とりあえず買ってみる」選択肢に挙がる。
デメリット
- 新人など、実力が不安定な作家が参加していることがあり、全体のクオリティが安定しないことがある。
- 基本的に短編であるため、長編や連載作のような、凝った物語を楽しむのは不向き。
「アンソロジー」に似た言葉
オムニバス
「オムニバス」(英:omunibus)とは、元はラテン語で「万人向け」の意であり、ひとつひとつの独立した作品を集め、ひとつの作品としたものを指します。
「アンソロジー」と似ていますが、「オムニバス」には「既に発表済みの作品をまとめる(テーマに応じて新作を書くわけではない)」点と、基本的には「ひとりの作り手の作品をまとめたものを」を指す点に特徴があり、少し使い方が異なります。
ただ、実際には「アンソロジー」と「オムニバス」は同義語的に用いられることも多く、少々ややこしいかもしれません。
コンピレーション
「コンピレーション」(英語:compilation)とは、主に何らかの意図のもとにひとつにまとめられた音楽作品のことを言い、一般には「コンピレーション・アルバム」の略として用いられます。
いわば「音楽版アンソロジー」と言えますが、書物の「アンソロジー」ほど明確な主題が存在しないこともあり、その編集意図は様々です。
例えば、「1990年代のドラマヒット曲を集めたCDアルバム」や、あるアーティストの名曲ばかりを集めた「ベスト・アルバム」などが「コンピレーション」に該当します。